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B2B法人営業とは何か?4-2-1. 商談スキルの全容【課題ヒアリング前編】~無自覚なニーズを聞き出す~

本稿は商談スキルの全容の第二弾【課題ヒアリング編】です。

顧客が抱える固有の課題は「聞かなきゃ分からない」

ところで、本コラムはB2B法人営業の中でも「ソリューション営業」を想定しています。第2回のコラムでも触れましたが、商材そのものが持つ魅力だけで飛ぶように売れていく時代はかなり前に終わっています。背景には、市場の成熟化、情報の非対称性の消滅、顧客ニーズの多様化、プロダクトライフサイクルの短期化などがあります。プロダクトで顕著ですが、サービスについても同様です。

だから、各社とも「モノ売り」を脱却して「コト売り」を目指しているのですね。つまり、モノとモノとの組み合わせ、あるいはモノとサービスの組み合わせなどにより顧客の課題を解決する、いわゆる「ソリューション営業」を目指しているのです。VUCAな時代ではもはや標準的な営業スタイルと言えるかもしれません。

で、ソリューション営業を体現するには、「コト」を語らなければなりません。「コト」は顧客固有のビジネス文脈を踏まえている必要があります。営業が語る「コト」が一般論だと、顧客の心に刺さらないからですね。では、顧客固有のビジネス文脈はどうすればわかるのか?
「聞かなきゃ分からない」ですよね。なので、課題ヒアリングはソリューション営業においては必須スキルです。

顧客が抱える固有の課題は「聞かなきゃ分からない」。当たり前のこと。

「聞けばいいってもんじゃない」

では、課題ヒアリングはどう進めればうまくいくのか?必要に応じてスキルにも触れながら、進め方を解き明かしていきましょう。

さて、いきなり「御社の課題は何ですか?」と聞いて、お客様は教えてくれるでしょうか?経験上、いくつかのパターンが想像できます。


  1. 知っていることを知っている範囲で丁寧に教えてくれる。

  2. 限定的に教えてくれる。核心については話さない。

  3. どの粒度で教えればいいのか、戸惑う。

  4. 不機嫌になって、その後の対話がぎくしゃくする。

  5. 「それが分からないから困っている」と言われ、こちらも困る。


1は相手が既存顧客で当方を信頼している場合や、そもそも相手が切羽詰まって当方に相談している場合なら十分あり得ます。最もあり得るケースかもしれません。
ただし、あくまで「知っていることを知っている範囲で」教えることに留まります。つまり「”潜在的な”ニーズは自発的には語れない」ということです。しかしながら、潜在的なニーズに触れられないと、提案内容の付加価値は高まりません。当然、受注が難しくなります。

2は1の反対で、信頼度が未だ醸成されていない場合に起こり得ます。具体的には、相手が新規顧客の場合や、案件がコンペの場合によくあります。
あるいは、顧客自ら、自社の課題解決をリードしていて、自社で立案したソリューションを実現するために、部分的に外部リソースを活用する場合です。案件規模を大きくしたり、粗利率を上げることは大抵できないでしょう。最悪の場合は、買い叩かれます。

3は質問スキルの問題です。「聞き方」と「聞く順番」の問題です。4は傾聴スキルの問題です。態度が悪いとか、共感が薄いとそうなります。態度が悪い営業はあまりいませんが、共感が薄い営業はやたらといますし、質問の下手な営業はさらに多くいます(本業の研修講師としての肌感覚です)。これでは受注はおろか、提案機会すらもらえない可能性があります。

5は質問スキルの問題というよりも、むしろ対話スキルの問題として大きく捉えた方が示唆に富みます。すなわち、営業が質問し顧客が答える。顧客の答えを踏まえて営業が次の質問を繰り出す。その応酬(つまり対話)を通じて顧客に新たな気づきが生まれ、かつ全体としての対話の流れが大きなストーリーとなってソリューションにつながっていくというイメージです。ちょっと抽象的ですみません。5はこのような対話スキルに問題がある場合に起こることです。「聞かなきゃわからない」からと言って、「聞けばいいってもんじゃない」ということです。

でも「聞けばいいってもんじゃない」「聞き方ってもんがある」。これも当たり前のこと。

「不可能な任務」をスキルでコンプリートする

そもそも、ソリューション営業において聞くべき「顧客の課題」は、顧客自身、認識していない前提で臨む必要があります。結局のところ、顧客の潜在的なニーズに切り込まない限り、ソリューション営業の成功、望むゴールの達成はあり得ないからです。

でも、「相手が認識していないことを相手から聞き出す」って、ほとんど「ミッション・インポッシブル」の世界観ですよね?!
だからスキルが必要になります。商談中の時間経過に沿って求められるスキルを大枠で整理すると以下の通りです。


  1. 自己開示と強みや能力のアピール

  2. オープン/クローズド質問の使い分け

  3. 傾聴と共感、要約確認による心理的安全性の醸成

  4. 回答の理解と、次の質問への論理的連鎖

  5. 仮説の検証と仮説の再構築の高速回転

  6. 核心を捉え、さらに掘り下げる踏み込み

  7. 対話を整理し、意味あるストーリーにまとめる構想力


順に解説していきます。

「ミッション・インポッシブル」な営業?!

1. 自己開示と強みや能力のアピール

何度も商談を重ねた既存顧客が相手ならともかく、新規顧客を相手に自社の課題を聞き出すためには、まずマナーとして営業側の自己開示が必要でしょう。「私どもは何者でございます」という自社紹介ですね。
ただし、コンパクトにやらないと顧客はうんざりします。また、「この会社と付き合うと、当方にもメリットがありそう」と思わせるような自社紹介でないと、意味がないです。

つまり顧客の期待を醸成するということですね。なぜそれが必要なのか?
この後、顧客の課題について核心的な部分まで掘り下げて聞く必要があるからです。ちょっと大げさかもしれませんが、顧客に自社の恥部をさらけ出してもらう必要があるからです。相応の期待を抱かせないと、痛みを伴う自己開示を受け入れてくれません

具体的には、自社が手掛けたソリューションの成功事例を紹介するのが適当でしょう。ただし、紹介事例は「ウチの課題解決にも役立ちそうだなあ」と思わせる程度の妥当さが求められます。では、そうした絶妙な距離感の事例をチョイスするためにはどうすればよいのか?
前回コラムで説明した「事前の顧客分析&仮説立案」が有効ですよね。

紙幅が尽きました(マイルールとして1コラム2,000~2,500字程度を設定しています。読みやすいかなと思って)。続きは次回へ。

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