基幹急行バスの歴史を調べてみた
沖縄本島は縦に細長い土地という事情に加え、南北を結ぶ幹線道路が限られていることから、那覇市の那覇バスターミナルと沖縄市のコザの区間では、多くの路線が同経路で運行されている(コザ以北で各地に分岐)。
この那覇~コザ間の重複路線を基幹バスとして集約し、コザ以北の分岐先を支線バスが担うという「基幹バスシステム」の導入が検討されており、その第一段階として、バスの定時速達性を高めることを目的として「基幹急行バス」が2019年より運行されている。
比較的最近かつ現在進行形の事項ではあるが、この「基幹急行バス」の実証実験運行時代からの歴史を整理してみた。
2016年7月に基幹急行バスの運行開始が発表
基幹急行バスの運行に関する発表がされたのは2016年7月2日のことであった。
沖縄県の主導によるものであり、2016年10月より、コザ~那覇の区間で1日12本の急行バス実証実験運行を実施するとされた。
2016年10月より実証実験運行が開始
2016年10月3日より、前述の新聞記事の記載の通り、実証実験運行が開始された。新聞記事では、那覇バス、沖縄バス、東陽バスとなっていたが、実際には琉球バス交通、沖縄バス、東陽バスの3社となった。また3社による共同運行というわけではなく、以下の通り3社が独自に急行バスを運行することになった。
・23番・具志川線(急行バス) 【琉球バス交通】
・777番・急行バス 【沖縄バス】
・331番・急行バス 【東陽バス】
琉球バス交通は既存の23番・具志川線に「急行バス」が設定された。一方の沖縄バスと東陽バスは「急行バス」専用の路線が別に新設された。
運行ルートを以下に示す。急行区間となるコザ以南は、停車バス停とルートを含めてさすがに統一されたが、コザ以北は各社の独自ルートとなった。
なおこの時点ではまだ「基幹急行バス」とはされず、単なる「急行バス」という扱いであった。
特急バスより急行バスの方が停車バス停は少なかった
琉球バスが急行バスを設定した23番・具志川線であるが、既に特急バスが存在した。両者の停車バス停の関係を以下に示す。
「特急」=「特別急行」なので、「急行」よりも上位種別である「特急」の方が停車バス停は少ないのが普通であるはずだが、特急バスの停車バス停が21カ所なのに対して、急行バスの停車バス停が20カ所と逆転現象が起こっている。
また、特急バスが朝のみの運行のため、通勤通学に特化して停車バス停が選定されている一方で、急行バスは日中も運行されることを考慮して、買い物等の利便性にも考慮した停車バス停を選定したためか、停車バス停もチグハグであった。
2017年8月に停車バス停が変更
実証実験開始から約1年後の2017年8月1日より、「急行バス」の停車バス停が変更された。
第二城間(現・SCSK沖縄センター前)、中の町、胡屋の3バス停に停車するようになった代わりに、若松入口、城間の2バス停が停車バス停から外された。当然ではあるが、3社の3路線すべてで同様の対応である。
なおこの時点で、停車バス停数は「特急バス」とようやく同じになった(ただ、チグハグは解消されず・・・)。
2019年9月より基幹急行バスとして運行開始
2016年10月から始まった急行バスの実証実験運行であるが、約3年が経過した2019年9月24日より、ようやく「基幹急行バス」として本格運行されることとなった。
本格運行に当たっては、琉球バス交通の23番・具志川線の「特急バス」が廃止され「基幹急行バス」に一本化されることとなった。「特急バス」と「急行バス」の上下関係がチグハグになっていた現象は、最終的に「特急バス」の廃止により解消されることとなった。
また本格運行と合わせて、再び停車バス停が変更され、新たに新城が追加バス停に追加された。
2019年12月からは沖縄バスが1路線新設
3社3路線ではじまった基幹急行バスであるが、運行開始から2か月後の2019年12月2日からは沖縄バスにより1路線が新設された。
新設とは書いたが、既存の77番・名護東線に「急行バス」を設定する形であった。
2020年1月からは愛称が付与
2019年11月18日~12月13日の期間には、基幹急行バスの愛称が募集されている$${^1}$$。本格運行を開始した後に募集し始めるところは沖縄らしいが、年が明けた2020年1月には、愛称として「でいごライナー」という名称が決定された$${^2}$$。
ただせっかくつけられた愛称が、ロゴマークに一切記載されていないのはどうなのだろうか。
運行本数の変遷を整理してみた
2016年10月3日の運行開始から2023年7月現在までの運行本数の変遷を整理してみた。
まずは、那覇バスターミナル向けの上りから。
運行開始当初の2016年10月3日時点では、各社が4本/日ずつの合計12本/日であった。
これが基幹急行バスとして本格運行された2019年9月24日時点で、琉球バス交通が運行する23番・具志川線(急行バス)は2倍以上の9本/日となった。ただこれは、前日まで5本/日運行されていた「特急バス」を廃止して、「基幹急行バス」に統一したためである。一方で沖縄バスが運行する777番・急行バスは1本/日減便となったが、その約2か月後の2019年12月2日から沖縄バスは77番・名護東線に2本/日の急行バスを追加している。なお、東陽バスが運行する331番・急行バスは変わらず4本/日であるが、これは2023年7月現在まで変わらずである。
その後、2022年4月18日のダイヤ改正で、沖縄バスが777番・急行バスを3本/日から1本/日に減便している。また、2022年10月1日のダイヤ改正では、琉球バス交通が23番・具志川線(急行バス)を9本/日から8本/日に微減している。
2023年7月現在の運行本数は、琉球バス交通が8本/日、沖縄バスが3本/日、東陽バスが4本/日の合計15本/日である。
続いてコザ向けの下りへ。
運行開始当初の2016年10月3日時点では、各社が4本/日ずつの合計12本/日でこれは上りと変わらずである。
基幹急行バスとして本格運行された2019年9月24日時点でも、運行本数は変わっていないが、これは23番・具志川線(急行バス)の下りには「特急バス」が設定されていなかったためである。
その後、2019年12月2日から、沖縄バスは上りと同様に77番・名護東線に2本/日の急行バスを追加しており、一方で2022年4月18日および同年8月22日の2回のダイヤ改正で、777番・急行バスを4本/日から2本/日に減便している。また、2022年10月1日のダイヤ改正では、琉球バス交通が23番・具志川線(急行バス)を4本/日から3本/日に微減している。
2023年7月現在の運行本数は、琉球バス交通が3本/日、沖縄バスが5本/日、東陽バスが4本/日の合計12本/日である。結果的に実証実験時から総数は維持している。
利用者にとってはややこしい路線設定
ここからは個人的な意見が入ってしまうのだが、この「基幹急行バス」の路線設定はかなりややこしい。
まず1点目に、この記事を書いてても改めて感じたのが、系統番号は統一できなかったのだろうかと思ってしまう。
コザ以北のルートが異なるので1つの番号にはできないだろうが、安易だが「急行」なので百の位を「9(きゅう)」にするとか、工夫の余地はあったような気がする。
・923番・具志川急行 線
・927番・屋慶名急行 線
・931番・泡瀬西急行 線
・977番・名護東急行 線
これだけでも、「急行バス」であることと「コザ以北の行き先」が分かりやすくなるような気がするのだが・・・。
そして2点目は、23番・具志川線だけがコザ以北でも急行バスとなっている点である。これはまた別の記事で書こうと思うのだが、かつて23番・具志川線には「急行バス」が存在したことがあり、その時は、具志川バスターミナル~コザ(~伊佐)間は各駅停車であった。この時の設定を踏襲していればよかったよ思うのだが、なぜか今回の23番・具志川線の「急行バス」は、具志川バスターミナル~コザを他の2社の路線と統一して各駅停車としていない。
利用者からすれば、コザ以北はどの路線も各駅停車の方が混乱は少ないと思われるのだが。
脚注
基幹急行バスの愛称募集します!(2019年11月18日 わった~バス党実行委員会)
基幹急行バスの愛称は「でいごライナー」に決定(2020年1月17日 わった~バス党実行委員会)
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