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No.686 読書よりも気になることは…

寝相の悪さは遺伝するものらしく、我が家では、幼い娘が正統なる私の後継者のように思われました。そのあられもない姿は想像するにお任せするしかありませんが、娘を娶った義理の息子の勇気に敬意を表したいと思います。
 
さて、寝相の悪さは、第15代将軍となった徳川慶喜もその例に漏れなかったといいます。常陸水戸藩の第9代藩主徳川斉昭は、沢山の子供の中でも特に七男の慶喜に期待をかけ、守役に「躾は厳しく質実なものとせよ」と命じたのだとかいいます。
 
「そこで、慶喜は、枕の両端に二本の剃刀を角のように立てた枕で眠らされた。寝返る時に、そうっと動かないと頭や顔が切れることになる。残酷とも言える躾が身について寝相が改まり、大名の武将としての気品と性根が培われたという。」
 
神川武利著『大乗の剣』(叢文社)の中で紹介されています。「読み本・日本史」とでも言いたくなるような、事件と時間軸がリンクして裏舞台まで博捜した興味深い本でした。読書は、未知の世界の扉を押し開いてくれます。
 
その「読書の秋」という言葉は、唐代中期に活躍した中国の韓愈(768年~824年)という詩人の「符読書城南詩」に由来すると言われています。
「時秋積雨霽
 新涼入郊墟
 燈火稍可親
 簡編可卷舒」
「時秋にして積雨霽(は)れ
 新涼郊墟(こうきょ)に入る
 灯火稍(ようや)く親しむべく
 簡編巻舒(けんじょ)すべし」
(秋の長雨がすっきりと晴れわたったので、
 初秋の涼しさの中、郊外に行き、
 ともし火の下で夜更かしすることも多くなり
 書物を開くにはもってこいである)
とあるのに拠ったのだそうです。既に1200年もの歴史を持つ言葉です。
 
さて、あと半月ほどで、娘が今年2月に生んだ赤ん坊を連れて帰省してくれることになりました。爺さん婆さんで、孫との入浴の回数を競い合うことでしょうが、最大の関心事は、読書よりも、娘の寝相が孫に遺伝していないかどうかということです。あられもなくても、この上ない可愛さでしょうが。

※画像は、クリエイター・勘我得 [KANGAERU]さんの、タイトル「KIDS」をかたじけなくしました。母親も子供も雄弁な鉛筆画に心を奪われます。お礼を申します。