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私は何者か、518


昼寝のせいだ。わかってる。眠れない。窓から涼しい風が入ってくる。雲が急いでいる。そんなに急いでどこへ行くのか。枯れた野原や、荒地をゆき、源流は何処だ。見えるか。蛇行しているのは思案のせいか。いや、昼寝のせいだとわかっている。雲が切れ、南の中空に月が現れる。やっと会えたな。今にまた雲がくる。はやく、その手をこちらに伸ばせよ。


そのうち、うとうとしたのか、恐ろしい夢を見た。


恐ろしいとは何か。


運命であるというのに。


午前四時半。

ひぐらしの最初の一匹が鳴く。やがて、その無数の鳴き声は、波のようにあたりを包む。揺蕩いながら、微睡む。


長い時間をかけて、夜の詩を読んだ。




その伸ばした手を結ぶ糸は何の色。


波間にひとり。


わたしは何者か。




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