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木、旅の途中


それは喩えだった

雨の木

大木となり
雨を休ませ
雨を留め

しずくは葉から葉へリレーし、次第に膨らんでゆく
不安は的中し
彼らは筋書き通りの別れを繰り返し
土にかえり
空へ還る



それは旅の途中に出会った名も知らぬ美しい木


私の背丈の何倍もある木


幹から直角に伸びた枝がちいさな実をつけ
石の階段に落ちては
美しい文字を書く

誰も見たことのない
美しい文字

その美しい文字は
誰も読むことを許さず

そのくせ
各々のこころに
イメージをもたらす



あてのない旅の途中

我らには道標と見ゆる




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