私は何者か、番外編、 a dozen 短歌 9
書きました消しましたただそれだけの自分を試すわたしの時間
眠るため眠れぬ夜のその人の夢の中まで旅をしてみよ
眠りつくやっとここまできたのだと吃水線のうえの平穏
温かい風が吹いてる夕暮れのそれでも寒いとわたしは言うの
海ならば風に聞けばいい波ならば沖の石に問ういつから人間
漕ぎ出して振り向きもせず行くあてのない旅のひと黒い衣の
先回りしては居眠り徒然をちぎって放つ早き流れへ
問うことの普通に暮らす不思議さはテラスに銀の塵降り積もり
何のためわたしは祈るこの夜に祈りを祈るために祈らん
温かい霜月紅茶の湯気のなか我ら並んでそれぞれ人間
その影に何を隠そうほんとうがわからぬくらい酔っ払ってる
昆布締めの鯛をふたりでいただいて眠りつくまで竜宮城で