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オオキユーヒ
2022年11月22日 18:04
放課後、僕は先輩と一緒に帰っていた。「もうすぐ11月も終わりだね〜」 先輩はなんとはなしに呟いた。 12月がやってきて冬休みが明けてしまうと、三年生はほとんど登校しなくなる。 一緒に帰れるのは、あと何回あるだろう。 そんなことを考えると切なくなる。 このまま卒業してしまって、疎遠になってしまうのかもしれない。 時々近づく時はあるけど、僕と先輩の間はいつも拳ひとつ分。
2022年11月21日 23:28
「あはは、怒られちゃったね」「先輩のせいですからね?」 僕はとぼとぼと先輩の隣を歩いていた。 放課後、先輩の遊びに付き合わされていつのまにか下校時刻を過ぎていたのだ。 そして先生に怒られたという経緯だ。「ねえねえ、後輩くん」「なんですか?」「ちょっと夜遊びしない?」「まだ遊ぶんですか……」 断りきれなかった僕は先輩に連れられ、夜の遊園地にやってきた。 いくつ
2022年11月20日 12:03
「おはようございます。先輩」「うんっ。おはよう。後輩くん」 今日は日曜。先輩とお出かけする予定だ。「ていっ」 先輩の拳が僕のお腹に突き刺さった。「僕、怒られてます?」「ううん。今、経験値集めしてるの」 先輩の中では僕はRPGの序盤の敵か何かに見えているのだろうか。 とりあえず倒されたフリをしておこう。「今日も後輩くんのノリがいいねぇ。よきかなよきかな」 満足そ
2022年11月19日 12:12
土曜授業の今日、元生徒会長の俺は重たいため息をついた。 その原因は……。「先生の左手の小指に指輪……。やっぱりそういうことなんだろうか」 左手の薬指は結婚、小指は彼氏彼女。 そういうことだってあり得る。 真相は確かめない限り闇の中。 俺は覚悟を決め、教室を飛び出した。「先生!」「……君か。どうした? そんなに慌てて」 先生は何故か嬉しそうに口角を上げた。「放
2022年11月18日 15:05
僕たち二年生は修学旅行明けで休みだ。 前から約束をしていた通り、僕は後輩ちゃんと遊んでいた。 一年生の後輩ちゃんが何故休みなのか気になるところだけど……。「ズル休みしちゃいました。先輩と早く会いたくて。寂しかったんですよ……?」 そんな顔で言われたら何も言えない。「後輩ちゃんはいけない子なんだね」 かろうじて出たのはそんな言葉だった。「はい。知りませんでした? 私、先
2022年11月17日 20:54
修学旅行最終日。 僕はお店に入り、商品を手に取った。「お土産選んでるの?」 同クラさんの綺麗な顔が急に視界に飛び込んできて僕の体が驚きに跳ねる。「ど、同クラさんはナル君にお土産?」「うん。弟はお姉ちゃん離れできてないから、帰ったらかまってかまってされるんだろうなぁ……。あはは……」 力なく笑うも、その横顔はどこか嬉しそう。 僕も帰ったら妹を存分に甘やかしてあげようと思っ
2022年11月16日 17:10
修学旅行三日目。今日は集団観光だ。 バスに乗って観光スポットへ行くと、大勢の人で賑わっていた。 その一因となっているのが、撮影に来た芸能人らしい。 みんなはこんな偶然があるんだ、とはしゃいで野次馬の一人になっていた。「芸能人って綺麗な人が多いよなあ……」 僕ら一般人より人に見られる機会が多いから色々気を付けてるのかな。「……綺麗なお姉さんが好きなの?」 隣にいた同クラさ
2022年11月15日 12:53
「知らない天井だ」 朝日の眩しさで僕は目を覚ました。 ここは百万年後の世界だろうか、なんてボケてみる。「ひゃっ!?」 目を声の方向に向けると、なぜか同クラさんのびっくりした顔がドアップ。 そうだった。昨日から修学旅行だ。 僕は時間を確認した。寝坊だった。「やばっ!」 僕は慌てて体を起こす。「っ……!?」 ゴチンッ、と僕と同クラさんの額がぶつかり、僕は悶絶した。
2022年11月14日 19:22
今日から修学旅行。 旅行先は海外の案もあったらしいけど、国内になった。 その分宿泊するところにお金がかかっているようだ。 今日は移動と歴史的建造物を巡る一日だったから、疲れを癒すために僕はゆっくり露天風呂を堪能した。 夕飯もとてもおいしかった。 家族にも食べて欲しいし、取り寄せするのもアリかもしれない。 知らない土地の夜。 体が緊張しているのか、僕は眠ることができなかった。
2022年11月13日 13:15
明日からの修学旅行に備えて忘れ物の確認をした後、することもなかったから暇つぶしを求めて僕は家を出た。 家にいるのもソワソワするし、出かけることで気を紛らわしたかったのだ。 休日のショッピングモールに一歩を足を踏み入れると喧騒。僕は文明に感謝をする。「あれ? 先輩だ」 そこには後輩ちゃんがいた。「後輩ちゃんもひとり?」「はい。もしかして、先輩もですか?」「うん。明日から
2022年11月12日 19:47
僕は先輩に誘われ、先輩の家の庭で流しそうめんをしていた。「後輩くん、早くたべよーよ」「はい……」 季節外れじゃないだろうか。室内でもいいんじゃないだろうか。と思ったものの、先輩がそういう気分だったんだろう。 お腹が空いていたこともあり、それほど時間をかけずに完食した。 陽が落ちるにつれ気温が低くなる。 寒さから先輩は小さく可愛らしいくしゃみをした。「大丈夫ですか?」
2022年11月11日 12:15
通学路を歩きながら、僕はあくびを噛み殺す。 電車に乗るために駅のホームに立つと、少し離れたところで男子がソワソワしていた。 その複数の視線の先には……。「後輩ちゃん?」 目が合ったと思ったら、後輩ちゃんはぷいと顔を逸らした。 なんか後輩ちゃんの様子が変だな。 それは休み時間になっても続いた。「こ、後輩ちゃん……?」 教室にやってきて前の席に座って僕の方を向いて頬杖。
2022年11月10日 14:52
「好きです」 僕は人気のない場所で、先生にそう言った。「そうか。わかった」 先生はひとつ頷く。 その時、ガタッと後ろで物音がした。 先生はその気配の主に心当たりがあるのか、「私はお邪魔のようだ」と耳打ちし、片手を上げて歩いて行ってしまった。「誰ですか……?」 こっそりと出てきたのは先輩。 僕はヤバいと血の気がひく。「き、聞いてました……?」「こ、後輩くん、先生が
2022年11月9日 14:43
早朝の教室。有線イヤホンからは流行歌。 元生徒会長の俺は一人で勉強をしようと早めに登校をしていた。 問題集のページをまたひとつ捲り、ペンを走らせていたが、ふと止まった。 頭によぎったのは好きな女性。「はぁ……。どうしたものか……」 俺は腕を組み、眉間に皺を寄せた。 未だこの恋に進展はなく、年の差があるからか、人畜無害な子供としか見られていないような気がしてならない。