189.三題噺「ボディーガード、本当の自分、金平糖」
通学路を歩きながら、僕はあくびを噛み殺す。
電車に乗るために駅のホームに立つと、少し離れたところで男子がソワソワしていた。
その複数の視線の先には……。
「後輩ちゃん?」
目が合ったと思ったら、後輩ちゃんはぷいと顔を逸らした。
なんか後輩ちゃんの様子が変だな。
それは休み時間になっても続いた。
「こ、後輩ちゃん……?」
教室にやってきて前の席に座って僕の方を向いて頬杖。
目線はずっと僕を捉えている。
僕は焦る。
なんでずっと監視されているんだろう。
隣の席の同クラさんを見ると、後輩ちゃんと僕に視線を行き来させてあわあわしていた。
うん、何かあったのか聞いてもらおうと思ったけど、頼りにはできなそうだ。
そして放課後の帰路。
背後にはピッタリとくっついてくる足音。
僕は立ち止まった。
「!?」
驚きの反応が手に取るようにわかる。
僕は振り返り、声をかけた。
「後輩ちゃん、朝から僕についてくるけど、どうしたの? 本当の自分でも見失った?」
「ち、違います! 先輩に悪い虫が寄らないようにボディーガードをしてるんですよ!」
冗談を言ったら、頬をぷくっと膨らませてぷんぷん怒られてしまった。
それから後輩ちゃんは恥ずかしそうに足で地面に落ちている小石を蹴った。
「何か悩み事? 僕でよかったら聞くよ」
「……今日って恋人たちの日なんですって」
意を決して口を開いた後輩ちゃんはそう言った。
「……そうなんだ?」
それがどうかしたんだろうか。
疑問を感じて首を傾げていると、後輩ちゃんは鞄から小包を取り出して僕に差し出した。
「これ、プレゼントです」
「今日って何か特別な日だっけ?」
「なんでもない普通の日にプレゼントをしたらダメなんですか? 恥ずかしいので早く受け取ってください……」
「あ、ごめん。ありがとう」
後輩ちゃんはスカートの裾をいじいじして、上目遣いで僕を見る。
「実はその中身、深い意味があったりなかったり……。でも、やっぱりあったりする食べ物なので、私の思いを噛み締めてくださいね……?」
「わかった。美味しくいただくよ」
帰宅し、後輩ちゃんからもらった小包を開けると金平糖が入っていた。
金平糖って、確か永遠の愛って意味があった気がするけど、まさかそんなことはないよね。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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