顔が濃くなっていく話
年々顔が濃くなる。
これだけを聞いたら「お前は何を言っているんだ?」
そう言われそうだが、こうとしか言いようが無い。
確実に顔が濃くなってきている。
初めてそれを自覚したのは地元から離れ高専に入った時だった。
住んでいた町は、町民皆顔見知り。
歩いてる奴は大体知り合いという程度の低いラップが歌えそうなレベルの田舎。
そこから二つ隣の市の学校へ進学し、ほぼ完封試合レベルで知らない人だらけになった。
入学してすぐのレクリエーション的な時だったと思う。たまたま隣の列に並んだ他のクラスの女子に
「ねえ、どこ(の国)とのハーフ?」
そう、にこやかに問われた。
それまでの人生、そんなことを言われたことなど無かった私に対し、ハーフか否かと言う部分を仙道レベルのドリブルであっさり抜き去り、そのまま速度を落とさずにいきなり親の国籍を聞いてくるというシュートの速さ。
それを食らった私はものすごい間抜けな顔をしていたと思う。
This is HATO ga MAMEDEPPO.
この日を境に顔が濃い人としての人生は幕を開けた。
どうやら鼻が人より高いと知ったのもこの頃だった。
え?何?自虐風自慢乙と思われても仕方ないが本当に知らなかった。
私の目に特攻してくる虫よりも、死の商人こと花粉よりも写真を撮られるのが大嫌いだったせいで自分の横顔をまともに見たことが無かったのだ。
子供の頃、わりと真剣に「どうして私の鼻の穴は皆よりデカいんだ。WHYどういうつもり……」と悩んでいた。
いや、気付けよ。
そうしてる内に遺伝した天然パーマは年々クルクルうねり、自己主張を始めた。
そこに畳み掛けるかのように、2000年代特有の空気感で毛染めをしまくったことで髪の毛が痛んで猫っ毛化が進んでいった。
その結果。見事な外国人風ヘアの完成である。
事は悪化の一途を辿っていた。
成人になり学校を出た後も快進撃は続く。
会社に入り所属部署に配属された初日。
偉い人たちに「君は英語が出来るらしいね!」と言われ宇宙が見える事件が勃発。
面接でも研修でも英語の話など1nmもした覚えは無い。
完全に見た目だけで噂が回っていたのだ。
英語なんてむしろ苦手だ。高専の英語は中学レベルだ。
ファッキン。I am a Japanese.
新人として強制労働中の会社のファミリーイベント。
上司が子供に「パパの部下には外国人が居るんだぞ!凄いだろ!」とかましたせいで純粋な瞳のキッズに「ハロー……」とはにかみながら話しかけられたこともある。
その後、会う度に英語で挨拶され、その度にそれっぽく返事をし続けた。
子どもの夢を壊さないで★と上司が言うからだ。
嘘だ。面白いからこのまま泳がせておこうとしているのは見え見えだった。
だが私もそれに乗っかった。面白いから。
その後、会うことは無くなったが彼。
私のことをスウェーデンと日本のハーフだとずっと信じたままで、高校を卒業する直前にやっとネタばらしをされたらしい。
10年越しのネタばらし。
彼が家庭内暴力に走った話は聞いてないが今後が心配である。
まあそうは言っても!そんなに言うほど変化してないはず!
ちょっと濃いくらいじゃんね?関西人って大袈裟ですわ!
そう思い込もうとしていた時期もあった。
が。私の17歳から10年分の資格免許を6枚を見た後輩(チャラ男)に
「うわ!外人に向かって進化してるし!!!」
と腹を抱えて笑われた。
全くこれだから若者は。オーバーアクションが過ぎるぜ!
鼻で笑いつつ横目で見たら(ホンマや)と素直に感じたのでは思い込みでは無いらしい。困った。困った……。
気が付けば30代になっていた。
徐々に眉と目の距離が近づいている。おっかしいなぁ~?なある日。
美容院にて、新しく入店したばかりのお姉さんがやたら私の顔を見てくる。
しかしまあ、ここまで来たらこんなの慣れっこである。
次の台詞はいつも同じだ。
「お客様って〜ハーフの方ですか?」
はい来ました。いつもの。叔父の顏レベルで見るやつですわ。
こんな問答さっさと蹴散らしてくれるわ。
いつも通り「いえ、ハーフでは無いんですよ〜」
良く間違われます~★とゆる〜く否定したら
「あ〜……。日本は長いんですか?」
と更に一段上の答えが返ってきた。
私の脳裏には偉大なる外国人顔、平井堅の笑顔が浮かんだ。
あれがもしかして私の未来の姿。彼こそがPOP STAR.
業務のお姉さんとの会話で「おばあちゃんロシア人だから」なんて適当なことを言い、通り縋りの同僚がそれを真に受ける事変の勃発。
「お、俺の心を裏切ったな」と言われて咄嗟に謝罪したのだが、この場合私は悪いのだろうか。
業務の人に「東京から来た営業さんに『この事業所は外人さん居るんだね~』と言われてたよ」と「だから凄いやろ~って言っといた」そう教えられたけど、誤解は解けたんでしょうか。
そして令和になって始めての正月。
帰省し、昔のアルバムの整頓がてら写真を皆で見ていた。
そんな和やかムードの中。私の顔をじっと見て、母がぶっこんできた。
「……あんたは、一体誰に似たのかね?」
その一言で時は止まった。
「年々顔が濃くなるけど、なんで?」
それは私も聞きたい。
今まで母だけが私の顏が濃いことを否定し続けてきたのに。
ここにきて急激な進路変更。
今後このペースでいけばハワイが日本にゆっくり近づいてきているように私の顏も緩やかに立体的に進化していくことであろう。
追伸:追記をした2021年2月現在。
新人たちに何も言われなくなっていたのですが、先日
「日本人だったんですか……?」と聞かれ初めて色々解りました。
もう、聞いても貰えないとこまで来てるってね。HAHAHA!
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