1127(三人の足の悪い男・見えない恋人・直感)
エラリー・クイーン「三人の足の悪い男の冒険」を読んだ。
女が寝室で殺され、絨毯には片足が悪げな男の足跡が三人分あった……。冴えるロジックと併発している誘拐事件とエラリーの態度がサスペンスフルな一編だった。
「どれも同じように、右の靴跡の方が薄くついていますね」エラリーはつぶやいた。「特にかかとが。ほとんど全部の右の靴跡はかかとがついていない」
「そうだ。今回の仕事をやらかした連中は、3人とも片足が悪いってわけだ」
エラリーは新しいたばこに火をつけた。「ナンセンスですね」
エラリー・クイーン「見えない恋人の冒険」を読んだ。ある男が殺人容疑で逮捕されたが、どうもやってなさそうだ……。銃弾にまつわるロジックと、帰結として明らかになる犯人は垂涎ものだった。美女とのあれそれや、突然みんなでわちゃわちゃ墓暴きをしはじめるクイーンたちの意図が明らかになったとき、つくづくクイーンさんは情報の出し方の天才なんだなあと、みつをになるしかなかった。にんげんだもの。クイーンくんがみんなに墓暴きをさせながら推理を語ってくれるが、彼自身は申し訳程度に鋤を持っているだけで、あまり働いてなかったと思う。おれにはわかる。
谷川流「涼宮ハルヒの直感」を読んだ。
ピクシブとかにありそうな短い話と、七不思議の話と、長い話があった。
長い話で古泉とミス研女子と長門がカーやバークリーやクイーンを語り始めたのでびっくりした。話が後期クイーン問題まで及んだころ、鶴屋さんから問題と称されたメールが届き、SOS団は話し合いをはじめる……。
3つの手紙それぞれのミニマルな謎と、大きな謎を抱えたミステリだが、あまりたのしめなかった。SOS団の人がいろいろ推理を語ったりしても、SOS団の人がなにか言ってるなあと思うだけだった。そういえばおれはSOS団が嫌いだったことを思い出した。キョンの語りうぜえしハルヒもお前人に迷惑かけんなや……と男子小学生の頃に思った原体験が「直感」にも補正をかけていた可能性はいなめないが、それをさしひいても謎解きすべてに「そかw」としか思えなかったのはなぜだろう……。明らかに後期クイーン問題を意識した話でもあると思うが、後期クイーン問題に解答すること自体が目的になり、おいしいお寿司をお客様にお出しするという真の心から外れてしまった……そんなふうにも思えた(もちろん谷川流はふつうにおいしいお寿司をお客様にお出ししようとしていると思う)。というか鶴屋さんの手紙からあることないことを読み解く話なので、鶴屋さんの手紙が肝なのだが、文体が鶴屋さんだったので集中できなかったのもよくなかったかもしれない。そんなわけでとても楽しく読めたのでよかったです。