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【本の紹介】独断と偏見で選ぶ年末年始に読むべき本5選

 仕事納めも終わるとゆったりしながら過ごす時間が長くなる。私は毎年祖父母の神棚掃除に行きそのまま祖母と父と読書や年末のテレビバラエティを見ながら過ごすのが恒例行事だったが、今年はそうもいかない。もう90近い祖母に会いに行くのを祖母の近隣住民は理解してくれないだろうとのことから今年は恒例行事を断念せざるを得なくなった。

 今年はコロナという未曽有の災害によって社会が大きな変化を迫られた中、新しいビジネス・ワークスタイルの確立が進み家にいる時間が長くなった。不要な移動時間が削られ自分にとって有意義な時間が増えたことで多くの本と出合うことができた。私のこの経験から今年私が読んだ中で是非とも読んでもらいたいと感じた本を紹介したのがこの企画だったのだ。来年も不安な日々が続くだろうが、新たな教養を蓄え人生の幅を広げてもらいたいと切に願う。

1.昭和天皇の学ばれた教育勅語 杉浦重剛(著)

 東宮御学問所という特別な場所で勉学に励まれた昭和天皇。倫理の講義を担当した杉浦重剛による教育勅語解説を本にしたものがこれだ。今でこそ教育勅語は戦前の産物として批判されるが、中身を読むと批判されるほどのものではないということが理解できる。非常に基本的な道徳について12の徳目が書かれているのだ。詳しい内容については省くが、かつての日本国民の基盤となる道徳はどのようなものだったのかが理解できる。この本は教育勅語が日本のどのような歴史・思想から構成されているのかを詳細に記している点でかつての倫理観を知るだけでなく、背景となった日本史や日本独自の思想も学べより教育勅語への理解が深まる一冊となっている。

2.みんな大好き陰謀論 内藤陽介(著)

 陰謀論というとわからない人がいるかもしれないが、要は妄想の類と考えてもらえればいい。よくできたフィクションである。この本はそれらの陰謀論の中でも特に有名な「ユダヤの陰謀」という部分に焦点を当てて陰謀論の嘘を暴き正しい知識を紹介している大変面白い一冊だ。「国際金融資本」「ユダヤ」これらは金を使って世界に強い影響力を誇っているとされているわけだが、それらの情報が如何に歴史・事実に即さず飛躍した論理によって構成されているかが見えてくる。最近の陰謀論だとアメリカ大統領選挙における不正選挙がこれにあたる。何を持って不正なのか。元々毎回多少の不正が起きる大統領選挙で勝敗がひっくり返るほどの不正を立証できるのか。実際の所悉く訴訟は棄却され、夢は現実へと昇華されているわけだが、これらを最終的には得体のしれない「ディープ・ステート」によるものだと結論づける。彼らはどこからその正体を知ったのか。理解できない事象を理解するために創られた共同幻想が「ディープ・ステート」だと私は理解している。ちまたにたくさん情報はあふれているが非現実を現実の如く訴えるこれらの陰謀論に黙されない対処法としてこの本は貴重な経験になるだろう。

3.目に見えぬ侵略 クライブ・ハミルトン(著)

 かたや空想上の陰謀から現実の陰謀へと話が移る。オーストラリアの批評家、クライブ・ハミルトン氏が書き上げたこの本は今後ますます重要になってくる一冊だ。中国が影響力を拡大し国際協調を乱しているのは周知の事実だが、この事実と連動して目には見えない形で中国は各国国内にも影響力を持ち始めているという極めて危険な事実を紹介したのがこの本だ。オセアニアの大国、オーストラリアがこの中国の浸透工作によって危険な状況に陥っているとハミルトン氏は警鐘を鳴らし、先週の24日には続編にあたる「見えない手」を日本語訳で発売された。これと併せて中国がどのように国内に浸透工作を行っているのか、そしてそれが進むとどのようなことになるのか。日本も中国の隣人として気をつけなければいけない。むしろ対処する時期に来ているのかもしれないと考えさせられる。

4.隷従への道 フリードリヒ・A・ハイエク(著)

 「日本は最も成功した社会主義の国だ」といわれる。これは褒め言葉ではない。断じて違う。これは「日本は自由主義の面を被ったソ連だぜ」と言われているのようなものだ。これは日本社会がいかに硬直し、規制にまみれ自由を失ったかを表す証明なのである。日本が失われた30年を過ごしてきた要因は最も成功した社会主義国だからだ。意味も分からず増税され、老人にばかり向けられる社会保障、計画主義による既得権益層の出現、利益配分による汚職、政治とカネの問題は自由主義に立ち返ることで解消に向かうだろう。政府が小さくなって利益配分を主導しなくなれば誰も政府に媚を売らない。平成は失い続けたからこそ令和は失ったものを再び取り戻す時代にしなければならない。そのハンドブックとなるのがこの本だ。自由主義の重要性、そして社会主義・計画主義(設計主義)の弊害を知り何が必要なのかを考える最適の書である。

5.福祉国家亡国論 山本勝市(著)

 同じく自由主義に関する一冊でおもしろいのがこの本だ。戦後、日本自由党で参議院として活躍した経済学者山本勝市氏による福祉国家(大きな政府)が及ぼす弊害、そしてそれが亡国へとつながるという極論に聞こえるかもしれないが、大変重要な言説がここに紹介されている。イギリスの「ベヴァリッチ報告」に端を発する福祉国家政策の危険性、人間の精神にどのような影響を与えるのか、この社会主義的政策が導く国家の命運を説き日本から失われつつある自由主義精神の復興の必要性が所狭しと論じられている。現在では日本は立派な社会保障を行う国となった。さらに社会保障の充実を北欧を例に出して訴える者など社会保障は重要だという論調が絶えず存在しているが、これは「甘え」だ。自ら生産しない言い訳に過ぎない。社会保障はもっと高齢者ではなく、若者や子供に向けられるべきで、その規模もあんなに多くある必要はなく、財政均衡を訴えるわりに増税による解消のみを目指し歳出削減に取り組む姿勢はまったく見せない。この政府の体制こそが悪であり徹底的の今後国民は戦っていく必要がある。

おわりに

 来年がいい年になるかと言われるとわからない話だが、国内だと都議選と衆議院選挙、そして菅政権の命運、以上が国政における重要な点だろう。世界だとバイデン政権が始動するアメリカ、ポストメルケルが決まるドイツ、そして変わりゆく中東情勢の中でイランは大統領選挙を迎える。国内、国際気にしようと思えばきりがないが大きく言えばこれらだろう。2021年、ポストコロナと言われているがきっと企業や就職などますます厳しい社会環境が迫られるに違いない、炭素税や環境保護などといういけすかない話が着々と国民に迫ってきている以上、政治家は「減税」「規制廃止」などを持って脱低成長社会へと日本を導いていってもらいたい。


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