コロナ後の世界 Ⅲ - コロナ危機と株価
日本でも感染爆発寸前と危機感が増す中、いくら急落後とはいえNYダウも日経平均も急激に戻している。違和感から正直イライラしているのだが、ある番組 ↓ を見て腑に落ちるというか、自分なりに納得いった部分があったのでここで紹介しておこうと思う。
(参照番組) NHKBS1スペシャル シリーズ コロナ危機 「グローバル経済 複雑性への挑戦」
ジョセフ・スティグリッツ教授(コロンビア大学)はマーケットでもよく目にしたが、その他にも今売り出し中の気鋭の哲学者マルクス・ガブリエル氏(ドイツ)や歴史学者など著名な研究者が今回の「コロナ危機」と経済、マーケット等について様々な切り口で語っていて興味深かった。
その中で目を引いたところが2つ:
1.「生物学的現象」である「コロナ危機」に対し、政府は主に「経済学的対処」をしている。
2." Stock market is discounting future values back to the present, but no one is sure about the future." (株価は将来価値を織り込んで動いているのに、その将来につていて誰も確信が持てない)
*「損切丸」も「欧州通貨危機」「日本の金融危機」「LTCM破綻」「リーマンショック」と散々経験してきたが、いずれも「金融危機」=「経済的現象」であり、その度に利上げ、利下げ、量的緩和等「お金」を中心にした「経済的対処」をしてきた。処方箋としては合っていたのだろう。
今回のコロナ危機は遙かに規模が大きい。あまりの経済的ショックに各国政府は矢継ぎ早にリーマンショック時に使った「危機対応フレーム」で「お金」をばらまいたが、「生物学的現象」である「疫病」には効果がない。
確かに株価は持ち直した。だがマーケットが「将来価値」を反映して動くものとすれば、2. " 誰も「将来価値」に確信が持てない" 中、ここで「株価は底を打った」と考えるのはかなり危うい。実際「損切丸」を含め、**この半世紀で今回のような世界規模の「公衆衛生危機」を経験した者はいない。一体何を尺度に株に投資するというのか?
今の段階の株式投資は丁半バクチに近い。いくら(今の時点で)「お金」が余っているとはいえ、今後どのくらい「お金」が必要なのかは誰も推計できない。おそらくプロの投資家は慌てて上値を追ったりはしない。「将来価値」が判然とするまで腰を据えて「待ち」だろう。
” CASH IS KING ”
今回のような世界的危機の時は手元にある程度の「お金」を保有しておくのが鉄則。1,2月に株だけでなく債券も叩き売られたのは手元現金を厚くするためだ。危機の帰結が見えていない以上臆病なくらい慎重で丁度良い。
それから番組内の主張には「損切丸」の指摘と重なる部分が結構あって正直ほっとした。それほど的外れではなかったようだ(笑)。例えば:
①脱グローバリゼーションに駄目押し。グローバルチェーンの再構築。医療など必要物資の「自給自足化」(含.友好国間の取引)
②弱者切り捨ての顕在化。それによる政治的反動(含.共産主義の台頭)
③国際的枠組みの再構築。→ 新たな大国「中国」との距離感。
今回のような「公衆衛生危機」には中国のような独裁体制が対処しやすいのは事実だが、市民自らがそれを望むようになるのは危険、との指摘も。
「物価」については総需要の減退から「デフレ」を主張する学者もいたが、「損切丸」としてはここは反対意見を述べておきたい。
①脱グローバリゼーションがコスト増を招くのは確実で、加えて膨張した国家、企業の「債務再編」を断行(貨幣の減価 and/or 債務放棄)すれば、「デフレ」というよりも「スタグフレーション」に直面するのではないか。結局②切り捨てられるのは弱者だ。
おそらく世界中のプロも未だ「コロナ危機」後の帰趨を測りかねている。まずは安全運転で手元資金を確保しつつ必要な手立てを講じていく事。「投資」を考えるのは「将来価値」、個人で言えば1年後、2年後の「お金」の算段がついてからだろう。慌てることはない。