再びヨーロッパがおかしいⅢ - イタリア、ギリシャは「200CLUB」入り。
株価の乱高下を無視するようにダンマリを決め込んでいた国債市場。日米は相変わらず動きが鈍いが、ヨーロッパがまた動き出した。きっかけは今回の原油価格の急落である。「信用リスク」が再び首をもたげてきた。
7,500億ユーロ(約88兆円)の臨時資産買入プログラムによる猛烈な買取(介入)で、一時は10年債でイタリア、ギリシャは@1%台後半、スペインは@0.80%台まで金利が大きく低下(価格は上昇)していたが、ここへ来て金利が再び上昇。スペインは利回り、CDSとも「100CLUB」入り、イタリア、ギリシャは「200CLUB」入りとなってしまった。
随分縮小していたドイツ債との金利スプレッドも再び拡大。「実質金利」ベースで見ても3国債ともまだまだ割高(金利は割安)であり、それぞれの10年債利回りもここから+1.0%上昇してもおかしくはない。やはり人為的「介入」には限界があり、「無理は通っても無理」の典型である。
前稿.危機対応のためのバランスシート(4/22)を参考にすると、イタリア、ギリシャのバランスシートは*タイプⅠー危機不適応型の典型。
現金(=国民の預金)も少ない上に、借入コストが非常に高い。国の投資リターンを成長率と考えるとこれもマイナスで、企業なら間違いなくデフォルトだ。しかもどうやって改善するのか、処方箋も見えてこない。
いっそのことデフォルトした方がコストも安く済むのではないか、とさえ思えるのだが、「ユーロ」という重荷を支えなければいけないドイツ、フランスの苦悩は大きい。5,000億ユーロ(約58兆円)の対策が追加される見通しだというが、果たしてそれで収まるのか、甚だ疑問ではある。
*実は日本はバランスシートで言うとタイプⅢー危機対応型だ。やはり1,000兆円もの預金+企業の内部留保400兆円が効いている。日本の個人預金の平均残存期間は5年を超えているらしいから「長期債務」に近い。それが金利ゼロ。国としては凄いことではある。(ただ動き出す時は一気に逆に向かうのが「日本円」の特性でもあるので、それはそれで恐ろしくはある ← 外国人には到底理解できないらしい)
CDS市場を見ていると、今のところロシアなど産油国に大きな動きはない。ただ収入が激減する中、時間が経つに連れ「現金」などの取り崩しが進む。「資金繰り」が本当に苦しい時は、個人でも企業でも国家でも「平静」を装うもの。悟られれば「お金」は一気に逃げていってしまうからだ。
これは何もタイプⅠに限った話ではない。タイプⅢに属する「お金持ち」日本でさえマイナス成長で現金の取り崩しが進めば、今の低金利は持続できまい。それは50%もの国債を買い取っている日銀の人達が一番解しているはず。中央銀行は万能ではない。
ユーロ圏もこれから債務が膨張していくのは確実。ドイツは思い出したくもないだろうが、第一次世界大戦後の「ハイパーインフレ」の悪夢が頭をよぎる。ブンデスバンクの人達は甚だ不本意だろう。
ヨーロッパは「信用リスク」にとって一つのベンチマークにはなっているが、世界中でこれだけ気前よくバンバンお金を刷ってしまって、本当にどうするのだろう、と空恐ろしくなる。「インフレ」か「債務再編」か...。
「コロナ危機」の帰趨も全く見えない中、金利市場も新たに動き出すのだろうか。国のバランスシートが変化していけば「金利」に必ず現われる。日銀もFRBもECBも「介入」によってそれ自体を阻止することはできない。金利市場からのサインは見落とさないよう注意深く追っていきたい。
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