「インフレ」が迫る ”強制退去” 。ー 「物価高」と「人手不足」の狭間で。
「あれっ、お店開いてないなぁ...」
80代の母の介護のために、お盆の時期を避けて早めの ”帰省” になったが、以前行っていたイタリアンレストランが店を閉じていた。貼紙には「感染拡大により営業時間短縮」とあったが、お店を運営している気配がない。それなりに人気があったはずが、途中で「ハワイ料理」に看板を変え、ついに店仕舞い(?)。一連の*「コロナ関連倒産」と思われる。
↑ 標題添付は「物価高倒産」件数の月別推移だが、7月に入って急増。国の「援助」頼みの零細・中小企業を中心に、価格転嫁が出来ないところが「援助金」「特別融資」の打ち切りと共に力尽きたのだろう。
業種別 ↓ では**運輸、建設業が多い。
「バタバタお店、企業が潰れている」
こうメディアが書き立てるといかにも ”悲劇” だが、2008年「リーマンショック」後に訪れた「デフレ」局面とは違う。「人手不足」で就職先があり、ゾンビ企業の延命で日本で進まなかった「経済構造改革」にはむしろ前向きの兆候。パート・アルバイトや派遣社員の平均時給 ↓ は全国平均がそれぞれ@1090円台、@1,300円台としっかり。そもそもスポット扱いの雇用は正社員より高いのが正常のはずで、ようやく当たり前になりつつある。
特に首都圏での需要は高く「物価高倒産」の相次ぐ物流などの時給が上がっているのが興味深い。つまり「人手不足倒産」ということ。
インフレのコアは雇用コスト(人件費) > エネルギー・商品価格。|損切丸|note 。店舗や会社の経営者ならわかるはずだが、常に「人件費」が悩みの種。「デフレ」型経営では「お給料」を引下げれば凌げたが、「インフレ」ではそうはいかない。雇用コストを上げた分をきちんと「価格転嫁」できないところは "強制的" に淘汰されていく。
実際筆者の地元・郡山でも、田舎では高額の部類に当たる「2,000円ランチ」でも一杯のレストランもあるし、無駄な設備・サービスを省いたホテルは満室経営。つまり「値段」に見合う付加価値を持った商品・サービスには、「人件費」「仕入れコスト」分を「値上げ」しても顧客はついてくる。「安かろう、悪かろう」でもやっていける時代は終わりを迎えつつある。
こういう状況を如実に反映しているのが「金利」。2020年3月の「コロナ暴落」以降、ほんの2年前には@1%にも満たなかった10年米国債は既に@3%近く。確実に経済の "体温" は上がっている。***マイナス金利だった10年JGB(日本国債)もしっかりプラス金利、欧州国債も@1~3%近辺だ。
「インフレ」で大騒ぎしているが、何だかんだいって日米欧は世界的に見れば「お金持ち」。 "生き死にの話" からは遠い。だが2桁金利になっているブラジルやトルコ、あるいはベネズエラ、レバノン、パキスタンなどにとって「インフレ」はまさに "生き死にの話" 。特に「ドル高」は「ドル建借金」の返済を重くし、自国通貨安はまさに「インフレ税」。これを "自国優先" で放置しているアメリカが支持されないのも頷ける。
本来不良債権問題で「利下げ」をしたい「中国」も違った意味で大変だ。何せ14億人もの国民を養わなければいけない。のし掛かる7,000兆円もの「大借金」の利息も馬鹿にならないが、「資金繰り」のために高い「実質金利」を保つ必要もある。国内の不満が爆発すれば恒例の「内ゲバ」も勃発しかねず、国外に「軍事行動」に打って出るのはある意味不可避。それでも不良債権を処理しなければ経済実態が改善しないのはこの日本が証明済みだ。
「インフレ」は色々なものの ”強制退去” を迫る。今は「時代の変わり目」。需要先細りの原油価格の高値維持のために「戦争」を欲している産油国然りで、「淘汰」から「新時代」への変化が起きている。これは日本も例外ではなく、「人件費」高騰やそれを反映する「金利」「株価」には引き続き注目していきたい。