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「金利差」より「量の差」- 「QT」はある意味「利上げ」より "凄いこと"

  ”日銀の貸出増加支援制度が終了へ” 「2025年6月末をもって新規の貸し付けを終了する」

 2012年に始まった日銀による「貸出増加支援制度」貸出を増やした銀行に長期・低利の「お金」を供給する枠組だが、1/20時点の残高は77兆円超。日銀のバランスシート@2024年末 ↓ の1割強を占める。昨年3月のマイナス金利の解除以降の大規模緩和からの転換や同7月、今年1月の利上げに合わせて制度が縮小されるが、これ、実は結構 "凄いこと" 

 「コロナ危機」対応で2022年3月には150兆円を超えた日銀の「貸出」。その後同年9月には一旦80兆円まで減ったがそこから不気味に増え100兆円台を維持。「借金」を返せず苦しむ企業が多い事の裏返しだが、ここに来て様々な業種の倒産件数が跳ね上がりいよいよ「淘汰」が始まった

 70兆円もの「貸出」はほぼ3年で無くなるから年間▼20兆円もの「QT」(Quantitative Tightening、量的引締)になる。「国債買入」も1月以降年間50兆円台まで減額され  、保有国債の年間償還額が▼70兆円余りだからこちらも▼20兆円の「QT」年間▼40兆円も「お金」が市場から引上げられる。筆者が "凄いこと" と書いたのはそういうこと

 「金利差」で「円安」というのがマーケットの定説だが、筆者の意見は「金利差」より「量の差」FRBの「バランスシート」はピークから▼24%減ったが日銀はほとんど減っていない市場では余っているモノは必ず売られる。それを "借りて" 回していたのが「円キャリートレード」だ。その「円」がこれから3年間で▼18%も減る

 今日ドル円が@154円台に落ちたのは偶然だろうが、定量分析の得意なクォンツ系ファンドなら「▼100兆円」という変数を新たに足し込み「ドル円」の投資モデルが変るのは必定。仮に「ドル円」を下方修正すれば「日経平均」も下方修正される。だから 「円キャリートレード」の代替 - 「オプションの売り」も選択肢の一つ|損切丸 特に*上値を限定する「コールの売り」に傾斜するのは判らなくはない

 一抹の疑義もある。現状「インフレ」下では名目株価には常に上昇圧力がかかる。「オプション売り」は期間を絞った戦略なので ”抜け時” が肝心。そこに「円高」傾向で 続・さあどうする?「ドル建資産」 - 「インフレ2.0」がやって来る!|損切丸 「新NISA」が ”日本還り” を果たしたらどうなるか。仮に@42,000円を上抜けしたら昨年同様株価がギャップアップすることになる。波乱要因になりそうだ

 そして「利上げ」「QT」には1つ大きな "社会的意味" がある。今まで「供給」一辺倒だった「円」は一転「回収」に回る。平たく言えば「もうお金が無い」。MMT信者から ”輪転機を回し続ければいい” などの暴論が聞こえてきそうだが「ハイパーインフレ」で「お金」が紙くずになるより「利上げ」「QT」を選んだという事。日本の官僚もそこまで腐ってはいない

 では「もうお金が無い」最大の要因は何か。それはとりもなおさず社会保障費、特に「医療費」である

 1980年にはたった10兆円だった「医療費」。それが気がつけば47兆円にまで膨張。原因は「少子高齢化」、なかでも「入院費」がその多くを占める ↓ e.g., 2021年度17兆円程度

 死亡率トップは「がん」で医科費用の12% ↓ 。最近では良い "新薬" が出て治る病気になりつつあるが、皮肉にも高額な "新薬"「医療費」を押し上げる

 この流れで出てきたのが「高額医療制度」の上限額引上げ

 突然出てきたように報道されているが、財務省の資料を見るとゆくゆくは「廃止」を見込んできた。「お金」の真実=「もうお金が無い」に目を向ければ当然といえば当然。ここまで保険料を年▼80兆円までしれっと引上げてきたが ”取る” のはもう限界。制度全体を変える必然性に迫られている

 ここは「がん保険」等、民間の力を活用するのも一つの手。価格チェックが甘く "天下り" の多い「国」が相手なら新薬の値段もふっかけ放題だが「自己負担」となればそうはいかない市場の ”見えざる手” による価格調整機能が働くはずだ。つまり「無駄使い」が解消される

 ”長期療養患者に悪影響が出る”

 患者を治したい医療界を中心に当然反発の声が出る。だが論点は「医学」ではなく「お金」「医療」はタダでは無い。むしろかなりの高額。**お医者さんにも「お金」の勉強が必要だろう

 **国民的TVドラマ「I棒」悪徳コンサルタントに欺される病院の話をやっていた。同ドラマではその時代のテーマに沿って話が作られるが「病院経営」が取り上げられた。「お金」に疎いお医者さんの中にはコンサルべったりの方もいるようだが、個人的感想で言わせて貰うと優秀なコンサルというものを見たことが無い。ほとんどが現場の知識、経験不足

 「103万円の壁」引上げ等「減税」は声高に叫ぶのに、反対側でいざ「医療費の自己負担」が増えると反対、反対の大合唱。これでは官僚に見透かされてしまう。これこそ 「大きな政府」と「小さな政府」- どちらの ”ポリシーミックス” を選ぶのか|損切丸 予算の全体像を説明しない官僚・政治家も悪い「減税」を叫ぶなら公的サービスの縮小は甘受すべきだし、現行の医療制度維持を望むならもっと「増税」が進んで「7公3民」に向かう

 ”4月から外来診療を止めます”

 10年以上お世話になった近所の病院で突如ショックな貼紙。看護婦さん曰く突然の「リストラ」なのだという。診てくれたお医者も「(病院は)統廃合が進んで潰れる所が出るだろうね」とさらっと語る。そういえば最近専科と病院名が短期間に3回も変った病院もある***東京都心では医療界の地殻変動が確実に進んでいる

 ***盤石と思われた最強の政治圧力団体「日本I師会」この「インフレ」下で保健医療費が減額改定になるのだから何をかいわんや。収入の7割以上を「国」に頼った経営モデルは実質破綻している。歯科ではインプラントや矯正等の「自由診療」に傾斜しているが、全体に同じ流れになりそう

 飲食店も銀行もコンビニも病院も増えすぎた店舗・企業は「淘汰」の波にさらされている。特に「ゼロ金利」や「保険料」「給付金」等「国」の助けに頼ってきた業種は "冬の時代" を迎える。日銀による「利上げ」「QT」は「もうお金が無い」の号砲****もっともそれは悪い事ばかりではなく「国」による呪縛から解き放たれる事も意味する。民間が自立すれば「天下り」も自然と減る。 "特別扱い" じゃない「日本」へ。ー 「円安」が迫る「普通の国」への変革。|損切丸 大きなチャンスにもなり得る

 ****個人なら「国」からの「年金」などを当てにするのでは無く「投資」等で自分の「お金」を守る術を見つけるべき変動金利ローンのコストが上がって大変というなら保有物件を売ってやり直すべきだろう(幸い不動産価格は上がっている)。「家」の話をするなら「固定金利」で返済がきつければ無理をすべきでは無い3割は「頭金」が欲しい


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