「実質金利」の議論。ー「借金」の重み。
ここがドル円相場の大きな転換点になるかー。この3日間息を詰めて見ていたが、いやあ参った(苦笑)。まさかあの急落から@149円台後半まで持ち上げてくるとは...。「お腹が一杯」的な "人間味" は全く感じられ無い。AIプログラムでHFT(高頻度取引)が走っているのだからまあ当然と言えば当然なのだが、急騰急落を繰り返す様はさながらビットコイン(BTC)。こんな代物で "Mrs. ワタナベ” など筆者にはとても無理。
今回は「損切丸」の本業「金利」に戻ってみよう。
アメリカやヨーロッパではCPI(消費者物価)の鈍化→「利上げ」停止の流れがあり、「実質金利」は大分 "収束" しつつある。例えば:
米国債10年@4.41%ーCPI@3.1%ー5年CDS@0.478%=実質金利+0.83%
TIPS(物価連動債)で見ると10年「実質金利」は@2.14%。BEI(予想物価率)@2.27%はやや楽観的過ぎる感もあるがCPIとの乖離は随分解消。
"収束" と同時に金利相場は大分おとなしくなったが、投資家にとっては動きやすい環境になった。ブンブン振り回してるドル円とは対照的だ。
もの凄いマイナス「実質金利」だったヨーロッパも、CPIの鈍化と共に10年国債で@▼1%近辺に "収束" 。一番低いドイツでも@▼1.43%だ。基本「ユーロ安」を指向しているECBとしては居心地がいい所だろう。
「お金」の流出が気になって高い「実質金利」を維持するブラジル(+4.7%)や中国(+2.25%)、あるいは実質的デフォルト状態のトルコ(▼35.88%)、ロシア(▼132.49%?)は別として、やはり突出しているのは日本(▼3.56%)だろう。
100歩譲って日銀の2026年度見通しCPI@1.7%を使っても「実質金利」はまだ▼1.23%。+2.14%のアメリカには遠く及ばない。これが「円安」の根源になっている訳で、少なくとも+1.0~1.5%の「利上げ」は必須。首相は未だに「デフレ」と言う言葉を使っているが根本から認識が間違っている。実質賃金低下が止まらない現状は「スタグフレーション」に近い。
ただこの生活苦の状況は日本だけではない。問題の根幹は300兆ドル( ≓ 4.5京円)ともいわれる「借金」。
そもそもリーマンショック(2008)後の苦境を救ったのは中国による積極財政だったが、これも元は「借金」。それだけでも大変な負荷だったのに「コロナ危機」(2020~2022)で更に100兆ドル単位の「お金」をばらまいた。これだけ「お金」が世界中で溢れかえれば、その価値が希薄化する=「インフレ」は当然だろう。
この「借金」の回収が必要なのだが、対応は各国異なる。
雇用が流動化していて「インフレ」体質のアメリカ、イギリスでは徹底して「インフレ税」。確かに「お給料」は上がっているが、それを猛烈に上回るスピードで物価が上昇。これで国の「借金」の負荷は減る。消費者も生活防衛のために「借金」して不動産を買い漁っているが、ここで国は「利上げ」を選択。負担を国民に課している。
「お給料」が上がらず「預金大国」の日本は対照的。「利上げ」は行わずひたすら「増税」(含.社会保険料)。物理的回収と共に「円安」効果で円建て「借金」の負荷低減を図っている。ある意味現状は狙い通りだが、苦しさに耐えられなくなった生活民から火の手があがりつつある。「増税」路線は限界に近付きつつあり、あとは「お金」の使い方=歳出改革しかない。「シルバーデモクラシー」から脱却できるか、試練の時である。
*日本以上の苦境にあるのは中国。「借金」で築き上げた無駄なインフラ設備が積み上がり動きが取れない状態。いくら独裁体制で「借金」を国民に転嫁しようとしても額が大き過ぎる。まるで第二の「大躍進政策」だ。過去の失敗では大量の餓死者が出たが、今回は50%近い失業率がその "犠牲" 。経済的には「米中対立」を解く必要があるが "面子" もあり簡単ではない。いずれにしろ数年で何とかなるとは思えない。
経済力の無い国々は次々とデフォルトで倒れ始めており、こちらも余談を許さない。G7を中心に債務再編の話し合いも続くが、中国も含めどの国も「借金」だらけで余裕がないのが実情だ。「中央銀行廃止」の大統領が当選したアルゼンチンも気になる。ドミノ倒しにならなければいいのだが…。行き着く所「戦争」?。嫌な予感がよぎっているのは筆者だけではあるまい。