(続)人民元やインド・ルピーは「ルーブルの避難回廊」になり得るのか。 ー 開戦後1ヶ月、「お金」の動き。
人民元やインド・ルピーは「ルーブルの避難回廊」になり得るのか。 ー 「通貨安」と「ドル建債務」の問題。|損切丸|note の続編。
「損切丸」では今回の戦争、軍事情報や人道的報道など紛れが多いものを除外して、「お金」に焦点を当てて客観的に捉えようと試みている。日本では西側の情報も多いので、反対側で支援に回っている中国・インドが焦点。
まずこの1ヶ月のルーブル、人民元、ルピーのFX動向を検証してみよう。
原油・ガスを仲介とした「お金」のフローチャート: ↓
直近1ヶ月対ドルの人民元が@6.3100台から@6.3700まで売られた事( ↑ 標題添付)がこのフローを証明している。少し時差をおいて、一時@150~160まで売られていたドル・ルーブルが、取引量が少なく ”気配値” の域を出ないとはいえ、@104近辺まで戻した動きとも整合的だ。
中国が「お金」のバックアップをしていたのは間違いない。直近のドル建債の利払いが出来てデフォルト回避したのもこの "支援" のお陰だろう。
一介の元・金利トレーダー「損切丸」でさえ思いつくのだから、米国政府やFRBはもっと詳細に調べ上げている、 e.g. FXの相手銀行。何しろ SWIFT やFRBのドル口座で「お金」の流れは丸見え。おそらくアメリカはこういう「証拠」を立てに中国に "支援" しないよう強く迫っているはず。
人民元・ルーブル ↓ を見ると3/22以降再び人民元が上昇している。アメリカの指摘で迂闊に「避難回廊」を開けなくなった可能性が高い。
もう一つの支援国・インドだが、ルピーの動きを見ると規模は大分小さそう。「原油・ガスが安く買えれば」程度の ”支援” だろう。もちろんこの「お金」の動きもアメリカは捕捉しており、釘を刺されている。
「ルーブルの避難回廊」の主体が人民元なのは想定内。では中国が ”支援” に前のめりかというと、実はそうでもない。国内の「不良債権問題」が重くのし掛かっているからだ。
アメリカと同程度の59兆ドル(≓7,100兆円)もの莫大な債務を抱え、日米のように多額の現預金や株資産を持たない中国は、既に「資金繰り」がパンパン。ドルを生む「金の鶏」だった香港も機能しなくなり、海外から「お金」を取り寄せるのに四苦八苦。この状況で「人民元安」は好ましくない。
「不良債権」に喘ぐ銀行を支えるため小刻みに「利下げ」を繰り返し、10年国債金利は一時@2.78%まで低下。だが ”支援” で国外に「お金」が流失し、また@2.85%まで上昇。これではせっかくの「利下げ」が台無しだ。
「苦しい事情」をひた隠しにするのは「専制国家」の典型的特徴だが、為替や金利など「お金」の声を聞くと結構 ”本音” が聞ける。「資金繰り」に余裕がない今の中国に、「戦争」「不良債権」の二正面作戦はきつい。
「通貨安」は不動産会社や銀行が抱える8,000億ドル(≓97兆円)もの外貨建債務の負担も重くし、デフォルトリスクを高める。実際、中国恒大の株が香港で取引停止になったのもその一例と見ていいだろう。
そこに更に 突っ走る「金利正常化列車」。ー 米国債では「逆イールド」が進行中。|損切丸|note が重なる。SWIFT を握り、*「お金」の真実を熟知する欧米は、敵の「資金繰り」事情を知った上でこの「利上げ」を仕掛けている。「円安」に見舞われた日本には、とんだ "巻込み事故" だが(「利上げ」の列に加われば良いのに。苦笑)、「専制国家」群はもっとキツい。「お金」はドル、ユーロ等にどんどん流れていく。
さて中国はどう出るか。「不良債権」さえなければシラを切り通す事もできたが、こちらも尻に火がついている。両方に「お金」を回す余裕はなく、いざとなれば国内事情優先で、国外への ”支援” は切り捨てるしかない。
「日本を含む西側の情報は都合の良いプロパガンダ」
「(演説集会のビデオを見て)モスクワ、全然崩れてないじゃん」
「いずれ北海道に侵略してくる」
日本のネットやメディアではこういう ”向こう寄り” の言説が多くてビックリ。現地取材もしていないのに、何か証拠でも掴んでるのか(笑)。まさか悪い方の結果を望んではいまいが、”ヒット率” 狙いにしても主体性、客観性に欠ける。つまりは「他人事」。事態は流動的ながら、現時点で「お金」の声を聞くと民主主義側優勢は揺らがないが...。まあ、”思い込み” は排除して、今後も「金利」を中心に「お金」の FACT を追い続けてみよう。