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1984年からやって来た男と2020年「新中国連邦宣言」をする男
おはようございます。1984年からやって来たアルキメデス岡本です。
さて、今回は一冊の本をご紹介します。
トマス・モア『ユートピア』、スウィフト『ガリヴァー旅行記』、ザミャーチン『われら』、ハクスリー『すばらしい新世界』などのディストピア(反ユートピア)小説の系譜を引く作品で、全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いている。なお、著者などは言及していないが「1984年」という年号は、本作が執筆された1948年の4と8を入れ替えたアナグラム説などがある。これによって、当時の世界情勢そのものへの危惧を暗に示したものとなっている。
出版当初から冷戦下の英米で爆発的に売れ、同じ著者の『動物農場』やケストラーの『真昼の暗黒』などとともに反全体主義、反共産主義のバイブルとなった。また政府による監視や検閲や権威主義を批判する西側諸国の反体制派も、好んでこの小説を引用する。
1998年にランダム・ハウス、モダン・ライブラリーが選んだ「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」、2002年にノルウェー・ブック・クラブ発表の「史上最高の文学100」に選出されるなど、欧米での評価は高く、思想・文学・音楽など様々な分野に今なお多大な影響を与え続けている。
作品の背景
作者オーウェルは1944年にはこの小説のテーマ部分を固めており、結核に苦しみながら1947年から1948年にかけて転地療養先の父祖の地スコットランドのジュラ島でほとんどを執筆した。病状の悪化により1947年暮れから9か月間治療に専念することになり、執筆は中断された。1948年12月4日、オーウェルはようやく『1984年』の最終稿をセッカー・アンド・ウォーバーグ社へ送り、同社から1949年6月8日に『1984年』が出版された。
1989年の時点で、『1984年』は65以上の言語に翻訳される成功を収めた。『1984年』という題名、作中の用語や「ニュースピーク」の数々、そして著者オーウェルの名前自体が、今日では政府によるプライバシーの喪失を語る際に非常に強く結びつくようになった。「オーウェリアン」(Orwellian、「オーウェル的世界」)という形容詞は、『1984年』などでオーウェルが描いた全体主義的・管理主義的な思想や傾向や社会を指すのに使われるようになった。
オーウェルは1946年のエッセイ『なぜ書くか』では、1936年以来書いてきた作品のすべてにおいて、全体主義に反対しつつ民主社会主義を擁護してきたと述べている。オーウェルはまた、1949年6月16日に全米自動車労働組合のフランシス・ヘンソンにあてた手紙で、「ライフ」1949年7月25日号および「ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー」7月31日号に掲載される『1984年』からの抜粋について、次のように書いている。
わたしの最新の小説は、社会主義やイギリス労働党(私はその支持者です)を攻撃することを意図したのでは決してありません。しかし共産主義やファシズムですでに部分的に実現した(…)倒錯を暴露することを意図したものです(…)。小説の舞台はイギリスに置かれていますが、これは英語を話す民族が生来的に他より優れているわけではないこと、全体主義はもし戦わなければどこにおいても勝利しうることを強調するためです。
しかしアメリカなどでは、一般的には反共主義のバイブルとしても扱われた。アイザック・ドイッチャーは1955年に書いた『一九八四年 - 残酷な神秘主義の産物』の中で、ニューヨークの新聞売り子に「この本を読めば、なぜボルシェヴィキの頭上に原爆を落とさなければならないかわかるよ」と『1984年』を勧められ、「それはオーウェルが死ぬ数週間前のことだった。気の毒なオーウェルよ、君は自分の本が“憎悪週間”のこれほどみごとな主題のひとつになると想像できたであろうか」と書いている。
物語の舞台
その世界は3つの超大国に分断されており、絶え間なく戦争を続けていた。そのうちの1つの国に住む主人公のウィンストン・スミスは、役人のひとりであり、国を統治する政党のやり方に、不満と違和感を抱いていた。
政党は国民を完全なる監視下に置き、国にとって都合の悪い事実を捻じ曲げ、歴史の改ざんを繰り返している。ウィンストンはその改ざんに関わる仕事を担当していたのだ。あまりにも事実が捻じ曲げられすぎたために、古い過去を誰も思い出すことができないほどになってしまっていた。
国を統治しているのは「ビッグ・ブラザー」である。ビッグ・ブラザーは国民の崇拝の対象である。だが、ウィンストンは、ビッグ・ブラザーはお飾りみたいなもので、そもそも存在しないのではないか? と考えていた……。
二重思考とオルタナティブファクト
2017年トランプ大統領が米大統領に就任した当時、大ヒットしたこの書籍は、今から約50年前のSF小説だが一体なぜ、半世紀も前の小説が1位になったのだろうか?
その理由とは。
本作に登場する「二重思考」が関係している。二重思考とは、矛盾する2つの概念を完全に当たり前のこととして受けいれることだ。本作を例にいうと、主人公ウィンストンはビッグ・ブラザーの存在を疑っている。二重思考を用いるなら、「存在しないと信じていると同時に、存在することを信じ切っている」、この状態を指す。現実的に、こんなことを考えるのはムリだ。
作中のキーワード「二重思考」に通じる?
実は、先のトランプ大統領就任式に関して、米メディアは観客数が「過去最低」だったと報じた。にもかかわらず、この後にコンウェー大統領顧問が式の観客が「過去最大」と発言したのだ。おまけに、それを誤りだと認めず、「オルタナティブファクト(別の事実)」と語ったのである。これが、先に挙げた「二重思考」に相通じるところがあることから、今作に注目が集まったようである。
無茶苦茶なことを言って超強引に管理&監視する政府や権力を持った人達が、『これはカレーや』と言ったら、ウンコもカレーになる、みたいな。だけど管理されている側の人の中には、『いや、それはカレーじゃなくてウンコやん』って思う人も当然いるわけで。そう言わせないために、ビッグ・ブラザーは『これはカレーでもあり、ウンコでもある』みたいなイミフな考え方で抑え込むんですが、それが二重思考とカッコ良い名称で呼ばれてた訳だ。
この現象はアメリカで話題になりましたが、元々、全体主義や独裁国家が真実を捻じ曲げ国民を洗脳する為、もしくは権力を保持する為に行われる行為である。
そして「2020年」の現在では、中国共産党の全体主義と監視社会は真実を覆い隠し、国民の人権を無視し続けている。習近平が香港の一国二制度を破棄したり、天安門事件を歴史から抹殺したり、全てが「二重思考によるオルタナティブファクト」なのである。(日本政府でも同様な事例が起きている)
アメリカ暴動の背景
で、話はアメリカに戻るが、アメリカでの白人警官による黒人容疑者への暴行致死事件を契機とした抗議活動は日本でも大きく報道されるようになった。
ジャーナリストの古森義久氏によれば、「強硬トランプ氏に反発」「首都で平和的抗議に催涙弾」「トランプ氏は挑発的行動」・・・と、いずれも朝日新聞記事の見出しだが、もっぱら非はトランプ大統領にあるという論調も目立つ。
だが現地での実態は異なるようである。各都市でのデモは暴動や略奪となって、一般の商業施設などが大幅に破壊されているのだ。だからトランプ大統領の対応も当然、「法と秩序」の維持のために違法行動を取り締まるという基本線になるわけだ。しかも暴動の背後では暴力革命を唱える「過激派左翼組織アンティファ」の動きも目立ってきた。
日本の主要メディアの論調は例によってアメリカの反トランプ・メディアの基調をなぞって、「トランプが悪いから」という浅薄な非難に傾いている。つまりトランプ大統領が黒人差別や貧富の格差を強め、そこにコロナウイルスでのこれまたトランプ政権の誤った対応が加わって、アメリカ国内の分裂を深め、黒人など少数民族の不満を増大したために、こんな騒動が起きるのだ――という趣旨の「人種差別抗議説」である。
ところがいまアメリカで起きていることは上記の推測の構図とは異なる。
まず今回の騒動の契機となった事件が起きたのはミネソタ州、全米でも最もリベラル色、民主党傾斜が強い地域なのだ。そのミネソタ州でふだんから黒人への差別が顕著だったという事実はない。たまたま白人の警官が黒人の容疑者に過剰な力を加えたという犯罪事件だったのだ。
ましてトランプ大統領が就任して3年半、黒人など少数民族を明らかに差別した政策をとったという事実はない。もしあるのならば、提示してほしい。反トランプのメディアがトランプ氏の片言隻句を捕らえて「トランプは黒人を差別している」と断じるだけなのだ。その背景には黒人層は歴史的に民主党支持が多いという事実がある。だから黒人のなかでトランプ嫌いという人は多い。
かといってトランプ大統領が具体的に黒人差別の法律や条例を作ったという実例はない。むしろ政権の閣僚や枢要ポストに黒人の男女を起用した実例も多い。
ただし一般的には黒人の側に長年、差別されてきたという意識はなお強いから、今回のように「黒人だから虐待された」と思える事件が起きれば、全米の黒人層が過敏に反応する傾向はあるわけだ。1960年代から2010年代まで、その種のトラブルが全米規模に広がる例は多かった。それらの実例は時の政権が共和党か、民主党かの区別もなく起きてきた。
しかし今回の事件はその黒人容疑者を虐待したとされる白人警察官の行動は犯罪とされ、当人は逮捕され、刑事訴追の手続きがすでにとられた。トランプ大統領もその白人警察官を明確に非難した。だがそれでもいかにもトランプ政権がこの種の黒人虐待を奨励しているかのような抗議の下でのデモや集会が広がるのはたぶんに共和党対民主党、保守対リベラル、そしてトランプ支持層と反トランプ勢力の政治的な対立のためだといえよう。
反トランプ勢力は今回の事件を利用して「トランプ大統領は黒人の差別や虐待を奨励する」という政治宣伝を広めようとするわけだ。その構図では日ごろからトランプ大統領の動きにはすべて猛反対というトランプ叩きのメディア――ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、CNNテレビがその典型――が率先して、「トランプの人種差別」というイメージを濃縮して拡散してきた。
だがいまアメリカ各地で起きているのは黒人の利益を代弁すると称する勢力が単なる抗議デモだけでなく、違法な略奪や破壊を繰り返すという現象である。一般の商店に侵入し、商品を略奪する。ホワイトハウスのような公共の施設に乱入を図り、警官隊に暴力をふるう。市街にある自動車を破壊し、放火する。そんな無法の破壊行動なのである。
政府当局がこんな違法行為、犯罪行為を放置できるはずがない。どんな政府でも大統領でも自国内の「法と秩序」は守らねばならない。今回の「抗議デモ」が明らかに「無法な暴動や略奪」へとエスカレートしたことは明白だからである。
一方、ジャーナリストのモーリーロバートソン氏によれば、トランプ大統領は極左グループが扇動しているとTwitterで非難しているが、ロバートソンはこれに否定的だ。
白人至上主義者の一部のミリシア(武装組織)が、極左グループに成り済まして、ツイッターで「怒りを白人に向けろ」と煽って、デモを過激化させたとみている。
彼らはトランプ支持で、人種が混在する都市部とそれ以外とを分離させたいのだという。メディアもトランプ支持の保守系と反トランプの中道・リベラルとに二極化して、世論が一つになりにくい。さらに、ロシアと中国が騒動に便乗して情報戦を展開中という観測があるという。
つまり、全米混乱で新型コロナ対策失敗のごまかしにアンティファをテロ組織に認定した可能性が高いとみている。
ロバートソンは「白人の警官が黒人を痛めつけるのは昔からだが、最強軍隊が黒人の暴動から守ってくれれば、トランプさんありがとうという白人層はいます。みんなが平常心を失うと、トランプが有利になります」とつけ加えた。
つまり、今のアメリカは極左と極右の対立構図が先鋭化しつつあり、その背景にはトランプがよく言う「ディープステート」が大きく影響していると見るべきだ。
ディープステートとは、政界やメディアを牛耳っている影の国家だ。人は自分が信じたいものしか見ようとしない。自分に都合の悪い現実は見ようとしないのです。その結果、ディープステート=陰謀論という思考停止のワナにはまってしまい真実が見えないのです。
新中国連邦宣言
そこへ突如飛び込んで来たのが、元サッカー中国代表による新中国連邦宣言だ。
サッカー元中国代表で、歴代最多ゴールを記録した海東(カク・カイトウ)氏(50)が米サイト「ユーチューブ」に「新中国連邦宣言」と題した動画を顔を出して投稿し、「中国共産党の殲滅(せんめつ)は正義にとって必要だ」と主張した。
ユーチューブは中国で遮断されており、カク氏の発言に関する報道も禁止されたもよう。ただ特殊なアプリを使えば中国内からも同サイト視聴は可能で、サッカー界のレジェンドによる突然の「共産党打倒」宣言は一部に衝撃を与えている。
カク氏は動画で、中国共産党の全体主義統治が「人権を無視し、民主を踏みにじり、香港で殺戮(さつりく)を行ってきた」などと主張。また新型コロナウイルスによって「世界に生物化学兵器による戦いを発動した」とも語った。それをサポートしているのが、トランプ米大統領の首席戦略官だったスティーブン・バノン氏や米亡命中の中国人元実業家、郭文貴氏との連携も示唆した。
時代は風雲級の展開となって来た。1984年が描いた世界が、現実とリンクしながらディストピアに向かうのか、それとも新たな世界へと生まれ変わるのか。
我々は今、その「狭間(HALF)」にいる。