【ネタバレなし感想】「その本は」で読者を選ばない自由度の高い読書体験を。
ヨシタケシンスケ、又吉直樹の「その本は」を読みました。
この本は、読書好きだが目が悪くなり本が読めなくなった王様が、2人の男に旅に出て何か面白い本についての話をいくつか探してくるよう命じるところから始まります。旅が終わったらその本について話して聞かせてくれ、とのこと。
2人の男が戻ってきて教えてくれた面白い本の話をまとめたのがこの本(という設定w)。だから全ての話が「その本は…」で始まります。
ヨシタケ氏によるイラストとやわらかい手書き文字を合わせた絵本のようなパートと、又吉氏による短編小説のようなパートが交互にやってきます。
構成が良いし、読んでて楽しい。
あと装丁が素晴らしい。
ある王国から旅に出た2人の男の話…ということで、中面もあえて汚れていたりヤケがあったりその箇所に合わせた小ネタがあったりして素晴らしいので、ぜひ開いて見てほしい!
さて中身はというと、単なる駄洒落みたいな話や童話みたいな話もあれば、一本映画を見終わったように感じるようなボリュームのある話、はたまたすんごく短いのに感情を揺さぶってくる話もあります。なんでもあり。
あとヨシタケ氏の絵かわいい。
簡素なようでめちゃくちゃ画力高い。
さすが大人気絵本作家。子供だましじゃない。
全ての話がつながっているわけではなく1話完結型(っていうのかな?)なので、めちゃくちゃ読みやすい。小さなお子様にも、読書苦手で集中力ないよ〜って大人にもおススメ。
ページの順番通り読む必要もないし、気になるとこだけ読んでもいいんじゃないかな。
めちゃくちゃ自由度が高くて柔軟な本だと思います。
あと!!これをお子さんに買い与えて、数年後読み返してもらったりとかしたらめちゃくちゃ面白そう。人生にささやかな、ひとさじのシュガー(スパイスじゃないのかよ)が足されるんじゃないかしら。そんな本です。
ネタバレ避けではっきりとは言いませんが,又吉パートのあの話(一番長いやつ。読んだ人は分かるよね)は、ぼろぼろ泣きました。
感性がみずみずしくて、読んでて自然と小学校の頃を思い出した。ああいう話が大人になっても書ける人は、こどもの頃の感覚をなくしてないってことなのかな。すごいな。
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ちなみに、私がこの本を手に取ったきっかけは、amazonの誤配です。
注文していないこの本が届いたから問い合わせたところ謝罪され、こちらで処分していいとのことだったので、せっかくだし…と開いたら面白かったのです。
なんだかこの本が私の手元に来るまでも偶然発生した本の旅という感じがしてとてもよかった。