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「49歳のクリスマス」を独身で迎えて思うこと。

『29歳のクリスマス』というドラマを知っている人はどれぐらいいるだろうか。

1994年にフジテレビで放送された、山口智子さん主演のドラマである。

(左から柳葉敏郎さん・山口智子さん・松下由樹さん)

アパレル会社勤務の典子(山口智子)は、朝、鏡を見て驚いた。額の少し上にハゲができていたのだ。その日はハイヒールのカカトが折れる、会議に遅れ典子が提案した新しいブランドの製造は中止。恋人の久保田(神保悟志)にも振られた。最悪な出来事ばかりのこの日は、典子の29歳の誕生日。そんな中、典子は報道カメラマンの彩(松下由樹)の部屋へ行く。そこには二人の共通の男友だち賢(柳葉敏郎)がいた。典子は二人にグチをこぼす。しかし、彩も賢も、それぞれの悩みを胸に抱えている。

FOD『29歳のクリスマス 第一話』より)

29歳を迎えた主人公(山口智子)が30代を前にして、恋愛やら仕事やら色々ありながらも前に進む物語。
たしか「29歳のクリスマスまでに幸せになってやる」的な話だったような気がする。

このドラマの放映当時、私は大学1年生の19歳。
29歳なんて遠い未来の話だったし、その年齢で自分が一人でいるなんて思っていなかった。
いや、思いたくなかった。


その頃、女性の結婚年齢は「クリスマスケーキ」にたとえられ、「24歳が最後の売り時、25歳からは売れ残り」とか言われていた。

だからドラマみたいに29歳で独身だと確実に「売れ残り」扱いだった。

実際、私の学生時代、女性の先生が30歳超えて独身だと「30過ぎてるのに独身」とレッテルを貼られて、どこか「女として失格」みたいな扱いをされていた気がする。(うちが田舎だったせいかもしれないけど)

そういや、男性の先生はそんな扱いされてなかったな。
男性はクリスマスケーキにもたとえられなかったし。
「25歳が売れ残り」と言われるのは女性だけだった。

今考えると色々なんだか納得いかないし腹立たしいけど、当時はそれが世間の当たり前だったし「そういうもの」だと思って生きていた。

だから自分もできれば25歳までには相手を見つけたかったし、最低でも28歳ぐらいまでには結婚したかった。
30歳で独身なんて「絶対ありえない」と思っていた。


ところが、大学を卒業して社会人になり、いつの間にかクリスマスの年齢も超えた。

別に仕事熱心な「キャリアウーマン」だったわけじゃない。
ただ、機会と男運に恵まれなかった。

そしてこのドラマ『29歳のクリスマス』はその頃、クリスマスが近づくと毎年再放送されていた。
最初はひとごとだった『29歳のクリスマス』が、だんだんと自分ごとになっていった。

その頃よく遊んでいた会社の同期女子3人と「全員独身のまま29歳になったら、あのドラマみたいに一緒に暮らすか!」なんて話もたまに出ていた。

せっかくならドラマみたいに一戸建てがいいね!とか、やっぱりオシャレなマンションがいいな〜とか、誰が料理担当?とか、妄想しては盛り上がっていた。

多分みんな本気じゃなかったけど、私は「本当にそうなったら楽しそうだな…みんな独身でいれば良いのに…」と少し思ったりした。

ところが、28歳になったとき、3人のうち1人の結婚が決まった。

彼女の結婚披露宴の入場曲は『29歳のクリスマス』の主題歌、マライアキャリーの『恋人たちのクリスマス』だった。
イントロが流れた瞬間、残された友達と2人、そっと涙をぬぐった。

そして強く思った。

私も!29歳までには!幸せになりたい!
29歳のクリスマスを1人で迎えるなんて!
絶対に!絶対に!!いやだ!!

今思えば、何がそんなに嫌だったのか分からない。

「30歳になって結婚もできない人」と見られるのが嫌だったのか。
「かわいそう」と思われるのが嫌だったのか。
「女として失格」だと思われたくなかったのか。
「結婚できない=不幸」だと思っていたのか。
分からない。今となっては思い出せない。

とにかく、そこからあっというまに29歳のクリスマスがやってきた。
私は相変わらず独り身だった。
その日、誰とどこで過ごしたのか、まったく覚えていない。
でも多分、この世の終わりのような気持ちだったと思う。


それから20年が経ち、今年私は「49歳のクリスマス」を迎えた。

結局、私は独身のままだ。
29歳の私が聞いたら白目を剥きそうだけど、それでもいいじゃないかと今は思っている。

でもそう思えるようになったのは、ここ数年のことだ。

40歳を過ぎるぐらいまではずっと、「結婚しなければいけない」「子供を産まなければいけない」という呪いに縛られて、合コンやら紹介やらお見合いやら、最終的には「結婚相談所」にも入会した。

「みんなができる『結婚』ができない自分は、きっとどうしようもない欠陥人間なんだ」と落ち込んだり泣いたりした。

それでもどうにか気持ちを奮い立たせて「結婚しなければ!」と、婚活の戦場に挑んでいく日々だった。本当にしんどかった。

残念ながらご縁には恵まれず、「もういいよね。これが私の人生なんだわ」と完全に吹っ切れたのは40代も半ばだった気がする。

こんなことなら、もっと早く吹っ切ればよかったのにと思う。
人生の大切な時間をもっと違うことに使えたのに。

でもきっと、あれも必要な時間だったと思う。いや、思いたい。


ということで迎えた「49歳のクリスマス」。

19歳の私や29歳の私が思い描いていたものとは、信じられないほどまったく違う。

だけど「これもいいじゃない」と思えるようになれてよかったなって思う。

そう、これでいいのよ。
欠陥人間かもしれないけど、ちゃんと幸せだもの。

メリークリスマス、私。
もっともっと幸せになろう。

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オカダトモコ 旅が好きなライター / カメラマン
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