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スタートアップにおける失敗のガバナンス

先月読んだ『失敗の科学』という本を読んだのですが、大変学び深く、早くも今年ナンバーワン本で確定しました。
読み終わった日から自分の行動が変わる本に出会ったのは久しぶりです。

今回は組織構築の観点でのtake awayを書いてみました。

航空業界は失敗のプロフェッショナルという話

本の中で、原因究明を嫌う医療業界と失敗のプロフェッショナルの航空業界との対比が出てきます。

事故には、特定の「パターン」があるのではないか?適切な対策をとれば、次の命を救えるのではないか?
しかし医師たちにその「パターン」を知る術はなかった。(中略)医療業界はこれまで、事故が起こった経緯について日常的なデータ収集をしてこなかったのである。
一方、航空業界では通常、パイロットは正直に、オープンな姿勢で自分のミス(ニアミスや胴体着陸)と向き合う。(中略)すべてのパイロット、すべての航空会社、すべての監督機関にとって貴重な学習のチャンスとなる。

マシュー・サイド.失敗の科学失敗から学習する組織、学習できない組織

私は前職で医療業界に携わっていたのでそのままは受け取れない内容でしたが、確かに失敗に対する組織的なスタンスの差というのは様々なところに存在しています。

失敗が許されない環境というのは、場合によっては最後のひと踏ん張りを生むこともありますが、組織的に/継続的にそういったプレッシャーをかけ続ける組織はかなり運営の難易度が高くなります。

スタートアップにおける失敗

その点、スタートアップは普通にやったらうまくいかないことにベットする特性上失敗のハードルが低く、そこから高速のPDCAを回すことで急成長を目指す構造になっています。
しかしながら、事業計画やらロードマップ通りの開発やらの期間は伸びていき、予算は月次に落とし込まれ、社内外にもコミットメントはでてくるわけで、特にレイターステージの投資家が増えてくると失敗のハードルが少しずつ上がってきてしまったりもするわけです。株式公開してしまうとさらに、です。

そんな中でいかに失敗のプロフェッショナル集団たるカルチャーを維持するか、自戒も込めて考えてみました。

(この手の話をするときに、心理的安全性というのは非常に重要なファクターだと思っています。このnoteではより経営システムに重点をおいて『失敗の科学』をかみしめようと思います)



①失敗を計画に織り込む

失敗がゆるされない期間設定、予算設定、目標設定になっていないか?

頭を捻れば捻るほど、数字をいじればいじるほど、始めからうまく行く、描いた通りに成果が伸びるという前提にたちがちです。
でも未知のチャレンジをするときは、いかに近くに事例があっても失敗はつきもの。
これは戦略計画が役に立たないのではなく、成功に失敗は欠かせないという前提にたった計画になっていないからです。

例えば、

  • セールスのランプタイムは過去の最速記録がベースになっていないか

  • 新規のマーケ施策が初月からリードを生むことになっていないか

  • リリースの変更失敗率を根拠なく低くみた開発計画になっていないか

  • チーム全員が目標達成しないと達成できない月次目標になっていないか
    等々

計画時点で失敗をさせるよう仕込むことは、爆発的な成長を生むために必須
だと思っています。

失敗はあってもいいのではなく、かかせないのである

マシュー・サイド.失敗の科学失敗から学習する組織、学習できない組織

②失敗時のオペレーションを作りこむ

航空業界と医療業界の比較のなかで明らかだったのが、失敗や事故が起きたときのオペレーションの違いです。
航空業界では事故(未遂)が起きたときの仕組みがしっかり作りこまれています。

  • ニアミス発生時の報告書は10日以内に提出すれば処罰されない

  • 設定した高度などの計測数値を逸脱すると自動でエラーレポートが送信される

  • 独立かつ強い権限を持つチームが真因の調査にあたる

  • 調査結果や提言はあくまで事故を起こした個人の責任と切り離して行う(システムで捉える

スタートアップの経営においても、計画上失敗を織り込むだけでなく、失敗時にどうするかが大事です。
失敗をいつ・どのように検知するか、どうやって真因を特定するか、どのようなリカバリー施策を打つか等

  • 顧客データ流出時のオペレーション

  • KPI未達成時の追加施策の決定タイミング

  • 採用計画遅延時の打ち手
    等々

うまく行かなかった場合に冷静に動ける仕組み作り、そしてその経験を徹底的に生かす仕組みやルールの整備を進めていく必要があります。

我々が身に付けたすべての航空知識、すべてのルール、すべての操作技術は、どこかで誰かが命を落としたために学ぶことができたものばかりです。(中略)これらの教訓を忘れて一から学び直すのは、人道的に許されることではないのです。

マシュー・サイド.失敗の科学失敗から学習する組織、学習できない組織

③失敗しうるチャレンジであることを常に掲げる

私もスタートアップの経営陣なので、自分たちは成功するまで諦めませんし、絶対に成功できると信じていますが、私たちは常勝軍団ではありません。
負けは許されないという組織マインドセットはスタートアップのチャレンジとは相性が悪く、誰も成功したことがないこと・確率的には失敗することにチャレンジしているというマインドの醸成は重要です。

私自身コンサル出身なので陥りがちですが「我々はロジカルに考えて答えが出るほど単純な取り組みはしていない(アクション量を通じて学べ)」と立ち戻るようにしています。

完璧主義の罠に陥る原因はふたつの誤解にある。
1つ目は、ベッドルームでひたすら考え抜けば最適解を得られるという誤解。(中略)
2つ目は、失敗への恐怖。(中略)失敗をなくそうと頭の中で考え続け、気づけば「今欠陥を見つけてももう手遅れ」という状態になっている。

マシュー・サイド.失敗の科学失敗から学習する組織、学習できない組織

スタートアップは失敗し続けられる会社

上場後もスタートアップマインドを忘れないことを掲げ、実際に多くのチャレンジをされているメガベンチャーも多いですが、それは経営者のマインドだけではなく、組織としての失敗との向き合い方がある気がしています。

スカイディスクも、成長を実現していきながらも守らず、永遠に失敗し続ける会社であり続けたいと思っています。


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