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海まで歩く(Day 1)
普段の生活が十分にイミフなので特にベケット成分を必要としない。"目的への抵抗"というロジックは《抵抗》という言葉を使ってしまった段階で十分に「しばられているなぁ」とぼんやりと思う。
「やりたいこと100」を97個書いたところで、「海まで歩く」を追加した。
ドロシーを「○○へ行こうよ」と誘うと、「そこに何があるの?」と必ず聞かれる。大抵、「いや、よくわからないよ。わからないから行くんだよ」と答えるが、「何がそこにあるのかわからないのになぜそこに行くの?」と返されて、なんだかションボリしてしまう。
ションボリという言葉には味がある。ションボリには意味があるのだろうか? もしかしたら、しばらくの間、ションボリしていること自体が大事なのかもしれない。そんなことを思う。もっとみんなションボリすればいいのに。
うちからちょっと行ったところに、荒川の支流の高麗川が流れている。そこにそんなにも大きくもないのに粟生田大橋という名前の橋が架かっている。そしてそこからは奥武蔵山系や、通称おっぱい山(笠山)がよく見える。
笠山は、まぁ、確かによい形をしている。ションボリしたときに笠山を眺めると、その通称に、意味もなく元気がでる。
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埼玉県には海がない。川崎に住んでいた頃はよく羽田近くの多摩川河口から羽村取水堰まで歩いた。50 kmほどだろうか。多摩川に沿って南武線が走っているので、疲れたら南武線で帰ればよい。3日か4日をかけて歩く。
川に沿って歩くのはそんなに面白くはない。飽きるし、多摩川は河川敷が整備されていて、下流は特にやたらに野球やサッカーができるグラウンドがあって埃っぽいのだ。
それでもなんとなく歩いてみたりするのは、歩くのが嫌いじゃないということもあるが、意味がないことが嫌いじゃないからだ。たとえば、おっぱい山にはだからなんだというほどの意味がない。そんなものだ。だから、ベケットはちょっとあざといのだ。猫に散歩の理由を聞く奴はいない。意味とか理由なんて、あるようでない。
埼玉県の坂戸に引っ越してちょっと寂しいのは海まで歩けないことだ。そういえば去年の夏に読んだ乗代雄介『旅する練習』という小説では、主人公とサッカー好きの姪が千葉の手賀沼から茨城にある鹿島アントラーズの本拠地まで利根川沿いを歩く旅をしていたっけ。だったら、荒川支流の高麗川に沿って荒川沿いに海まで歩けないこともないだろう。そんなことを思って、「やりたいこと100」に「海まで歩く」と書いた。
1月4日。世間では仕事始めだが、4日・5日と休みにしてしまった。午後、外をみると風は強いが、日差しがあってそれなりに暖かそうだった。「海まで歩く」は、本当は桜の咲く頃にと思っていたが、とりあえず、試しに高麗川に沿って歩いてみることにした。地図で見ると志木あたりまでは東武東上線沿いなので途中で歩くのを止めてもすぐに帰ってこられそうだし。
天気は良い。いつものスロージョギングのコースを高麗川沿いに歩き始める。風は7 mと強い横風だが、川は途中から大きく右に向かうはずなので追い風になる予定だ。
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少し行けば、高麗川は荒川の別の支流、越辺川と合流する。歩き始めたのはその出合いから1.6 kmほどの右岸となる。
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すぐに越辺川との出合に至る。このあたりまでがスロージョギングのコースだ。
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離れたところに鷺がいる。鷺をみると『梁塵秘抄』を思い出す。
我を頼めて来ぬ男 角三つ生ひたる鬼になれ さて人に疎まれよ 霜雪霰降る水田の鳥となれ さて足冷たかれ 池の浮草となりねかし と揺りかう揺り揺られ歩け
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東武東上線の鉄橋をくぐり、越辺川右岸の表示がある。越辺川はやがてこれも荒川の支流の入間川と合流する。そこまで 9 kmほどだということになる。越辺川はしばらく北東に向かう。影も前方に延びる。風は強い横風だが、日差しがあるのでそれほど寒くはない。
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しばらく行くと越辺川に都幾川が合流する。この辺りから川は大きく右に折れ、南東に向かう。風が冷たくなってくる。かなり歩いたつもりだが、まだ坂戸市からでない。
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左手後方に見えていた奥武蔵山系が右手前方へと変わる。その向こうに富士山が見える。丹沢に遮られてしまう神奈川より、富士山は東京や埼玉の方が実はよく見えたりする。
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坂戸市から川島町へ。ここまで思った以上に時間がかかった。越辺川が坂戸市を大きく巻くように流れているからだろう。
越辺川と飯盛川の合流付近、コハクチョウ飛来地。カモらしきのもかなりいる。
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越辺川と小畔川の出合い。このあたりが越辺川の起点らしい。少し行くと越辺川右岸の標識がマイナスになる。マイナスの表示を初めてみた。越辺川・小畔川・入間川との出合となる落合橋がすぐ向こうに見える。
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「海まで歩く」 Day 1はここまで。12 kmほどを歩き、結構ヘロヘロになる。志木ぐらいまで歩けるかと思ったが甘かった。落合橋南詰からバスに乗る。途中、川越氷川神社で下車して初詣と思ったが、人が多すぎるて退散。再びバスで川越市駅へと向かう。
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《海まで歩く(Day 1)粟生田大橋-落合橋:高麗川右岸⇒越辺川右岸⇒入間川右岸》
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