歳を重ねてよいことは「できてもできなくてもよいこと」:松坂和夫『数学読本1』
昨年の5月に『独学大全』に刺激されて始めた松坂和夫『数学読本1』を今年の6月にやっと読了できた。
「よぉ~し」と意気込んで始めてはみたものの、途中で第3章の沼のような因数分解や連立方程式の計算問題に手こずり、結果として読了に1年以上かかってしまった。それでも例題・問題はすべて解いたので満足度は高い。
因数分解や連立方程式を解くなんて、いったい何年ぶりにやっただろうか。あ、ちょっと虚飾してしまった。何十年かぶりだ。
沼のような計算問題に手こずったのは、計算が解けないというよりは、引き算を間違えたり、符号を書き間違えたりが頻発したから。
そもそも問題をノートに書き写す段階で符号や数字を間違えていたりもする。瞬間的に映像を把握するタイプの認知能力が落ちていることも実感する。「25歳ごろにピークをもつような、新しい情報を獲得し、それをスピーディーに処理・加工・操作する知能で、暗記力・計算力・直観力などが該当する流動性知能」が自分のイメージ以上に衰えてしまったことを痛感する。まぁ、ピークアウトからずいぶん経っているので、それも必然ということだと受け入れるしかない。
今年の5月の連休に始めた知り合いにあっという間に追い抜かれたことも刺激となり、やっとこさ第3章「数学の威力を発揮する - 方程式」を抜けだすことができた。『独学大全』でも述べられていたように、《技法13:ゲートキーパー》は大切だなと思う。
いずれにせよ、第3章の因数分解と連立方程式の沼のような計算問題も、通り過ぎればなんとやら、第4章の不等式の章の計算問題が易しく感じる。まるで爽やかな高原に出たような気持ち。第3章の計算で苦労した分、計算の勘が少し取り戻せたような気持ちにすらなる。もちろん、勘違いだと思う。
『独学大全』《技法12:ラーニングログ》にも助けられた。日付プレッシャーがかかりにくいのも良い点だと思う。
第3章の遅々とした歩みから一転、第4章の不等式に入ると計算負荷が減ったおかげで《ラーニングログ》の記録が進むことに励まされた。
読み終えられたことの満足感でいっぱいになって、不等式の最終コーナーの"4.3節"の途中あたりで、調子に乗って『数学読本2』を買った。数学読本は1~6(高校数学)なので、まだまだ先は長い。
ひとり長編読書会? まぁ、歳を重ねてよいことは「できてもできなくてもよいこと」ぐらいだろう。その意味で最近はだいぶ自由になれた。