アグロエコロジーの時代
最近の世界は、異常気象による穀物の不作やウクライナ紛争による穀物の需給バランスの変化等により、各国は食料の安定確保が政策の最優先課題になっています。またEUでは農民の利益が確保できなくなり、各地で暴動やストライキが頻発していますし、日本でも農家の高齢化や肥料の高騰等により離農が拡大しています。
このように原因は各国の事情により種々様々ですが、食糧危機が世界共通の深刻な課題になっています。
しかし日本国民の大多数は、政府やメディアが世界の情勢を忠実に国民に伝えないため、少しぐらい値上がりしても量そのものは余裕があると考えています。
私の場合は、日本のテレビや新聞はほとんど見ませんが、ロシア、中国、米国、EU諸国、インド、ブラジル、エジプト、トルコ等主要国のメディアのニュースは毎日確認しています。
日本の食糧自給率は非常に低く、危険水域です。
牛肉、豚肉、鶏肉の状況については前回の記事で警鐘を鳴らしたつもりですが、小麦、トウモロコシ、大豆等の穀物も同様です。
このような状況の中で、今年に入って世界各国が注目している考え方が「アグロエコロジー」という概念です。
直訳すれば「農業生態学」となりますが、これではチンプンカンプン解りません。
ある論文では「アグロエコロジーは、社会科学、生物科学、農業科学に立脚し、それを伝統知や農民の知恵と融合させた科学であり、その真髄は、地域の生態系を模倣した農業生態系の構築にあり、自然生態系の持つ、効率的な栄養循環、複雑な構造、豊かな生物多様性を再現すること」と説明しており、ますます難解です。
このことを世界で初めて唱えたのはミゲール・アルティエリというチリ出身の学者で、1983年にその概念を発表しました。彼は1950年生まれで、今年74歳です。
彼の講演を聞いて私流に解釈すれば、「現在の食糧に関わる生態系は、一部の資本家による大量生産、高効率の追究により生態系が破壊され危機的な状態にあり、これらの破壊された生態系を以前の状態に再生するためには、農業そのものを小農で有機的な循環型に変える必要がある。」ということです。
もっとわかり易く言えば、今の大量の農薬と化学肥料や、また遺伝子組み換え植物による生産では、土壌の微生物や昆虫が死に絶え、持続不可能な不毛の地になってしまう、ということです。
それを知ってか、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは最近盛んに世界の農地を買いあさっています。一説にはマクドナルドのポテトチップスは大半がビルゲイツの農地で生産したもののようです。
また、ミゲール・アルティエリは、「食料主権」という概念を強調しています。
「食料主権」とは「生態学的に健全で持続可能な方法で生産された、健康的で文化的に適切な食料に対する人々の権利、そして自らの食料と農業システムを定義する権利」と定義されています。
「食料主権」は、フードシステムをコントロールする権利を持つのは企業や市場ではなく、生産者・流通業者・消費者だということを強調する政治活動です。
まとめ
私は近いうちに故郷に移住(Uターン)するにあたり、地方を活性化し、自律的な生活が営めるようにしたいと考えていますが、「アグロエコロジー」こそ最も有効で実現の可能性の高い基本方針と考えています。
もう少し噛み砕いて言えば、食料主権を基本理念とした有機循環型小農業に切り替えることです。
余談になりますが、我が家の故郷の田んぼの一部は、以前に政府の指導により「圃場整備」を行いましたが、全く効果が出ていません。また、未だに償却できていませんので、このままだと採算が合わず手放さざるを得ません。
このような状況は近所の農家も同じですから、圃場整備を半強制的に主導した政府の大失敗と言えます。
日本の狭い土地を圃場整備して長方形にしたところで効果が出るわけがありません。こんな簡単なことが分からないのが霞が関の役人です。
もう一つ余談ですが、我が家の家庭菜園は、今まで無農薬でしたが、今年からは肥料も化学肥料から有機肥料に切り替え、完全有機で栽培する方針に切り替えました。
当然故郷でも有機栽培を徹底しようと考えています。
とにかく私の方向性は決まっています。
「地方開拓」、「地方移住」は「アグロエコロジー」基本概念に則って進めていこうと考えます。
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