リアリティショック
今回は人材育成に関してです。
もくじ
1 期待と現実
2 一見慣れた風でも
3 じっくり話して
1 期待と現実
春はOJTの季節です。私のnoteでは繰り返しこのフレーズが出てきています。
臨床OJT研究会では春はOJTの季節であり、この時期に何かしらの企画を行ってまいりました。
この春は自身の転職もあり企画することが不可能であったため、開催時期をずらそうと考えています。企画定まり次第ご連絡します。
さて、今回はタイトルにありますように取り上げるテーマは
「リアリティショック」です。
リアリティショックとは以下の文献にこのように示されています。
谷口初美 他 大卒新人看護師のリアリティ・ショック ースムーズな移行を促す新たな教育方法の示唆ー 日本看護研究学会雑誌 Vol.37. No.2. 2014
「数年間の専門教育と訓練を受け、卒業後の実社会での実践の準備ができていないと感じる新卒専門職者の現象、特定のショック反応である」
このように定義づけされています。
皆さんの職場の新人さんたちは如何でしょうか?
新人指導においては、その担当者、プリセプターが中心となり指導に当たる場合が多く、面倒を見る指導者も新人に近い年齢であるため、もしかするとこのリアリティショックに
気がつかない場合があるかもしれません。
中堅職員や職場長は、表情が明るく一見問題ないように見える新人さん達に、ダイレクトにリアリティショックについて質問しても良いのではないかと考えています。
新人さんから話を聞くと、意外な一面が出てくる場合があります。
職場長は事が大きくならないうちに、問題を未然に防ぎたいものですね。
ちなみに私が新人の頃、リアリティショックは無かったです。
しばらく経ってからですかね、社会人の厳しさや辛さから、つい自暴自棄になりました。
広い意味ではまだ新人に値する頃だったので、振り返ればこの時期でのリアリティショックではないにして、そうだったのかな?と懐かしく思います。
程度の差はあるにせよ、誰しも抱く感情の一部かもしれませんね。
2 一見慣れた風でも
注目すべきは新人さんのみならず、一見見落としがちな先輩職員です。
5年目以下の職員でも、職場によってはベテラン職員の域に既に達しています。
見ていて本当にたくましく頼もしく映るものです。
新人の頃(学生の頃を知っている職員)は…とつい懐かしくなるものです。
あの時は本当に緊張していて、右も左も分からない自分を優しく指導してくれた先輩とも対等に話ができたり、各科の医師とも意見交換ができたり、1日1日の成長に目を見張るばかりです。
人は成長すると、さらなる高みを目指し、ステップアップを考えたり、実際に成長できるのです。
齋藤孝 著 人はなぜ学ばなければならないのか 実業之日本社 2016
この本によれば、以下のようなことが書かれています。
「学びにとって気づきとは何か…中略…学びには誰かの憧れに憧れるという側面もあります。…略…私たちはより高いものに反応すればするほど、自分の世界をより豊にしていくことができるのです」
つまり、臨床現場の新人さんでは、先輩職員の臨床場面を見たり、息づかいを感じたりしながら、自分の世界をより豊にしようと高みを目指していくのだと考えられます。
先輩の皆さんは、何かを教えようとするより、自分自身が行っていることに、「憧れて」もらえるよう、背中を見せられるようになれたらいいのだと思います。
しかし、先輩諸君の中には、理想と現実のギャップというか、初めて経験する仕事においては、先にお示ししたリアリティショックの定義で
「数年間の専門教育と訓練を受け、卒業後の実社会での実践の準備ができていないと感じる新卒専門職者の現象、特定のショック反応である」
という部分の、
「卒業後の実社会での実践の準備ができていないと感じる、特定のショック反応である」
という部分だけ引用すれば、先輩職員においても、初めて経験する仕事においてなんらかの不安が起こりそうです。
つまり、何か指導に関することや、その他の実践でこの準備が出来ていない状態では、何かしらのショックを受ける可能性があると考えられます。
では先輩職員やベテラン職員でありがちな悩みはどんなものがあるでしょうか?
1 後輩を指導できない
2 先輩から指導されなくなって不安
3 予想していた給与と違う
4 組織内異動で困惑している
5 上司からの新しい仕事の要求を受け戸惑う
6 関連医師からの研究依頼
7 各種委員会や会議などへの参加
いかがでしょうか?
3に関しては、仕事上の直接的な悩みではないかもしれませんが、経験年数が経つと、なんとなく他人の芝が青く見えるのか、知り合いに聞いたのか、誰しも一度は考える、不安に思う、リアルにショックを感じることかもしれません。
ハッキリと申し上げますが、
転職しても、その先で更に同じように思うものです。
人間はどこにいっても高みを目指そうとするので、この欲求は留まることを知りません。
冷静に判断して転職したいものです。
話が逸れました 笑
先輩職員でも、やはり新しい仕事の依頼があったり、そのような場面で上長からの指導が得られないときは非常に不安に感じ、場合によってはリアルなショックに陥る可能性がありそうですね。
そんな事も職場長は意識したいものです。
特にこの時期は、新人のみならず職員全体の心が揺れ動く時期です。
職員一人一人のリアルな現実に目を背けてはいけません。
かく言う私も、経験年数がだいぶ経ってから、全く新しい仕事の依頼を受けたとき、本当にリアルにショックを感じました。そこからさらなる高みを目指すことができましたが、その当時は心が少し病みました 笑。
3 じっくり話して
先の論文で、リアリティショックの要因には以下のようなことがあると示されています。
①求められる能力のハードルが高すぎ、何もできない自己に対するショック
②職場における先輩との人間関係
①においては想定の範囲内ですよね。
どの職種でも起こりうると思います。
しかし、②においてはいかがでしょうか?
我々の職業柄の現場では、実習中にある程度の人間関係を自然に学びますが、
社会に出ると、この人間関係性を構築する場面が明らかに増えると思います。
職場内の全員の先輩、医師・看護師・その他の医療従事者、そして学生の頃はあまり話すことのない事務職員など。
組織内の全職員と良好な関係性を自ら築かなければなりません。
これは大きなストレスですし、リアルなショックです。
①に関しては、先輩も介入しやすく、指導もスムーズになりやすいです。
しかし
②に関しては、先輩職員と言えども、全職員との関係性構築ができていない場合、その不安は後輩達にも伝わってしまいます。
新人を指導する先輩諸君は、新人さんを他部署に紹介できる先輩でしょうか?
普段からの立ち振る舞いの積み重ねが非常に大切だと言うことがわかりますよね。
職場の責任者は、普段何気なく面接をしたり、改まって話をせずとも、上手にコミュニケーションは取られているかと思います。
しかし、時にはじっくりと腰を据えて、安心した空気感の中で雑談も交えながら、じっくりと後輩職員の話を「聴いて」あげて欲しいと思います。
職場長ならびに先輩職員は、話を「聴く」のではなく「聞く」になってしまいます。
そう、心で聴いてないんです。
一番最悪なのは、聴いてるふりして、いつのまにか説教してることです。
ついありがちですよね。
これには本当に注意が必要です。
職場長はどうしても話が長くなりがちです。本当により注意して欲しいです 笑。
後輩達の話を心で聴き、すぐに答えを導き出そうとせず、共に悩み共に苦しんであげて欲しいと思います。
僕らは理学療法士です。
身体ケアの専門家。
評価と治療の専門家です。
しかし、時として心の中を分析する必要があります。
これができないと言う管理者・先輩職員は、きっとリアリティショックに陥っているかもしれません 笑。
そんな時は、まず「じっくり話して」欲しいと思います。
正確には、じっくり話を「聴く」と言うことですよね。
2019.4.10読売新聞の論点に「転職時代に必要な対話力」
この記事によると以下のように示されています。
「コミュニケーションには、自動化と異化があり、これからの時代、異化の対話力は非常に重要になってくる」
この「異化」というのは、
自分の専門分野の人や、世代、性別、国を超えて対話できるようになること
であると示されています。
また、うぬぼれでない正しい自尊心を持つ事も大切と示され、これはまさにアドラー心理学の劣等感の解釈と一致しています。
これからの日本の労働者においては、転職を経験する人材が増えると予想されているようです。
「自尊心が高く、他者を尊重できる人材が、実社会が求めるリーダー像であり、グローバル人材である」
そして、企業や組織は、このような人材を育成し、流出を防ぐ手立てが求められるとのこと。
新人のリアリティショック
先輩のリアリティショック
そして最後に
管理職のリアリティショック
それぞれの立場の皆さん
あなたならどのように今の時代を切り開いていきますか?
実社会が求めるリーダーを常に意識したいものです。
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