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おじょーと本

おじょーは本を良く読む。
本に囲まれている生活をしており、
日常会話でも本の話はよくする。
夕木くんも本は好きなので、会話は楽しい。

夕木くんはおじょーに二冊の本を贈った。
一冊目は伊藤紺さんの三作目の歌集『気がする朝』
これは私のとびっきり大切な本で、発売日前日にイベントへ参加して、フライングゲットしたものだ。
記名入りのサインをいただき、日付、それと私に合う短歌を一首そえてある。装丁も素晴らしく、脇田あすかさんによるもので、ライトイエローの美しい色合いが目立つ。
2023年はわたしにとって、 もっとも短歌と向き合う年になりました。 歌のひとつひとつに今までなかった発光を感じ、 これが、自分の光なんだと気付きました。
上記の言葉は伊藤紺さん本人による言葉だ。
そしてこの本を書けたことを一生誇りに思う。わたしの最高傑作です。としている。
さらに、後日に他イベントへ参加し、栞をいただいた。
栞には伊藤紺さん画伯に猫を描いてもらった。紺さんらしい猫の絵だ。
こちらも日付が入っていて、雨の匂いがついている。雨の匂いとは、雨をイメージしたらしい香水が降りかかっているからだ。
その栞を手にした後、雨を見ると伊藤紺さんが浮かぶようになった。
雨が好きな物の一つになった。
私はあまり物に執着しない方だが、当然失いたく無い大切なものある。
伊藤紺さんの本がそれにあたる。
当時、大事な物はありますか?と質問されていたら、間違いなくこの本を選択していたと思う。私の数少ない大切な本だ。
今は栞とともにおじょーの本棚にある。

二冊目は岸田奈美さんのエッセイ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』
この作品は以前NHK BSでドラマ化をしていたものが、地上波でも放送となっており、最終話に近かったが、おじょーに紹介し見てもらった由来によっている。
こちらもサインが入ったもので、大切にしていた一冊だ。

おじょーに二冊の本を贈ったのは、本よりもおじょーが大切だ、と感じたからだ。何か私にとって大切なものをおじょーに贈りたかった。おじょーに持っていて欲しいと思ったからだ。

実は二冊とも私は読んでいない。ページすら綴っていない。読むための本ならサイン本でなくていい。別に購入して読んでいたであろう。
私は、その大切な本を手にした時、これはその後に出会う大切な人に渡す予感がしていた。人の手に渡るであろうと感じていた。
紺さんは怒るかもしれないが、本は出会いだ。私にとって必要な本であれば、また巡り会えるであろう。そんな気がしている。
私にとっては大切な人に大切なものを贈る。私の最高の出会いに、最高の出会いをした本を読んでもらうことが、私にとっての本を大切にするということだった。
本の内容はおじょーが何かを感じてくれればいい。
そしていつか感想を聞きたいと思う。
私の願いはそれだけだ。

いや、読まなくともいいだろう。
本は必要になれば、本からやってくる。
本は輝きを失わない。
伊藤紺さんの歌は、夕木くんの気持ちをのせ、いつかおじょーの手元で花を咲かせると思う。
ただただ、その時が楽しみだ。








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