前澤友作氏の新規サービスは世の中からお金を無くすのか。それとも既存のシステムに負ける?
884文字
前澤友作氏が発表した「カブアンド」というサービスは、誰もが事業に投資し、利用に応じて還元を受けられる仕組みを目指している。
この構想は一見革新的に見えるが、実際には同様の理念を持つ仕組みが既に存在している。それが生活協同組合(生協)である。
生協は、消費者と出資者が一体となる仕組みを100年以上にわたって提供してきた。ここでは、出資金に基づくプロラタ配当のほかに、利用額に応じた還元金(利用分量割戻金)が存在している。
このモデルは地域社会での相互扶助を基盤にしており、出資者が自らの利益を直接的に享受できる点で「カブアンド」のコンセプトと似ている。
また、生協は単に還元の仕組みだけでなく、地域に根ざしたサービスや社会的課題の解決にも寄与している。こうした包括的なシステムを考慮すれば、わざわざ新しいサービスを生み出すよりも、既存の生協を活性化し、利用を促進する方が効率的であると言えるだろう。
さらに、経済的な困窮に直面する人々が社会保障を活用することについても考える必要がある。例えば、精神的な不調を理由に障害者手帳を取得し、障害年金を受け取ることや、生活保護を申請することは、個人にとって重要な生活の安定手段である。
こうした制度は、社会的弱者を支えるために設計されているが、その利用にはまだ心理的・社会的な壁が存在している。これらの制度を正当に利用することは、社会全体のセーフティネットの有効性を高める意味でも重要である。
「カブアンド」のような新たな仕組みを模索することは、社会の多様なニーズに応えるために必要かもしれない。しかし、既存のシステムで達成可能な目標に対して、資源を分散させることには注意が必要である。
生協のような成熟したモデルを再評価し、さらなる活用を推進することは、社会全体の効率性や持続可能性に寄与するだろう。
また、社会保障制度を正当に活用し、すべての人が安心して生活できる環境を整えることも、同時に考えるべき課題である。結局のところ、新しいアイデアを歓迎する一方で、既存の仕組みを最大限に活用する視点を忘れてはならないのではないだろうか。