#44『前世療法』ブライアン・ワイス
この本が出たのはアメリカで1988年、日本で96年。前世ブームの火付け役になった。90年代と言えばオウム真理教を思い出すが、世界は精神世界に一気に突入していた。
この本の情報量は非常に豊富だ。今では割と当たり前になっているスピリチュアルな考え方がこの本を原点にしていたのだということがよく分かる。色々なことを教えてくれる。霊的存在たちは、人間に魂のことをもう一度思い出させるために、そして科学の力を借りて更に理解を深めるためにこの「イベント」を起こした、と私は理解している。20世紀初頭の心霊主義全盛のように。
結論から言うと、これは精神世界の流行の基礎を作るのに大きな貢献をした。しかしその内容は人間には無用の情報を多く含んでいる、ということになるだろう。無用、と言っても、誤りだったとか嘘だったという意味ではない。
内容は、真実なのだ。しかしそれを知った時、人間の関心はどこに向かうか?「私の前世、何かしら?」これなのである。
そんなことを知っても何にもならない。大事なのは今を生きることであり、今目の前にいる人を尊ぶことだ。しかし霊的な情報はしばしば人を単に好奇心の塊にする。私も仕事柄、よく聞かれたものだった。オーラの色が見えるんですかとか、私の肩に天使って止まっているんですか、とかそういうこと。知ってどうするんだ、そんなことって思う。知っても良いよ、でもそういうことを知りたがる人は、だいたい心がお留守になっている。頭ばかり働いている。
この本の作成に関わった霊的グループは、まずまず成果を上げたことに満足していると思う。でも同時に「やっぱりここに引っかかるよな」と思っただろうし、もしかしたら「ええっ!?」とのけぞったかもしれない。だとしたら人類を代表してごめんなさい。
前世療法によって、今や私たちが得るものはないだろう。前世がある、私たちは転生している、という理解の枠組みを得たこと自体に、比類なき価値があったのだ。しかしそれがまともな知性の体系として結実するのは一体何十年後何百年後のことであろうか・・・と思うと、ちょっと暗澹たる気持ちになる。
しかし、重要な情報は沢山あったので、抜き書きしておく。
これは最近私も突き止めたことだが、私の家族もそんな感じて転生していた。しかし、うちの場合はちょっと込み入っているが。
なぜ、何のために転生するのか?
そのための研磨剤が、家族という訳。そりゃ、面倒な人しか家族にいない訳だ。だいたい、自分よりレベルが低いのも仕方がない。
私はこの辺り、すでに充分受け入れている。それは諦めではなく、見下しでもなく。魂のスケールで物事を感じられるようになると、しぜんと優しくなる。著者(精神科医)が、学びを深めると共に人間性を豊かにしていく辺り、とても共感するものがあった。
魂のスケールで物事を捉えるようになると、知恵のレベルも増していく。次の件も、我が身に当て嵌めてよく分かること。
自画自賛になるけれど、ヒーリングとカウンセリングの時の自分の匙加減は絶妙だと思う。でも自画自賛というのは言い間違い。それをちゃんと教えてくれる声がある。だから著者が持つに至ったこの確信、よく分かる。これは今生だけを生きている意識には持ち得ない能力と確信なのだ。
あと二つ。
一つは臨死の風景。
早く死んでみたいね。
死ぬと「中空」に至る。そして次にまた生まれる。その間の時間は、最高らしい。やっぱりそうなんだ、と確認する。それにしても、なぜ私はそういうこと、知っているのかなあ。
もう一つあった。被験者は退行催眠によって前世に行くのだけれど、前世で死ぬと中空に至る。中空でだけ、「マスター」の声をチャネリングすることが出来る。マスターのメッセージは明確で力強い。
以下は彼らの教え。
何から何まで、ぴたりと嵌って腑に落ちることばかりだった。
この本はこしき選書には入れない。重要な本であるのに間違いはないが、前世でいついつどこで何をしていた何ていう名前の人、という情報は、私がお客様一堂に持っていただきたい関心事ではないから。
これに関連する内容でこしき選書にいれているのは、『生きがいの創造』です。その中にこの『前世療法』も引用紹介されている。