見出し画像

年末にショートショート講座を受講してきました。講座中に作った作品もあります


はじめに

こんにちは。吉村うにうにです。普段、長編小説やエッセイ、たまに詩を書いております。記事はこんな感じで書いております。

田丸雅智先生のショートショート講座に参加してまいりました

12月21日に、恵比寿で開かれた読売カルチャーセンターで開かれた田丸先生のショートショート講座を受講しました。時間内に、ショートショート(短くて不思議なお話)を作ろうというものです。前回、恵比寿で受講した時の記事はこちら

田丸先生の教えの芯にあるのは「創作を(誤字脱字や文章をうまくかけなかったらどうしようなどと)難しく考えず、楽しむこと」ということのようです。
この日も「楽しむこと」を強調されていました。楽しむことでモチベーションを維持する、これって締め切りに追われて執筆していると忘れがちなので、やはり先生の講座を受けてこの思いを取り戻すのは大切だと思いました。

授業の流れとしては、
①先生の自己紹介やショートショートの説明
②不思議な言葉を作ってみる(表紙画像は、この段階で使用した教材)
③書いて(何人かの生徒さんが)発表する。
という流れでした。先生はテーブルを回ってアドバイスを下さいます。

時間がない中、頑張ってショートショートを作ってみました。

講座全体は90分ですが、アイデアを出して作品を作るまでに我々が使える時間は30分程度でしょうか。いつも先生の講座は時間がなくて焦ります。しかし、この時間のなさが講座のポイントだと思っています。和やかな雰囲気で始まりますが、執筆が始まると、時間がないプレッシャーに追い込まれて物凄く集中します。「楽しんで書いて」と先生に言われていても、やっぱり時間内に形にしたいという気持ちがあり、必死で書いてしまいます。あとで活動量計を見ると、心拍数が上がっていました。椅子にずっと座っていたのに。
しかし、それがいいのかもしれません。普段、アイデアをダラダラと考えて何か月も新作のアイデアが出ないこともあります。だから時には、こういった自分を追い込む時間がいい刺激になります。
実際、追い込まれると、何とかしようと思い、普段は絶対に書けないような作品が出来上がることがあります。この日も、下書きだけですがショートショートを一篇書き上げることができました。
裏を返すと、いかに普段は自分を追い込んでいないかに気づかされます。もっと追い込めればいいのですが、やはり先生がいらっしゃって、他の受講生の皆さんの目を気にしながら書くという環境でないと簡単には自分を追い込めないのかもしれません。

講座中に下書きを作って、家で内容と整えた作品がこちら

          墜落速度
                    吉村うにうに
 夜十時になった。明日の物理の試験、何も勉強をしていない。焦りが募り、机に向かったが、問題集を広げて二三分もすると、ついスマホを見たり、お菓子を食べたりしてしまい、まったく進んでいない。
 まずい! この試験を落とすと、留年になってします。それなのに、もう十一時。それならば、どうにでもなれと思い、賭けに出ることにした。鞄から取り出したのは、同級生の豊からもらった禁断のドリンク。その名も「ハイパースタディーエナジー」。真っ赤な毒々しい色の缶の裏には注意書きがびっしりと書いてある。
 彼は、これをくれる時言っていた。
「これを飲んだら、眠気が無くなる事、覚醒剤の如しだぜ」
「ヤバくない?」
「眠気だけ飛ばすドリンクだよ。合法だよ。薬局でも売ってる。ただし、勉強し続けずにサボると、ブラックアウトという副作用があるんだ」
「ブ、ブラック……?」
「深く眠っちまって、起きられないってことだよ」
 
 僕は、少量ずつ飲んで下さいという注意書きに従って、一口飲んでみた。すると、ぼんやりとして霧が立ち込めていたような僕の頭は、シャキッと八時間寝た後のように爽快になり、体からエネルギーが満ち溢れているような気分になった。
 
 F=mαで……、運動方程式を立てて……、摩擦係数がμだから……、垂直抗力Nは……」
 
 絶対にサボってはいけないというプレッシャーの元、僕は片端からノートに式を書きつけた。注意書きによると、物理なら五分で一問のペースで説かないといけないらしい。数ページ進んだところで、母ちゃんが部屋をノックして入ってきた。
「夜食よ」
「そこ置いといて!」
 僕は撥ねつけるように言った。母ちゃんは怒っておやつを持ち去ってしまったようだが、今意識を失うわけにはいかない。
 しばらくすると、豊から電話が来た。出たくなかったが、ドリンクをもらった手前、無視するわけにもいくまい。問題を解きながら適当に話をして切ろう、そう思った。
「x=V₀t+1/2gt²……、もしもし!」
「お前、必至だなあ。もしかしてあのドリンク飲んだのか?」
「ああ、だから用がないなら悪いけど切るぞ」
 すると、あいつは余裕があるような調子で言った。
「馬鹿だなあ。もし、ブラックアウトしたら、姉ちゃんか誰かに無理やりあれを飲ませて
もらえばいいんだよ、シリンジでも使ってさ。そうしたら、何度でも復活できるぜ」
「でも、それって……」
電話は切れた。きっと、意識をなくしたのだろう。僕は、問題を解きながらだったので助かったようだ。
 
 翌朝、徹夜をした僕は、ノートとペンを持って登校していた。試験まで、意識を失ってはならない。一晩でボロボロになった問題集を見ながら、まだ運動方程式を書きつけていた。
豊は、この日、とうとう学校に来なかった。きっと注意書きの下の方を見ていなかったのだろう。
 
 飲み過ぎると、意識消失時間が延長されますのでご注意ください。
              (了)

執筆を終えて

講座が始まる前、毎回「書けなかったらどうしよう」などと、不安に駆られるうにうにですが、質はともかく、書けてしまいました。先生が授業中に「皆さん必ず書けますから」とおっしゃった通りです。本当になんとかなるから不思議です。

アイデアは、小説で使う潜水艦の資料のために買った本で、航空母艦のページを開いたときに、強調されていた墜落速度の考え方です。飛行機は墜落速度を下回ると落ちます。航空母艦では、発進時に短時間で航空機を墜落速度以上の速度に上げる必要があり、着艦時には墜落速度以上を保った状態で270メートルまでの短い飛行甲板に着陸しなければなりません(着艦時の速度は231キロ/時が求められるらしい)。まさに、速度との戦いです。そこから、人間の頭において、墜落とは何を意味するのかと考えました。

作品を、田丸先生と受講生の皆さんの前で発表し、先生からお褒めの言葉を頂きました。ほめていただいた内容は以下の通りです。

①悪い飲み物ではないというエクスキューズ(説明、言い訳)が効いている(安心感がある)。
②主人公が真面目で、試験が成功する予感がする。
③シュールだけれども良い話にまとまっている。

褒めて頂き、照れてしまいました。嬉しかったです。

自分の知識を頭から引っ張り出し、新しい組み合わせを作ってみましょう、というのが講座での考え方

ショートショートに限らず、アイデアは知識の網から引っ張って組み合わせることが大切なのだと、つくづく思います。そこで、田丸先生が以前おっしゃっていた「経験を積むことは大切」というのは、アイデアを作り上げる基になる知識を身につけましょう、という事なのでしょう。知識は、今回の私のアイデアのように書籍からでもいいのですが、様々な場所に出かけ、いろいろな人の話を聞くという生きた経験が、アイデアを連想しやすくなるのだと思います。

さいごに

アイデアを振り絞って考え執筆したので、疲れましたが、充実した実感でした。普段、散歩をしながらのんびりと小説のアイデアを練っていますが、時にはこんな短時間で集中力を爆発させるのも良いものです。更に講座では、他の受講者さんの発表を聞けるいい機会でもあります。他の人の頭の中を覗かせてもらいました。自分の思考回路が固いなと、見直すいい機会にもなります。先生と、受講者さんに感謝です。
いつか、noteのフォロワーさんと一緒に受講してみたいなとも思います。コミュ障なので、なかなか誘ったりできないですが……。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

 

 

いいなと思ったら応援しよう!