【開催レポート】大阪が舞台の小説を語る読書会 第2回 角田光代『曾根崎心中』 2023年5月7日(日)
大阪が舞台となっている小説の感想を、大阪に店舗を構える水野ゼミの本屋で語り合う読書会。
第2回の課題本は、角田光代『曾根崎心中』(2011年、リトルモア)でした。
「曾根崎心中」の舞台となった露 天神社、通称お初天神は、水野ゼミの本屋から徒歩10分強。冒頭の観音廻りに登場する長福寺(現・蟠龍寺)は、水野ゼミの本屋の真向かい。まさに、お初が徳兵衛と添い遂げられることを願って巡った舞台での読書会でした。
また今年は、原作者・近松門左衛門の三百回忌。
さらに「曽根崎心中」の竹本座初演初日は5月7日。偶然にも読書会当日も5月7日。旧暦と新暦との違いはありますが、奇縁を感じました。
参加者は4名と少な目でしたが、かなり盛り上がりました。
心中は人を饒舌にするのでしょうか。
近松門左衛門の原作、文楽・歌舞伎も含めて、本作で「曾根崎心中」の世界に初めて触れた、という方が多かったです。
あまりに有名な古典ゆえに、接する機会を逃している作品もありますね。読書会はそのような作品に触れる機会としても最適です。
以下では当日、話題となったトピックをご紹介します。
写真の下からはネタバレがありますのでご注意ください。
「初」ということばが頻発しますが、「初めて」という意味ではなく、ヒロインの天満屋お初のことです。
・ 初の視点で描かれた物語。初には十分な情報が与えられていないので、妄想が膨らみ、死に向かってアクセルを踏んだ、という印象。
・ 遊女たちの日常が意外に明るく描かれている。ゴシップで盛り上がるさまは、女子校のよう。
・ その明るさが死の重みを強調してもいる。
・ 心中は二人の自己完結。身請け、貸金の問題は何も解決していない。
・ 十分な教育を受けていない遊女にとっては、周囲のお姐さん方が先生代わりの様子。
・ 優しく接してくれた姐さん・島の死を初は理解したかったのでは?
・ 間夫に献身的な遊女たちには、ホストに貢ぐためにパパ活をするトー横・グリ下の女の子たちの姿が重なる。
・ 初にロック魂を感じる。
・ 先輩遊女二人の生き方に、異なる2つの死生観が提示されている。身請けされた現世をじっと耐えて、来世で間夫と添えるように願う者。他方で、来世はない、今の命は一度きり、と間夫との恋に身を滅ぼす者。
・ 心中はコスパの良い恋愛成就の方法だったのかも。
・ 曾根崎心中上演後の心中ブームは、自殺報道後に後追い自殺が頻発する状況と似ている。
・ 徳兵衛は、継母に虐待された。初に母親的な愛情を求めたのでは?
・ 天神の森へ逃げ走るテンポに合わせて、短文が多くなるのは効果的。
参加者は、若い女性二人とおじさん二人。意見が二極化するのかと思いきや、そうでもなく、多彩な視点でトピックが提示されました。
話は尽きず、予定時間を大幅に越えた、楽しい読書会でした。
大阪が舞台となった小説はまだたくさんあります。今後もこの読書会を継続したいと思います。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
過去の開催レポートはこちら。
文責:水野五郎
以上