食のまちストーリーズ vol.08「日常で、魚介類の最高な味を楽しめるまち」
日常で、魚介類の最高な味を楽しめるまち
僕は日置市の伊集院町出身ですが、いちき串木野市は昔から馴染みがあるまちです。高校の同級生がいますし、ボウリングやカラオケで遊びに行くことも多かったので、青春時代の記憶の多くを占めています。まちを散策していると、串木野漁港の堤防から見える東シナ海を友人たちと眺めたものです。帰りにわずかなお小遣いを握りしめ、まぐろラーメンや“つけ揚げ”を食べて電車で帰るのが日課でした。
久々にゆっくり串木野漁港周辺の景色を眺めると、そんな楽しい記憶が蘇ってきました。魚をいろんなカタチで気軽に味わえ、まちを歩いているとほんのり香る潮の匂いを感じられるからか、この土地の魅力の一つとして水産業があるのだと肌で感じているのは地元以外の人でも多いと思います。
いちき串木野市=マグロ、の印象が強いと思いますが、それだけではありません。甑島(こしきしま)近海を漁場として、イワシ・アジ・サバ・タイなどが水揚げされているのです。鮮度が高い旬の魚を捌いてもらい、刺身にして食べるのもよし。すり身にして、揚げたての“つけ揚げ”を食べるのもよし。昼前や夕方になると、主婦(夫)や仕事帰りの人たちが、それらを買い求めてお店にやってくる光景が日常です。
ある地元人は誇らしげにこのように口にしていました。「新鮮な美味しい魚を食べるのが日常だし、いちき串木野市の魚が一番美味しいと思っている!」と。他の近隣エリアに比べ、自宅から徒歩圏内だったり、車で数分以内の距離で、そのようなお店が身近な存在としてあるのはいちき串木野市だからこそではないでしょうか。
市来えびす市場・市場長の川野さんはこのように話します。「数ある魚から目利きして選び、ベストな状態で管理し、美味しい魚をお客様へ提供できるように心がけています」と。そんな想いを常に持ち続ける仲買人の存在は大きいです。
どんなに鮮度が良くても、提供するタイミングを誤ってしまえば、お客様は満足しません。お客様を想う仲買人の気持ちが昔から根づいていたからこそ、常に旬な魚を食べられるんだろうなと感じています。それが地元を誇り、愛する気持ちが生み、さらにいちき串木野市の水産業を支える人たちのモチベーションに繋がっている気がしました。
以下では、数あるいちき串木野で新鮮の旬な魚介類を提供しているお店を紹介したいと思います。
まちの文化を象徴する、漁業協同組合直営のお店
<さつま海道 市来えびす市場>
東シナ海に面し、漁業協同組合が直営する「さつま海道 市来えびす市場」。水揚げされたばかりの新鮮な魚を購入でき、食事も楽しめます。奥には伊勢海老の生け簀もあり、旬の時期には活きのいい伊勢海老がいっぱいになるのだとか。いちき串木野市で水揚げされる魚の一つといえばタイ。30年程前、東京の築地でいちき串木野のタイが日本一と称され、それがきっかけでお店のカラーをタイに合わせたピンクにしたそうです。遠くからでも一目で「あそこが、えびす市場だ!」だとわかるほど。
お店がある市来エリアには「恵比寿」ゆかりの場所や言い伝えもあり、それが店名の由来になっており、まちの文化を大切にしている姿勢も伝わってきます。今年の春でオープンして18年を迎え、周年祭が開催されます。月日貝や旬な野菜など、地域内外問わず、誰でも楽しめる内容になっているので、いちき串木野市の文化に触れたことがない人は、まずここからスタートしてみてはいかがでしょうか。
地域内外問わず60年間愛される、こだわりの味
<有限会社 赤崎水産>
串木野郵便局近くの国道3号線から住宅街へ入ってすぐ、昔ながらの鮮魚店が見えてきます。創業約60年の「有限会社 赤崎水産」。東シナ海近海や鹿児島市中央卸売市場で水揚げされた魚を中心に取り扱っています。お店としてのこだわりは鮮度。お客さんから注文がきてから魚を捌き、提供しています。その味の評判はいちき串木野市外にも届くほど。鹿児島市や薩摩川内市からわざわざ買い付けにくる業者もいるそうです。
他にも、このお店の名物とはいえば“つけ揚げ”。お店に並ぶ時間帯をめがけて足を運ぶ地域のファンも多いのだとか。添加物が入っておらず、魚のすり身と豆腐が合わさったフワフワしていた感触を味わうだけで、長年愛されている理由がわかります。「今晩のご飯のおかずは、ここで決まりだ!」と思ったのは僕だけじゃないはず。
text & photo : Yasutoshi Kami
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