おのあす

主に短歌の習作を載せていく。日本中世文学勉強中。

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マガジン

  • 八朔書房

    • 61本

    自分の趣味、専門分野、ついさっき考えたことなど、 八朔会の皆さんが寄稿してくださった記事を雑誌のようにまとめています。

最近の記事

祖母の家 / あしたの短歌

実家出でし年が使用期限なりし 湿布のべたつく分 父老いぬ 祖母ひとり住みたりし家 壁掛けの絵に静かなる異国の泉 床の間の日本刀より チョロQの火を噴くゴジラの怖かったこと ニコ動をともに見し部屋 叔父がのむ臭き煙草の跡形もなく 「レ」が鳴らぬオルガン 日焼けしたパズル 母が育った砂壁の部屋

    • 不完全さを愛でながら / あしたの短歌

      次のひとが入居するまで 残像に心の部屋を間借りさせてる 鼻先がすこし冷たい朝七時 カップの湯気がいちばんきれい 急に自分を大事にできてないような気がして しずくだらけの鏡 写真とはだいぶ異なるマスコット この世の不完全さが愛しい

      • 王朝のパロディー / あしたの短歌

        見渡せば人っ子一人いない午後 裏の戸口にでかいひまわり あの人のマスクの下の頬ゆかし 透明フィルムの御簾をくぐって 知らぬ間につぶれてた蜘蛛 なんとなくあの子はここへ来ない気がする

        • 公私混同 / あしたの短歌

          呼び慣れた名前変換予測から消えて 居座る「承知しました。」 使わないことばを装填しつづけて 肺の奥底ひそむ不発弾 六畳は己のためにありながら なぜ入り来る面接官よ

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        • 八朔書房
          61本

        記事

          春と夏のあいだ / あしたの短歌

          明日にもあくたになろう花びらが 風のかたちを我に教える 昨晩の雨に散りにし桜花 儚しといふは人間のエゴ 鈍く光るシンクを前に 生熟れのトマトを食めば 遠き雷鳴

          春と夏のあいだ / あしたの短歌

          夜 / あしたの短歌

          あ、と発す間もなく一面散らばった星は不可逆 かつてはグラス 使用時を久しく見ない電話ボックスの中には ストロングゼロ 洗濯機の中でまろがれ合う FILAとChampionとの密やかな恋

          夜 / あしたの短歌

          ここが死に場所 / あしたの短歌

          もう開かれることのないLINEアルバムは 笑顔のままの二人の墓場 あの人もわたしも一回死にました これは来世のほうの産声 オレンジとピンクの菜箸ちぐはぐに 使って食べてもいい世界線

          ここが死に場所 / あしたの短歌

          ひとり、たべる、いきる / あしたの短歌

          「行かないで」声もむなしく落ちてゆく 納豆食べた箸の片方 えぶぢゅん と 変なくしゃみが躍り出て 一人の部屋で へへへ と笑う 何するも自由 深夜にティーパーティー 朝っぱらからサムゲタン鍋

          ひとり、たべる、いきる / あしたの短歌

          昨日一緒に買ったパン / あしたの短歌

          テーブルに昨日一緒に買ったパン ひとり続編の朝を始める 昨晩の眩き情熱いさいずこ ケミカルライトはくずかごの中 恍惚の眼を前に我でない声を出しおる我は何者

          昨日一緒に買ったパン / あしたの短歌

          静かなる夏 / あしたの短歌

          コロナ禍と人は呼ぶけど この中で二人居らば良し幽かな居城 オンライン帰省してねと母が言う 遅めのタイピングで母が言う 大口を開けて笑いしかの人を送る 鮮やかすぎる夏空

          静かなる夏 / あしたの短歌

          春 / あしたの短歌

          切りたての髪をしきりに気にする手 私にだけとうぬぼれたい春 ご無沙汰な人からふいにきた “いいね” 盛りを過ぎた花に春風 午後5時を暖かに纏う電線を 確かな標に家路をたどる

          春 / あしたの短歌