見出し画像

ボールがぽんと当たる感覚

右脚を負傷した。

詳細には、右のふくらはぎに肉離れが発生し、松葉杖生活を余儀なくされた。
今まさに、自分の足で歩けないことの不便さを思い知っている最中である。

スポーツを経験したことのある人ならば想像つくかも知れないが、運動において怪我をするリスクは誰にだってある。
よくある肉離れは「ピキッ」といくらしいが、僕の場合は「ぽんっ」だった。

今日はその話をしようと思う。


10月下旬のこと。
両親が運動不足対策に、市民体育館の開放へ参加していると知り、時々お供させてもらうことにした。

僕の両親は学生の頃からバレーボールをずっと続けており、体育館の開放でもバレーボールの日があるのだ。
僕自身も、両親の影響を受けて過去に何度かママさんバレーの練習に混ざって運動したことがある。コーチは父で、なかなかに楽しかったのを覚えている。

体育館開放には9月に一度参加して、久しぶりに参加したボールをつなげるスポーツはなかなかに楽しかった。なのでその日も、軽い運動のつもりで参加しようと体育館に足を運んだ。

ストレッチと準備運動、ウォームアップを済ませ、人数の関係で、9人制のポジションを取ったシート練習に入った。

上手い人が多いわけではないので、あらぬ方向にボールが飛んでいくことは多々ある。
それでも、レシーブで繋げるのが楽しいバレーボールだ。僕は素人なりに懸命にボールを追った。

前に飛び込まなければならないボールの軌道。僕はそれを繋げるべく前へ踏み出した。
その時だ。

ぽんっ

右のふくらはぎに、何かボールのようなものが当たった感覚がした。
何だろう?と思って振り返っても、ボールなんてどこにもなかった。

「これはヤバいかも」
足に起こった違和感に、僕は慌ててコートを抜けた。

案の定、右足に痛みが走って普通に歩けない。
捻ったわけでもなく強打したわけでもなく、ぽんっとした感覚だけでこうなったのが怖かった。


結局、すぐに病院に行って、肉離れとアキレス腱の部分損傷の診断を受けた。



後から母に聞いた話だが、アキレス腱が切れて手術したことのある人の話によると、アキレス腱が切れた瞬間に、ボールのようなものが当たった感覚があったという。

つまり僕の感じた「ぽんっ」もまた、アキレス腱に傷が走った瞬間だったのだ。

本当に痛みもなく「何か当たった?」と首を傾げるだけの軽い感覚なのだ。それでいて、酷い時には入院・手術を余儀なくされることになることもある。
痛むよりもずっと怖いなと思った。

幸い、僕の怪我は軽かったらしく、手術するほどではないらしい。
それでも、ふくらはぎの肉離れを含めて、全治3〜4週間かかると告げられた。

右足に体重をかけられるようになるまでは、松葉杖も取れない。

階段の上り下りも片足では一苦労だし、転ばないか不安になる。

右足を庇うあまり、左足の筋肉と松葉杖を動かす両腕に疲労がたまり、筋肉痛に苦しむ。


自然の中を歩く楽しみな予定もキャンセルするしかなく、飲食店で立ち仕事をしている僕は仕事も長期で休むしかなかった。

各方面に謝罪と休養の旨を連絡した後、僕はこれまでにないほど落ち込んだ。
自分で思っているよりもずっとショックだったらしい。この落ち込みはしばらく引きずった。

怪我したものは仕方ないと頭ではわかりつつ、全く気持ちの切り替えができない。

僕はこれから足が治るまでの間、どうすればいいのかわからなかった。




正直、今でも完全には立ち直っていないと思う。

休みの間にすることを決めても、モチベーションは続かないし、何も手につかない時間のほうが長い。

仕事ができない分だけ、お金の不安もある。にも関わらず浪費しようとする自分が嫌になる。

寂しさを拗らせて、SNSにやたらと言葉を投げるし、会いたい人のことを思い浮かべては占い動画を見て、些細な慰めを感じながら虚無の時間を消化している。

自分は一体何をしているんだろう。
人生でもう何度も何度も考えた問いが投げられる。



せっかくの長期休みなのだから、僕のやりたいことをやろう。

そう思いながら、僕は落ち込んだ心をどうにか浮き上がらせる術を今も探っている。

いいなと思ったら応援しよう!