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学生起業から世界No.1のプライバシーテックカンパニーへの挑戦 :OICXnights#9 開催レポート

こんにちは!こちらはOICXイベント企画チームの西田です。
9月20日に開催された第9回では、株式会社Acompany代表取締役の高橋さんとCEO室の水元さんによるポッドキャスト「アカン経営トピック」の公開収録を行いました。今回はそのイベントレポートをお届けします!

【OICXnightsとは?
大学発学生ベンチャーで100億の時価総額を生み出した伝説のスタートアップ拠点OICXとそのOB達は、次なるステージ「東海発グローバルベンチャー」へ挑戦を続けています。これを応援するために、世界を舞台に活躍する著名な起業家・投資家・経営者・科学者をお招きして、OICXメンバーと交流を行う、OICXnights を開催しています。


Acompany 登壇者・会社紹介

株式会社Acompany 代表取締役CEO 高橋 亮祐
2018年6月名古屋大学在籍中にAcompanyを創業し、現在6年目。
セキュアマルチパーティ計算による秘密計算の実用化に注力したところから、プライバシーテック事業を拡大中。Forbes 30 Under 30 JAPAN 2021(世界を変える30歳未満の30人)を受賞。翌22年にはForbes 30 Under 30 Asia(アジアを代表する30歳未満の30人)へも選出。最近はPodcast(アカン経営トピック)やX、noteでの発信を強化中!趣味はポケモンで、最高は世界14位。

株式会社Acompany CEO室 水元 陸大
2020年2月名古屋大学教育学部の在学中に株式会社Froomを学生起業し、約4年経営。元教員志望という思いから、人と組織の学習に関する事業を作りたいと思い、企業における学習管理システムの開発・提供と、学習コンテンツ制作支援を行ってきた。2024年7月より、スタートアップを体験したいと思いAcompanyにジョイン、現在はCEO直下でファイナンス・採用イベント支援やpodcast発信を行なっている。ポケモンよりもドラクエ派、特に5と8が好き。

高橋:Acompanyは2018年に創業しまして、学生で起業してから6年ほどになります。事業領域は、僕自身がエンジニアだったということもあり、もともとウェブサービスなどをやっていましたが、もう少し技術寄りで事業を作っていきたいと思い、2018年からブロックチェーン、2020年から秘密計算、さらに幅を広げて今はプライバシーテックと事業を展開してきました。
会社の所在地は、OICXが最初の本社登記の場所になっていました。今は人数が増えて場所も変わり、正社員50名超くらいの規模の会社です。

特徴的なのが、実は名古屋大学から認定いただいた大学発ベンチャーなのですが、名古屋大学だけでなく名古屋工業大学からも認定をいただいております。これは、創業メンバーの僕が名古屋大学出身、もう一人の共同創業メンバーが名古屋工業大学出身のためです。共同創業メンバーは名古屋工業大学の起業部「NaSH」の立ち上げもやっていました。

さっき「プライバシー」というキーワードが出てきましたが、みなさんが普段スマホを触ったりサービスを使うときに個人データ登録をすると思うんですが、そういうデータを安全に活用するようなシステムを提供する事業をやっています。
僕らが取り組んでいる「プライバシーテック」領域は、結構世の中的に注目されはじめている領域になっていまして、トレンドに乗る形でAcompany自体も取り上げていただく機会が増えてきているところでございます。

プライバシーテック領域への取り組みと転換点

高橋:Acompanyがプライバシーテック領域に入る大きな転換点になったのが、2020年から秘密計算(暗号系の技術の一種、暗号化したままAIを使ったりデータ分析ができる)の研究開発をスタートしたことです。そこから2年間ぐらい研究開発をやってきて、秘密計算という技術だけではなくもう少し幅広い技術の組み合わせでお客さんへ価値提供をしていかないと、なかなかビジネスになっていかないと思いました。
個人データを実際に使おうと思うと、みなさんもプライバシーポリシー規約を読むことがあると思いますが、法律的に扱いが決まっているので、そこを含めた対応をプライバシーリスク分析というところで、秘密計算から幅を広げてご提供させていただき、2023年くらいから本格的に個人データに特化したプロダクトやソリューションを展開するようになってきました。

秘密計算について軽くご紹介しますと、秘密計算自体はいわゆる暗号化したままの状態で計算を実行できるという技術で、特にAcompanyでは、ハードウェアのチップを使って秘密計算…暗号化したまま安全な環境で分析を処理するという技術に強みを持っています。この技術自体は、実はグローバルで今すごく普及しはじめているもので、例えばiPhoneにも秘密計算の手法が採用されていまして、最近Apple intelligenceというものが発表されましたが、まさに秘密計算を使ってみなさんのデータを安全に取り扱うというような事例にもなっていたりします。
Acompanyはプライバシーテックの領域で業界団体も立ち上げて活動していまして、最近KDDIさんやNECさんなど大手企業さんにも参画いただきながら、法律をどういう風に技術や社会進展に合わせて作っていくかという提言活動をしています。30歳で業界団体をやっているのは結構マレなので、そういう面でいろんな方にビシバシ鍛えられているところです。

コンサルティングとプロダクト提供を合わせながら事業をやっており、お客さんの個人データの活用をコンサルティングでサポートしたり、データを処理するところ…これはまさに秘密計算をコア技術に使っているんですが、データ分析用のクラウド環境の提供、ガバナンスの取り扱いをしっかり楽にしていくサービスを提供しています。
例えば、いろんな企業さんの個人データを集めて安全に分析ができるので、大手通信会社さんに使っていただいたり、病院間のデータ連携で使っていただいたりしています。名古屋大学病院さんとか東北大病院さんとか北大病院さんの持っている病院のデータを統合して分析するようなものがあり、今年学会で発表して賞もいただきました。

プライバシーテック領域に関して、日本一を狙うだけではなく世界一に挑戦していくということをやっている会社でして、野心的な目標として2035年までに世界NO.1のプライバシーテックカンパニーになるというのを掲げております。

学生の時から事業を構想していた?

水元:Acompanyはどうやら外から見るとすごい伸びているいい感じのスタートアップ名古屋を代表しているように見られることもあるんじゃないかと思うんですが、最初から狙って伸ばしてきたのか、もし仮に試行錯誤やいろんな失敗があるんだとしたら、どんなプロセスを経てきたのか、ざっくり聞いてみたいです。

高橋:結論から言えば狙ってましたね。狙っていたからできていたかは全然別ですよ。僕自身、スタートアップがやりたかったんです。スタートアップとは急成長する会社のことを指すワードになっていまして、僕は結構生き急いでいるところがあるんですよ。
はやく成長するとかはやく結果を出すみたいなところにすごい意欲が高かったので、基本的には大きな挑戦をはやくやりたいと思い会社経営を始めていて、事業も結構ピボットしたりお客さんを変えながらやってきたんですが、「こっちの方がもっと伸びるな」とか「こっちの方がもっと可能性あるな」とか、もっと成長確度に対して直結するなっていうところに愚直にやってきました。
結論でやっぱり狙っていて、結果論だけでいくとまだまだ全然自分の理想には届いていないですね。

学生時代に作った最初のサービス

高橋:名大生向けの家庭教師のマッチングサービスを作っていました。当時、僕自身がウェブアプリケーションを受託して作っていたので、その延長で自分ができるスキルを使って事業を作りたいと思いました。兼業で、名大生として時給5000円で家庭教師もしていました。その時によく相談されてたのが「家庭教師やりたいけど時給1000円・1500円なんだよね」って。あれは、仲介会社が中に入って、生徒の親から3000円くらいもらって半分学生に払って半分会社にバックしているという構造になっているんです。

なので、直契約して3000円直接もらえたらうれしいじゃんと。名大生だったらこの地域だと教えてほしい人いくらでもいるからやろうと。時給もみんな目線が下がっちゃっているので、僕が作った家庭教師サービスは、最低時給2500円の家庭教師マッチングサービスなので、バイトにしては高い気がしますよね。かつ、親御さんから見ると安いんですよ。
実際にリリースしたところ、2週間で名大生500人の登録が集まったんですよ。

水元:すごくないですか!

高橋:これは僕もすごいと思ってます(笑)。結構勢いよく始まったんですが、やっていく中でわかってきたのが、僕自身が10年かけたいかみたいなところです。1年くらいこの事業を作るために休学して、2017年夏くらいからスタートして2018年9月に最終的に辞めているのですが、Acompanyは2018年6月操業なので、創業から3ヵ月で家庭教師マッチングサービスは辞める意思決定をしています
名古屋の家庭教師事業で取れる市場規模は、だいたい数億円くらいしかないということがボトムで見えてきました。さっきのスタートアップという概念でいくと、やっぱり売上100億円ぐらい作れる事業にチャレンジしないとスケールが小さいんですよね。なので、全然足りないわけですよ。

ただ、さっき言ったように使いたいという学生もいるし、価値を感じてる親御さんも出てきている中で、マジでどうしようかなってすごい悩んだ時期がありました。この時僕が学んだのは、家庭教師マッチングサービスを作りたかったわけじゃないということです。僕はどちらかというと、スタートアップを作っていくとか、仕組みで世の中にもっと価値を作っていくっていうところにチャレンジしたかったんです

事業を撤退した結果、組織崩壊へ

Acompanyとしては家庭教師マッチングサービス事業を撤退すると決めた時、チームが崩壊しました。なぜかというと、家庭教師の事業にみんなめちゃくちゃ共感してたし、意義を感じている、学生が集まっているチームだったので、目線にギャップが出てきてしまいました。僕はスタートアップとしてチャレンジするというところでギャップを感じていたけど、メンバーからすると、お客さんが使ってくれはじめた状況でなんで辞めるの?みたいな。意味わかんないと。

学生だった僕は、家庭教師マッチングサービスはいい手段だと思っていたんです。働き方が効率的になるし中抜きによって発生する部分を短縮できるし、いいじゃんと思ってたんですけど、そこは経験を経て自分の視座が上がっていったことによって、小っちゃかったなと気付きました。
この時、僕が世の中に仕組みで価値を作っていくということでメンバーを集めていたら崩壊しなかったんですよ。けど「家庭教師マッチングサービスって熱いよね?どう?」という風に集めたから崩壊したんです。

今の共同創業メンバーは家庭教師マッチングサービスを辞めてからメンバーになっているんですけど、「技術で世の中に大きくインパクトを出す。その技術や方法に固執しない。手段はテクノロジーを使いながらも、世の中にしっかり価値を出すことが目的だ」というところに完全に共感してくれています。

WHY YOU(なんであなたがやるんですか?)は、うるせえ(笑)

水元:Acompanyは社会課題や世の中にとって必要な事業をやっていると思うのですが、例えばこれが投資家さんから「なぜ君がやるの」だったり「なぜその事業をはじめたの」だったりという質問があった際、ビジョンについてどう答えていたり、どういう変化・変遷をしていったんでしょうか?

高橋:WHY YOU問題ですね。僕はいつもその質問には明確に「うるせえ」って回答しています(笑)。つまり、そこに僕は意味がないと思っていて、「なんであなたがやるんですか」って、裏返すと、質問者が納得したいだけなんですよね。今この瞬間でのWHY YOUであって、3年後この領域にいたら多分WHY YOUはできているんですよ。例えば、学生起業だと大学で研究していて専門性を持っていると回答することがよくあるんですが、修士を卒業して博士1年目ですって人だと、2年ちょっとしか研究していないんですよ。それでも専門性があると回答すると、君はプロフェッショナルなんだなと納得しちゃうかもしれないですね。だから、後付けで何とでもできるんです。
逆に言えば、チャンスがあると思う領域に長い期間いるだけでWHY YOUできるんです。だから僕は全然気にしていなかったというのが回答です。

Acompanyは秘密計算の領域を2020年から取り組んでいますが、当時の僕らは実はチームの中に暗号の専門家は誰もいなくて、僕自身も全くバックグラウンドがない状態で、無限にWHY YOUって言われ続けていました(笑)。当時はNTTとかNECの研究者が強かったんです。それを言われ続けて、じゃあ4年半経った今どうかっていうと、明らかに僕らが今この国内でトップランナーで、秘密計算の有識者の人たちがAcompanyに集まってきているんですよ。「秘密計算の領域ならAcompanyさんですよね」っていうところまでは来ているので、後からどうにでもなるという僕の仮説は実際やっぱりそうだったと思いました。

技術の専門家と技術の社会実装をやる専門家は別物

高橋:テクノロジーをベースにした起業家は研究者とは全く違うものであると僕は思っていて、研究者として強い人が事業化まで出来るのであれば超強いんですが、研究だけしている人は全然ジャンルが違うと思っています。金銭面を指標にしたときに、研究者の技術と社会実装した起業家どっちにリターンがあるかというと社会実装した側なんです。逆に、起業家に言いたいのは、研究者に絶対なっちゃダメなんです。

僕らみたいに技術から行く場合は、技術に詳しい人とその社会実装に詳しい人っていうのは、実はもう違うスペシャリティーなんです。技術の社会実装に詳しい人っていうのはほとんどいない…もちろん、AIのようなホットな領域はいっぱいいるんですが、もうちょいニッチな技術のところは大手の研究所がやってるだけなので、全然競合ではなく、むしろチャンスだと思ってもいいぐらいに思っています。

その他、参加者の質問に回答いただきました!

イベント当日は匿名でリアルタイムに質問ができるツールを使って、参加者の方々から質問をいただきました。

・バイタリティーはどこからくるの?
・起業家に向いている人とは?
・家庭教師のサービスを売却するという選択肢を取らなかったのはなぜなのでしょうか?
・事業の急拡大をしたタイミングとその理由、それに伴う組織拡大の失敗談を教えてください!

など、多数の質問をいただいて盛り上がりました。
続きはPodcast「アカン経営トピック」をご視聴ください!

Acompanyの高橋さん、水元さん、イベントにご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました!

Acompany高橋さん・水元さんと参加者のみなさま

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