104『負けヒロインが多すぎる!』、第5話「朝雲千早は惑わせる」、感想
私はアニメやマンガを観る時、誰の物語か、誰の視点か、誰のフィルターかを考えて見ていて。例えば代表作が『タッチ』の他にもあるあだちマンガ、主に目のデザインで主要キャラと脇役の差別化が著しい。これでこのマンガが誰のフィルターで霞みがかっているかが明白。一方でその遺伝子、爽やかな青春を色濃く受け継いでいる『君は放課後インソムニア』、脇役を脇役顔にしていないが、マンガとしては明確に曲と中見の物語。
一方でマケインはと言うと、マケインでは明確に一人ひとりに物語があり、しも具体的に物語ってくれている。誰の視点かと言うと間違いなく温水くん視点。そしてフィルターも温水くんのはずだが、自分をモブキャラと見なしているからか、結構公平、というよりみんな輝いて描かれている。
今回は新章突入ということでどういう話になるかと思ったけど、始まり方は若干初回と似てました。温水くんの家での杏菜さんと温水妹との会話は、「プロ幼馴染八奈見杏菜の負けっぷり」でのファミレスでの杏菜さんと草介くんの会話を、温水くんが盗み聞きする場面の変形と思えました。話の内容が鬱気味なのも第一話に寄せてるし。
そこで文芸部の臨時招集がかかり、陸上部と兼任の焼塩さんの欠席が以後の展開の伏線になってる。というよりアバンで待ち人してるのが焼塩さんだったし。そしてグラウンドで走っている焼塩さんを杏菜さんと温水くんが眺める場面になるんだけど、ここでの杏菜さんが「痛い人」というんだと理解しました。貶す意図はないけど、「無理してるんだ」と同情の意味を込めて。ここでの遠野ひかるさんの声の演技、絶品です。
そして温水くんは図書室で小鞠ちゃんのWeb小説の高評価を知り、帰ってきた文芸部部室で着換え中の焼塩さん、ご機嫌の焼塩さんに遭遇する。
そして日が改まって温水くんは杏菜さんからお茶の誘いを受けるのだが、気合入れて向かった温水くん、やっぱり杏菜さんの愚痴を聞くことになったのでした。しかしこれ以後、事態は思わぬ展開に。焼塩さんが淡い恋心を抱いていたのが綾野さんだけど、綾野さんと付き合っていた(はずの)朝雲千早さんに、温水くんと杏奈さんは遭遇。つまり朝雲さんは綾野さんの浮気を疑ったわけで、日が改まった三人の追跡、杏奈さんは逸れてしまったのでした。
個々のエピソードに連続性はあまりないけどそれぞれの状況が繋がっていてお仕舞に収束する、かなりテクニカルな脚本と思いました。だからこそキャラクターはその場で反応せざるを得ず、そのリアクションが悉く喜劇になってました。そして飽くまで温水くん視点のため、杏菜さんの中学の同窓会や朝雲さんのこれまでの綾野さんへの追跡劇はそれぞれが説明する情報しか得られず、却ってリアリティがある物語と思えました。
しかし朝雲千早、恋に思い悩む乙女と思ったらGPSの件と言い最後に温水くんに丸投げするところと言い、なかなかの食わせ物で生々しいキャラ。今回も十分楽しませてもらいました。