『利休にたずねよ』
先日、国立博物館の茶の湯展に行った。
茶道の末端を齧っている身としては、どうしても行きたくて、ひとり時間を捻出して、いざ。
美しいものに触れると、涙が出ませんか。
なんだか怪しげに聞こえるけど、もうそれは浄化と昇華とか表現するにふさわしい吐息と涙が出る。
こんなにも美しいものが、この世に在るということと、それを生み出した人間の情熱みたいなものに、身震いするほど感動する。
で。
ふと思った。
そう言えば、千利休はなぜ切腹したんだっけか?
秀吉の怒りを買ったと言うのは覚えていたけれど、なんかしたんだっけか?
そう思って、小説に頼ることにした。
選んだのは『利休にたずねよ』山本兼一著。直木賞受賞作。
もう、素晴らしく面白かった。
【第140回直木賞受賞作】
利休にたずねよ (PHP文芸文庫)
利休が極めた、美への執念。
その奥底にあるのは何だったのか、それを解き明かそうとする物語。
その後すぐに、映画の方も見た。
美しい世界観がありありと映像になって、胸に迫る。残像が蘇る。
映像美の余韻がずっと残る映画だ。
利休の妻役の中谷美紀が圧巻でした。
最初から最後まで、すみずみに至って美しかった。
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忘れえぬひと。
それぞれ別の人生を歩んでも、その後の人生に大きく影響するようなひと。
そういう存在を、心のうちに秘めている人も少なくないのではないか。
それはきっと、誰にも踏み込まれたくない自分だけの領域で、人生の伴侶とは別の次元のお話。
誰にも言えない、いや、言いたくない。
言ってしまったら、思い出がありきたりの陳腐なものになってしまうようで、自分の秘部を晒してしまうようで、誰にも知られたくない。
そういうものを抱えて生きている。
そう、私も。
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