![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152507050/rectangle_large_type_2_281208b19c9b10a23cb44211377e666d.png?width=1200)
映画「グリーン・ナイト」を見た、台風の夜。
台風が来て少し温度が下がったせいか、暖かいお茶を飲んでいる。
コーヒー以外で久しぶりに暖かい飲み物を素直に欲した気がする。
昨日なんかココアまで飲んだ。
U-NEXTで「グリーン・ナイト」を見た。
ダーク・ファンタジーって書いてあったけど、そんなにダークでもなかった。
アーサー王の甥っ子「ガウェイン卿」がクリスマスの日、王宮で開催された祝賀会の席で、王から「何か話して」みたいなこと言われて「私には語ることがありません」と答え、王妃から「今はね、これから作るのよ」と言われる。
![](https://assets.st-note.com/img/1725012060720-8OkaV1p9MU.png?width=1200)
王様が円卓の騎士たちに、武勇伝でもなんでも面白い話をしてくれと呼びかける中、突然城の入り口の重い扉が開いて馬に乗ったままの騎士が宴席に入ってくる。
人間離れした出立ちの騎士は、ゲームをしようと持ちかける。
自分とタイマンで戦おうという単純な話。
しかし「武器をとり名誉をもってわしに一撃を加えろ。傷を与える者にこの戦斧おのを進呈しよう。栄誉と力はその者の手に…… だが、その者は誓わねばならぬ。わしを倒したなら1年後のクリスマスにわしを捜し出せ。北へ6夜行った緑の礼拝堂で、ひざまずいてわしの一撃を受けろ。顔への傷、喉の切り裂き…… やられたままやり返し、信頼と友情と共に別れよう」と曰う。
ここら辺からファンタジー感が出てくる。決闘に負けたってことは死んでるってことなのに、1年後に訪ねてこいとはいかなる事。
そんな途方もない話を聞かされ、手を上げる者などいない中、他の騎士たちと違ってまだ自分は騎士でもなく、語る話もないと言っていたガウェインが名乗りをあげる。それを見ていたアーサー王は自分の剣(アーサー王と言えば剣)を渡しながら「これはゲームだから」と告げる。
単純なタイマンの話だったはずなのだが、騎士は進み出たガウェインを前に剣を交えず膝をつき、己の首を切れと差し出す。
ガウェインも他の者も戸惑うが、「何も語る事を今は持たない」ガウェインは意を決して騎士の首を跳ねる。
血飛沫も飛んで首も転がっていったのに、騎士は死なない。
なるほど。人ではない何かなのか、と思っていると、徐に転がった自分の首を拾い、1年後のクリスマスに訪ねて来いと言い残して、拾った首を抱えて馬に乗り、颯爽と楽しげに去っていく。
1年後、ガウェインの元にアーサー王が訪ねてきて、あの騎士の元に旅立てと告げる。ガウェインはあの日から1年の間半信半疑ではあったけれど、約束を守るタイプと見えて、死にに行くのがわかっていながら騎士が語った緑の礼拝堂を目指し旅に出る。
もちろん道中色々ある。常軌を逸した追い剥ぎに襲われたり、謎の女性に出会って助けてあげたら味方してもらえる事になったり、かわいいキツネと出会ったり、城に住む狩が好きな城主とその奥方と過ごしたりする。この奥方の「なぜグリーンなの?」という話から始まる色に対する彼女の考察が興味深かった。
そうして、ガウェインはとうとう騎士と約束を交わした地にある緑の礼拝堂に辿り着く。
![](https://assets.st-note.com/img/1725011454678-Q0Y9CS7HUz.png?width=1200)
それでこそファンタジー。
着いてみると、あの時の騎士が確かにいる。緑に包まれた館の中で、生きているのか死んでいるのか、スタチューのように佇んでいる。
ガウェインはその前に佇んで時を待つ。
クリスマスが訪れ騎士は目覚め、さっそく斧でガウェインの首を刎ねようとする。ガウェインは覚悟していたとは言え思わず待ったをかける。いざとなると「待った」と言ってしまうのもわかる。
そうこうしながらある事をきっかけに腹をくくって、準備ができたと騎士に告げ膝まづいて首を差し出す。
![](https://assets.st-note.com/img/1725011524013-OsaVDp7Ela.png?width=1200)
ハッピーエンドで良かった。
首を刎ねられるのに、ハッピーエンド?と思われるかもしれないけれど、自分の名誉や自分自身に執着していた人間が、それより大切なのは交わされた約束や誠実さだと気づき、身をもって考えさせられた後、何を選択するかというお話なんだと思う。
生きて行く中で、避けられない死に直面する事なんてほとんどは一度しかないけれど、死んだ気になって、真剣に誠実に何かを模索する事なら出来るような気もする。
岐路に立った時、どちらを、何を選択するかの基準が、自分のエゴじゃなく、物事や他人に対する誠実さだったら、もしも間違ったとしてもまたそこからやり直せるんじゃないかと思わせてくれた。その選択によって手にする未来が全く違ったものになり得るんだと。
わたしは何を基準に分かれ道を選びながら、ここまで来たんだろうと思ったけれど、今までの事を言っても仕方がない。これからもそんな分かれ道がたくさん出てくるのだろうから、その時はちょっと終焉を迎える時を意識して、後悔しないように歩いていこうと思った。
エンドロールの後差し込まれるあるシーンは、ガウェインが送るであろうもう一つの人生の、幸せの象徴なんじゃないかと思う。
「グリーン・ナイト」を見る時は、最後までみてね。
映像も素敵だし、カメラワークも凝ってて、所々で大好きな「ロード・オブ・ザ・リング」をちょっぴり彷彿とさせる部分もあって、台風の夜、静かに落ち着いて見ることができた。
ガウェイン役はスラムドック・ミリオネアのデーブ・パテールなんだけど、かっこいい大人になってた。バリー・コーガンも出てるけど、ちょっとしか出てないにもかかわらず、バリー・コーガンはバリー・コーガンだった。