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クラスメイトの髪を切った、中1の初夏。

最近ニュースサイトとかに混じって、やたらと手帳の使い方とか、手書きすると気持ちが落ち着きますよとかいう記事を見かける気がする。
流行ってるんだろうか。不思議に思う。そういうことにも流行り廃りがあるんだろうかと。単純な疑問だから怒らないでね。
それって普通のことなんじゃないのかな。
でも、そうじゃないから記事になるのか。

小学生になった時に日記帳を買ってもらってから、ずっと書いてきてるから、そんなの当たり前じゃんと思ってしまう。

寝る前にその日に起こったことを書き出しす。そうすると単純にその日に起こったことの中で1番気になった出来事が行を稼ぐ。
書きながら、どうしてそんなことになったのか、なぜそんなことを言われたのか、もしくは言ったのか、特別何もない日でも、1番いい寄り道の方法や、今日のオヤツのミルクセーキが美味しかったことや、おかえりなさいって言った時のお母さんの笑顔の描写で埋め尽くされていく。

嬉しい日は「あー、今日も楽しかった」で終わるし、何気に嫌なことがあった時はそのままの文章で終わるのが嫌で、そんな日でもいい事、例えば天気だっていいし、作ってくれたオヤツのドーナツが美味しかったとか、お母さんがいたずらしてオムライスにケチャップでスマイリーを書いてくれたとかを書いて、ちょっと嫌なことはあったけど、やっぱり楽しい1日だった。って締めくくる。
一日をきちんと終わらせないと明日が迎えにくいっていうか、明日を迎えるためのただの習慣。普通の事だし、歯磨きと一緒。

そんなことをしてると、自分の事以外の気になることも書くようになる。

中学1年生の時のクラスに、ちょっとだけ仲間外れっていうか、激しくはないけれど相手にされない程度の状態で、いつも一人ぼっちの女の子がいた。
観察してると、男子は(言葉は悪いんだけど)少し汚いものを見るような目で見てるし、時折悪口を言ってる。女子は近寄らず気づかないふり。
どうしてなんだろうと思って観察を続けていると、確かに髪の毛とか洗ってないようにも見えるし(ごめん)制服も多分新しいものではなくて、誰かのおさがりに見える。
その子は大人しくて夏休みに入る頃になっても話し声を聞いたことがなかった。

ある日学校から帰ってると、その子が私の帰り道の前の方をテクテク歩いてる。
今思うと、どうしてそんな事考えたのかわかんないけれど、自分のお家を通り過ぎて、その子の後について行ってしまった。
しばらくついて行くとその子のお家に着いた。
びっくりした。
川沿いの堤防から1mくらい下がった場所に、小さな古い小屋みたいなものが建っていて、その小屋の前の小さな庭っていうか、土の部分にはなにかの作物がまばらに植えてあって、小学校に上がる前の小さな子供たちが3人、裸足で遊んでいた。その子を見つけると「お姉ちゃーん」と言って嬉しそうに手を振った。
私は、どうしていいかわからず踵を返して家に帰った。

その日の夕ご飯の時、お父さんに何回も「どうした?なにかあったの?」と聞かれるほど、なんだか心が落ち着かなくてご飯もろくに食べられなかった。
その日の日記にも、その感情がどこから来て、何を意味してるのかわからないと必死で分析してる様子が窺える。

その後、学校で何日もその子を観察してしまった。
そして私は、本当に今思うとどうしてそんな事を思いついたのか不思議すぎるのだが、その子にこう声をかけた。
「髪を切ってあげる」俄かに信じられない。
そんな事、同じ中学生同士なのによく言えたものだ。
その子がそれをどう受け止めるかなんてわかるはずもないのに、観察してる間にその子だったら大丈夫だと感じた。
その子は素直にうなずいて私の家に着いて来てくれた。それも嬉しそうに。

お家に着いて、テラスに髪を切るセット(弟は美容室に行くのを嫌がって、お母さんに切ってもらってたから道具はバッチリだった)を用意して、どうしてそんなに自信があったのか、それも女の子の髪を切るなんてどうかしてるんだけど、美容室に行く度に、どんな風に切ったらどんな風になるんだなって、毎回興味津々で見てるタチだったから、わかったフウな気になってたんだと思う。弟の髪を切ってあげることもあったし。

いつも、伸び放題でボサボサしてる感じがして、なんとなく不潔に見えるからいけないんだと思った事は正直に認める。
それに、美容室とかに行ってないんじゃないかと思ったのも認める。
嫌だけど、他人って見た目で人を判断するんだと思ってた事も認める。
だから、そこから勝手に考え出した、私がその子に出来そうなまず始めの第一歩だと、自分勝手に思ってしまった。

ほっそりとした顔立ちだったし、伸びても手入れが簡単なように、襟のギリギリで揃えて、伸びっぱなしの前髪のせいで表情が見えずに暗い印象を与えてると思ったから、前髪を作った。いわゆるショートボブだ。
色白だし、よく見ると綺麗な目をしてたからっていうのもある。
そして、お風呂場に行ってシャワーをしてきてと言って、ドライヤーで乾かした。自分で言うのもなんだが、すごく可愛くなった。たったそれだけの事で。

そんな突拍子もない、失敗したらどうするんだよ?っていう事を受け入れてくれた彼女は、素直に「ありがとう」と鏡を見て言ってくれた。
初めてきちんと話した。だから調子に乗って、
「もしも、お友達とかが欲しかったら、ちょっとだけ髪とか気にしてみたらいいかも」とか、色々話した。そして「もしもまた私でよかったら髪切るから、いつでも言ってね」って。

夏休み前の出来事だった。
その子は私の家の横を通って帰ってたから、私がそこに住んでることは知ってたらしい。夏休みに入って、何度か遊びに来てくれた。

お父さんもお母さんもお仕事をしてるから、妹や弟の面倒を見なくちゃいけないらしく、あんまり自分の時間がない様子だった。でもその事を別にぐずぐず言うわけじゃない。だから遊びに来るときには、全部連れてきたらいいよと言った。笑うと可愛い女の子だった。

夏休みが終わって、2学期が始まった。
観察してると、少しづつその子をいないものとして扱うことが減っていった。何人かの女子が話しかけたり、男子もわざわざその子の話をすることもなくなっていった。私はその子とは学校では別に話したりしなかった。私もある意味ロンリーウルフで浮いてたから、私と話してたらその子も一緒に変な子扱いされてもなと思ってたから。

でも、私は嬉しくて悲しかった。
その子は私の傍若無人な提案も素直に受け止めてくれて、自分の時間も削って弟や妹の面倒をみて、多分だけど、そんなに余裕のある暮らしをしてなくて、それでも可愛く笑える人で、それなのに今までは見た目と雰囲気だけであんな風に扱われてたんだ。
なのに、少しづつでも見た目に気を使うようになったら、結果、仲間はずれじゃなくなった。
やっぱり人って、見た目だけで判断してるんだなって。

その子が休み時間に1人じゃなくなった頃、私はその子の観察をやめた。もう、私の出番は終わったから。

こうやって書いてみて改めて思う。
よくそんな事、なんの恐怖心もなくやったもんだと。もしかしたら私の観察が不出来で、その子をすごく傷つける事になったかもしれないのに。
お節介にも程があるし、一体全体お前、なにやってんだ?と。
こういうのを「若気の至り」って言うのかな、何も怖くなかった。
っていう歌の歌詞があった気がする。
それね、それ。

長くなってしまった。
明日、日曜日だから許してください。
でも、忘れられない思い出なんです。

素敵な日曜日を!

どこかできっと元気にしてる、静代ちゃんもね!

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