♯10 マネジメントは一般教養(リベラルアーツ)である
今月の一言:「マネジメントは一般教養(リベラルアーツ)である」
(この号は約3分で読めます)
この言葉、ドラッカー氏の数ある名言の中でも、特に好きな言葉です。
Liberal art の日本語訳は「一般教養」。
私たち日本人が抱くイメージは、大学1~2年時の必須科目として選択しなければならない、広くて浅い一般的な教養の印象が強いですよね。
でも実は、欧米ではその言葉にもっと深く、大きな意味が含まれています。
その語源的意味は、「自由になるための学問」。
哲学、歴史、芸術を学ぶことで教養が広がり、自由で創造的に人生を送ることができる学問を意味しています。
では、ドラッカー氏の説く「マネジメントは一般教養である」の真意は何か?
職種を大別すると、ゼネラリスト(総合職)とスペシャリスト(専門職)の2つに分かれます。
中小零細企業の強みは、大手がやらない特殊な専門領域から生まれます。
したがって、専門職がその仕事に特化できる環境整備は必須です。
ただし、その強みの先鋭化を専門職に任せているだけでは、会社経営は上手くいきません。
会社やその事業を取り巻く環境、社会情勢や変化の趨勢を俯瞰し、専門領域での強みを会社独自の”違い”へと転換/昇華できるかがポイント。
ゼネラリストが、その重要な役を担います。
そして、私たち会社経営者が担うべき役割は、もちろんゼネラリストです。
事業の専門知識を持たない経営者でも、立派に会社を経営することは可能です。
一方、ゼネラリストの役割を果たせない経営者は、早晩会社を破綻させます。
■「愚者は経験から学ぶ。賢者は歴史から学ぶ。」
会社経営者が果たすべき役割は以下の3つだと、私自身は考えています。
1.経営方針を定める
2.その基本戦略と経営資源(人・物・金)の配分を決める
3.社員がイキイキとその戦略を実行できる環境を整える
その役割を担うのに必須な能力は、明日を創る意志、自己の価値基準、想いを伝える力、感受性、そして人間性だと思っています。
会社経営には、特に零細企業経営には、専門知識やビジネス、会計知識がもちろん必要です。
ただし、その知識からは、上述した経営能力は得られません。
このコラムの読者は、“治療” という専門領域の経営者。
「経営者の特殊技術=企業の専門事業領域」という、ある意味特殊な経営環境です。
そして、大半の方は最小規模で経営しています。
私自身は自分の専門性に特化した事業を行っていないので、その特殊領域のなかで執るべき経営の軸はわかりません。
また、治療院経営において、一般教養を学ぶことがどれだけ会社経営上有効なのかも不明です...
他方、会社規模や業態に関係なく、私たち経営者は未来を創ることが仕事です。
その役割を果たすうえで私たちが肝に銘じることを、ドラッカー氏は以下の言葉で残しています。
求められるのは「観察力」と、変化を読み取る「直観と感性」。
ゼネラリストが果たすべき領域です。
そしてそこでは、リベラルアーツの語源である、「自由で創造的な感覚を磨く」能力が問われます。
治療院業界で、「すでに起こった未来」は何ですか?
次回は「すでに起こった未来」について、一緒に考えていきましょう。
~次号の「重要なことは、既に起こっている未来を確認すること」を読む~
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