漢字指導の知恵が詰まったミチムラ式漢字eブックは辞書代わりに使えるか?ー漢字辞典と比較してみた!
海外で漢字を続けるには、ミチムラ式漢字eブックがとてもいい!ということがマルチリンガル漢字指導法研究会でわかってきました。
ミチムラ式漢字eブックは「漢字を楽しく学ぶこと」そして、「漢字が入っている言葉を使えるようになること」「意味がわかって言葉を知ってもらうこと」を意識した漢字学習の本です。
あまりにも便利すぎるミチムラ式漢字eブック。漢字が苦手な私が、海外で漢字も見たくない状況になってしまっているお子さんに漢字を教え、学習の継続が可能なのもこのeブックのおかげです。このeブックがなければ、私の娘たちも海外で日本語を続けることはとっくに諦めていたと思います。
そんな大切なeブックですが、あまりにも便利すぎて、楽しすぎて、これは「カンニングじゃないの!?」という声が聞こえてきました:)。
今日は、辞書がわりに使ってみた私の次女の疑問から、便利で楽な学習は本当に学習になっているのか?という点について考えてみたいと思います!
1 漢字学習の「カンニング」とは??
これは、次女の質問から始まりました。
次女はアメリカで、日本の国語の教科書を使って、週一回オンラインで学べるオンライン補習校に通っています。
そこの宿題で、「漢字先生」というものが出題されます。
漢字先生とは、翌週に学ぶ漢字が生徒に振り分けられ、一人2、3個の漢字を事前に辞書で調べ、その読み方、書き方、熟語を調べ、みんなに教えられるように調べておくという物です。
それ以前にも、日本語教室では辞書の使用を積極的に進めてくださっていたので、次女も漢字辞典を使うのは苦になっていないようです。
そんな次女でも、やはり現地校の宿題や習い事が増えてくると宿題がギリギリになってしまいます。
時間がない時は、辞書で調べる作業はストレスフルに感じてしまいます。そこで、私は辞書よりも短時間で検索できるミチムラ式漢字eブックがあることをリマインドします。
辞書で調べるよりも断然早く簡単に宿題が終えられる体験を経て次女が言ったのは、
でした。あまりのわかりやすさ、調べやすさに、驚いた様子が伝わってきます。
と同時に、答えに少し考え込んでしまう自分がいました。
というのも、私は辞書が結構好きで、辞書を引くことは「いいことだ」と刷り込まれてきているからです。アメリカから日本に帰国した中学校時代、私は密かに誰よりも早く漢字辞典で漢字を調べられることを少し誇りに思っていました。それほど、辞書を引かないとわからない漢字だらけだったということで、あまりいい思い出ではないですが。
そんな苦労しないで、ミチムラ式漢字eブックで宿題やっちゃったらいいよ!という自分と、紙の辞書を引くあの静けさと文字をみつけた時のワクワク感など、辞書でしか出会えない喜び。両方を知っている私は、娘の質問に少したじろいでしまいました。
ちょうど運良く、マルチリンガル漢字指導法研究会の第69回定例会で質問する機会があったので取り上げてもらうことができました。
果たして、ミチムラ式漢字eブックはあまりの便利さゆえに学習で大事なことが損なわれてしまうのか、しまわないのか?
まずは、ミチムラ式漢字eブックと漢字辞典の違いについて、第69回定例会で話されていた内容を中心に整理したいと思います。
2. ミチムラ式漢字eブックと漢字辞典の違いTop3
ここでは私が特に印象的だと思ったことTop3をまとめた表が以下です!
ミチムラ式漢字eブックも漢字辞典も漢字の成り立ち、書き順、読み方、熟語が記載されています。
そんな中でも違いはとても明らかですが、私の第3位はこちらです!
① 第3位:熟語の解説の仕方
熟語の解説の仕方!
漢字辞典では熟語の解説が「文字」だけであるのに対して、
ミチムラ式漢字eブックでは、写真を使ったイメージであるという点です。
例えば、6年生の漢字「装」を比較してみましょう。
次女が大好きな『小学新漢字辞典』光村教育図書で「装」を調べると、このようなページが出てきます。
一方、ミチムラ式漢字eブックでは、
まずどーんとこのような画面が表示されます。
右ページの青い矢印を押していくと、このようにたくさんの熟語がイメージ付きで表示されます!
このように漢字が使われている熟語を調べる場合、漢字辞典では言葉で解説されている中、ミチムラ式漢字eブックでは、イメージを使って解説されています。これは、海外で暮らす子にはありがたいです。
そして、今気づいたもう一つの違いは、国語辞典は、その漢字から始まる熟語は解説付きで書かれている中、その漢字が使われている熟語の解説は書かれていないです。ミチムラ式漢字eブックは、その漢字が熟語の最初に使われているものだけでなく、終わりでも真ん中でも乗せられているので、親しみやすく感じます。
ではでは、国語辞典とミチムラ式漢字eブックの違い第2位に移りたいと思います!
② 第2位:一つの漢字を調べることで目に入るその他の情報
少し脱線しますが、大学院時代、恩師にこう教えてもらったことがあります。
「図書館っていいよね。探していた本の隣に、自分ではきっと検索しても引っかからないけど、すごく面白い本に出会うことがあるから」と。
このように、私の経験では、漢字辞典も実際に調べる過程で、意図せずともいろんな漢字が目に入ります。
中でも同じ部首を持つ他の漢字を目にすることが多いかもしれません。この点について、研究会で指摘されていたのは、ミチムラ式漢字eブックでは、同じ部首以外にも、先ほどの①の右ページの青い矢印を押し続けると、このように、読みつながり、部品つながりで他学年の漢字が復習できるようになっているということです!
さらに①の左ページの「部品」ボタンを押すことで、部品の意味のみならず、中学校で学ぶ漢字まで目にすることができます。
つまり、辞書では、紙をパラパラめくりながら、調べる過程でいろんな漢字が目に入ったり、同じ部首を持つ漢字は知らないうちに目にします。
一方ミチムラ式漢字eブックでは、ボタンをポンポン押しながら、一つの漢字に使われている漢字の部品が同じ他の漢字を目にすることができます。
そして、同じ部品を持つ漢字は似た意味を持つ漢字も数多くあるため、意味のつながりが似ている漢字が知らないうちに目に入ります。
③ 第1位:作者の違い
そして、第1位ですが、これは、漢字辞典とミチムラ式の本質的な違いだと感じる部分です。それは、誰が書いているか、という点です。
マルチリンガル漢字指導法研究会の第69回定例会で、ファシリテーターの堀家さんが娘さんにこのようなことを伝えていると知りました。
「ミチムラ式漢字eブックは、みんなと同じくらいの年のお子さんを長い間教えていらした先生が書いてくれているから、道村先生の知恵が詰まっているよ。例えば、多くの子どもが間違えやすい点を先に言ってくれていたりするから、「かいせつ」にも目を通してみるといいよ」と。
その通りだな、と思います。辞書は、もちろん先生も作成には関わっていらっしゃいますが、主な著者は教授、研究者など国語・漢字の専門家です。
一方、ミチムラ式漢字eブックは、盲学校で目が見えなくてもできる漢字学習を、生徒さんに寄り添いながら、開発を続け、その後、他の小学校でも指導され続けてこられた道村静江先生が書いていらっしゃるということ。
そこには、国語・漢字の専門家に学びながら、長年子どもたちに寄り添って、漢字学習の面白さを導き出し続けてこられた先生の知恵が惜しみなく提供されています。
例えば、先ほどの「装」という漢字の「かいせつ」ボタンを押すと、まるで、道村先生が教室の前で教えていらっしゃる声が聞こえてくるようです。道村先生からの愛のメッセージが込められています。難しい漢字では、こういうところが混乱しやすいから、こうしたらいいよ!と先にアドバイスをくださることもあります!子どもたちに寄り添い改良を続けてこられた先生だからこそ書ける「かいせつ」だと感じます。
そして、成り立ちの解説も、イメージがしやすい写真が掲載されていて、イメージと成り立ちの意味がマッチした時などすごくわかりやすいです。
ミチムラ式漢字eブックと、漢字辞典両方ともに子どもたちに漢字を学んで欲しいという思いは共通しています。
しかし、どこで躓きやすいか、だから、どうしたらいいよ!ということまで解説してくれている「辞書」は私はまだみたことがないです。
まとめ
①②③より私が導き出した結論は、ミチムラ式漢字eブックを辞書がわりに使うことはカンニングにはならない!ということです。なぜなら、辞書でも漢字eブックでも、漢字を調べることで、漢字に興味を持ち、使える言葉を増やしていくことができるから。
もちろん、電子書籍なので、「紙」をめくって調べるワクワク感、穏やかさ、柔らかさ、目へのやさしさは紙ほど味わえないかもしれないですが、どんな子でも「分かる」きっかけが散りばめられているミチムラ式漢字eブックは、長年漢字が苦手なお子さんに寄り添って工夫を凝らし続けてこられた道村先生の知恵・工夫も満載。そして、編集者の友晴さんの力で、日本語を読むのは苦手でも、辞書を調べる時間がなくても、文字で情報を捉えるのが得意でなくてもイメージや音声を通して学べる方法になっているという点で優れていると思います。
漢字を調べることで、漢字が好きになり、使える言葉が増えること。そのために使える選択肢が増えたのはとてもいいことだと思いました。
結論:漢字の熟語調べは何でするのがいいか?
私の中の結論は、どっちもしばらく体験してみて、自分にできる方でするのがいい、という点に落ち着きました。
辞書で調べるのが好きだったら、存分に辞書を使ってみるといい。
辞書で調べるのが苦手であったり、時間がない時は、罪悪感なく存分にミチムラ式漢字eブックを使えばいい。
次女はミチムラ式漢字eブックで熟語を見つけるのは簡単すぎる!と感じているようなので、ミチムラ式漢字eブックを使って熟語を調べる時は、このようなルールを設けて、負荷を調整してみようと思いました。
日本語学習に取り組む余裕レベルを
「1:全然余裕がない↔️5:余裕がある」として、
以下書いてみます。
余裕レベル1(余裕が全然ない):絵を見ながらミチムラ式漢字eブックにある熟語を紙に写す。
余裕レベル2:レベル1+左ページの「部品ボタン」を押して他の学年の漢字も復習してみること。
余裕レベル3:レベル2+「なりたち」ボタンを押して読んでイメージする。
余裕レベル4:レベル3+「かいせつ」ボタンを押して、ミチムラ先生のメッセージを受け取る。
余裕レベル5(余裕がある):レベル4右ページの小学校で学ぶ漢字の仲間や、イメージ付きではないその他の熟語も確認する。
これで、きっとカンニングしているような後ろめたさなしき、脳にある程度負荷をかけながら、けど無理しすぎないで漢字を通してより多くの言葉に出会っていけると思いました!
雑感:楽して学ぶ罪悪感を癒す!
ここまで書いてきて反省することがありました。それは、なぜミチムラ式漢字eブックは辞書と同じように熟語が調べられるのに、それを使うことに後ろめたさ/罪悪感を感じてしまうのか?という点です。
もしかしたら、「海外で日本語を学ぶ=苦しいこと」というイメージを知らず知らずのうちに、娘にも継承してしまっていたのかもしれない、と思いハッと思わされました。
私が子どもであった時よりも、学習に関する研究も技術もどんどん進化しています。そんな時代の恩恵を存分に享受しながら、キツすぎず、緩みすぎない、ちょうど良い方法を選択し続けていけるようにますますサポートにつながりながら進めていきたいと思います!
そんな知恵と本質に出会えるマルチリンガル漢字指導法研究会はおすすめです!これまでの定例会のテーマは以下にまとめられています!海外での漢字指導法の宝庫✨です!
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長文お読みいただきありがとうございました!