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北野武監督作品、『首』を観た

北野武監督作品の映画『首』を観た。端的な感想は芸術性とコメディ性、風刺性が程よく混ざっていて大変面白いものだった。

海外の映画祭にも出展されたが賞は取れなかったわけだが、素材が本能寺の変の新解釈なので日本史の知識のない外国人には解釈の面白さが伝わりにくかったのではないだろうか。そこが『将軍』のある意味単純さとアメリカでの評価の違いを生んでいる点だろう。

個人的に面白かったのポイントを羅列すると以下のようになる。
①緑を基調とした「北野グリーン」とも呼べるような色彩が強調されていた。北野武監督作品は「北野ブルー」と言われるように鮮やかな青を基調とした色彩の映画で有名だった。もちろん今回も青を基調とした色彩もあったのだが個人的には緑色が新たに強調されていたのではないかと感じた。
②本能寺の変の秀吉黒幕説と武将同士のボーイズラブも絡めているプロットに新鮮味があったこと。このプロットの面白さというのは日本史に詳しくない外国人にはちょっとわかりにくいかなとは思ったが。あと、信長が革命的天才を装いながら跡継ぎを息子に譲るという凡夫な側面を部下が失望したというふうに風刺していたことも面白い。ただ、信長の長男は非常に優秀だったらしいので実際の話はもっと複雑なんだろうけど。
③黒人侍で最近論争をよんだ弥助が登場していたこと。結構重要な役割を果たしている。
④農民(平民)視点からの階級社会批判のような風刺的な見方もできたこと。京都馬揃えで天皇も登場して公家と武家の関係とか日本史でも明確に結論つけられていない難しいところが表現されていたことも付け加えておく。
⑤能の表現や大規模な合戦シーンもあり、黒澤明監督作品も意識されているのではないかと思った。黒澤明監督は能の美を映画に取り入れようとしていたことも有名な話だ。大胆な合戦シーンも日本時代劇の代名詞である。

いずれにせよ、個人的にはとても面白い娯楽作品になっている。最後のクレジットで監督名は「北野武」だが羽柴秀吉役のところは「ビートたけし」になっていたところは興味深いと思った。

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