「集団安全保障体制」と「集団的自衛権」、石破首相の考えとは
石破首相が独自政策として掲げている「アジア版NATO」について様々な批判が聞こえる。石破首相の安全保障に対する考え方の基本は何か。
石破首相は日本経済新聞の愛読書に関するインタビューで佐瀬昌盛の『集団的自衛権』という本を名著で3冊目まで購入するほどボロボロになるまで読んだと言っている。石破首相の安保観は本書を読むとわかる。
集団的自衛権というのは国連憲章51条で初めて明文化されたもので、すべての国家が保有しているものだと佐瀬昌盛は主張する。日本では戦後長らく内閣法制局によって「国際法上日本も集団的自衛権を保有するが、日本国憲法の制約上実行不可」というネジ曲がった解釈がなされてきたというのである。日本は期別的自衛権はあるが集団的自衛権はなく、その点を解釈改憲するために安倍首相は安保法制を一部大反対があったにも関わらず、一部特殊な条件で限定的に集団的自衛権が行使できるようにした。石破首相はどうやら佐瀬昌盛の説により、法的には集団的自衛権は限定的でなくフルスペックで持っていると考えているのだ。
「集団安全保障体制」といった場合、第二次世界大戦後のそれは国連体制のことである。基本的には第二次世界大戦で確定された国境線を変更しようとする場合は国連による「集団安全保障体制」によって守られる。実際には安全保障理事会の五大国に拒否権があり、「集団安全保障体制」は機能しないことが多く、それを機能させるようにNATOという地域での実効性のある「集団安全保障体制」を作った。それを石破さんはアジアでも作ろうというのだ。
日本には憲法9条があるので戦力を海外派兵出来ないはずなのだが、佐瀬昌盛解釈によって「集団的自衛権」は持っているので憲法を改正しなくても地域の「集団安全保障体制」は構築可能だというのだ。
だがこれは「集団安全保障体制」を作るために諸外国と軍事同盟を結ばなければならない。相手がいる話でもあるし、本当に佐瀬昌盛の憲法解釈で実現可能なのか判然としない。もし佐瀬昌盛の解釈が正しければ安倍首相があれだけ苦労した安保法制の騒ぎは何だったのかということになる。
石破首相は自民党に「アジア版NATO」に構築について検討を支持したそうだがどうなることやら。