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プルースト、ジョイス、カフカ、時間をめぐって

現代文学は、プルースト、ジョイス、カフカで否応なく変化を遂げたと言われる。共通するのは時間をめぐる表現である。

プルーストは有名な紅茶とプチットマドレーヌの香りで時間を超越し、ジョイスはダブリン市民の通俗的な一日を表現することで時間の同時性を持ち込み、カフカはKという地獄のような官僚機構の被害者として時間を破壊して不条理な世界を創造した。

文学に時間感覚がどう扱われるかというのは、実は誰かの作家の発明品であり、現代の新しい作家はその発明を利用しているのである。文学を文学史として捉えて読むというのも読書の愉しみの一つである。

小説は一つの作品単体でも愉しめるのだが、実は技術論的には歴史性があり、解釈の多義性を呼び覚ますには文学史の大きな流れを知っておくほうがいいのだ。ただあくまでも知っておくほうがいいのだくらいの話で、我々はただ読んで愉しければそれでいいと思う。

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