3300年の時を超えて。
最近、中高生の頃に読んでどハマりしたケータイ小説を読み返していた。
エジプトを舞台に繰り広げられる、輪廻転生とタイムスリップが絡んだ歴史ファンタジー、「悠久なる君へ〜3300年の記憶〜」だ。
エジプトで家族と暮らす弘子は、アメリカから訪ねてきた幼なじみに観光案内をするために訪れていた遺跡で「誰かの声」に呼ばれ、白い光に包まれてタイムスリップしてしまう。
飛ばされた先は、古代エジプト、第18王朝の時代。
かの有名なツタンカーメンが治める時代だった。
弘子の顔が亡くなったばかりの姫君、アンケセナーメンにそっくりだったことで、弘子はアンケセナーメンの「甦り」だとされ、ツタンカーメンが彼女を現代に帰す方法を探す代わりに、古代で過ごす間はアンケセナーメンのふりをすることに。
アンケセナーメンとして過ごし、様々な人や物事と接する中で、現代で生きていた時には感じることができなかった多くのことに気づいていく、そんなストーリーだ。
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わたしがこの小説に感じる魅力は、主に2つ。
1つ目は、実在した人物が多く登場し、史実に沿って物語が展開されていく点。
ツタンカーメンは言わずもがな、アンケセナーメンも実在していたし、彼らを取り巻く人々のほとんどがネットで検索すると名前が出てくるのだ。
もちろん、オリジナルの登場人物もいるし作者さんが考えたストーリーも混ざってはいるけれど、実際に起こったことも物語の一部であって、登場人物たちが実際に生きていた時代があるのだと思うと感慨深いものがある。
2つ目は、古代という時代がとても丁寧に、鮮やかに描かれていて、まるで自分もその場にいるかのような気持ちで読むことができる点。
神と崇められたエジプトの太陽の荘厳さや「母なるナイル」と称されるナイル川の偉大さ、古代を生きる人々の息づかい。
王族の生活ぶりのみならず、庶民の暮らしも事細かに書かれており、エジプトに関する知識がなくても物語の世界にどっぷりと浸かることができるのだ。
———読むと一度はエジプトを訪れてみたくなる、3300年の時を超えた壮大な愛の物語。
何度も読み返したくなる、心に残る1冊だ。