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ドラマ感想文│『ジャック・リーチャー』

ライアンじゃない方のジャックである『ジャック・リーチャー』を視聴した。

私の中で「ジャック・リーチャー」と言えば、トム・クルーズ主演の映画『アウトロー』であり、従って一見すると大して強くなさそうな優男のイメージとなっていた。

しかし本作の演じるジャック・リーチャーは筋骨隆々の大男であり、酒場の前で油断したチンピラ達が襲ってくるというようなことはない。それどころか、無言で見詰めるだけで大抵の相手を怯ませてしまう。

それでも『アウトロー』に慣れた私が観ても違和感なく仕上がっており、アラン・リッチソン(188cm)の巨躯から繰り出される痛そうな格闘術の迫力には、トム・クルーズとまた違った格好良さがある。どうやら原作ではこの大男こそが「ジャック・リーチャー」であり、寧ろ『アウトロー』の方が正しいジャックということになる。のトム・クルーズがよくあれだけ演じきったものだと感心してしまう。どちらも違和感なく完成度の高い作品として仕上がっているのは、役者の力によるものだろうか。

さて、本作のジャックは冒頭から黙りっぱなしであり、漸くマトモに話をするのは6分が経過してからだ。しかし本作は主演のが無言で立っているだけで面白いのだ。無言の圧力と魅力が上手く引き出されている。

そんなジャックと対照的によく喋るフィンリーが相棒としてバランス良く配置されており、熱心な警官であるヒロインのロスコーもまたチャーミング且つ格好良い。脱ぎどころも絶妙で、ジャックが心を開くことが明示される上、その後に二人の関係性がどうなるかという新しい視点も加えられ、ジャックというキャラクターにまた一段と深みを与えている。

そういう意味では随所に挿し込まれる回想シーンもまたジャックの過去を紐解くものであり、兄であるジョーへの思いと関係性が少しずつ明らかになってゆく。この回想は概ね長いものではなく、緊張状態から開放する幕間的な効果をもたらしてくれる。唐突に回想が始まったかと思えば、観る側を混乱させるだけにしかならないドラマも少なくないので、本作のように程々の長さとテンションを保ってくれるのは、何だかそれだけで少し安心する。

そして前述のフィンリーとロスコーについては、早い段階で悪者じゃないからね!というようなやりとりを済ませたことにより、終盤でジャックが敢えて疑って見せるシーンなどでも余計な混乱を避けられる。とにかく終始丁寧な作りをされている印象であり、妙な引っ掛かりが少ないとても見やいドラマだった。

静かな田舎町で突然起きた殺人事件を辿っていくうちに、大掛かりな組織的犯罪に行きつくという馴染みのある流れではあるが、偽札の製造(肝心な部分はフワっとしていたけれど…)から流通まで細かな設定が良く練られており、地理から組織まで無駄なくピースが当て嵌まる気持ち良さを味わうことができる。

それぞれのキャラクターが因縁の相手と一騎打ちになることで、個々に見所を用意されている点も、不自然ではあるものの見応えは充分だ。爆発する建物から悠々と歩いて来るジャックの姿を目にすると「流石に煙吸い過ぎて死なない…?」みたいなモヤモヤはどうでも良くなるのだ。アレがカッコイイと思ったから撮ったのだ。周囲に舞う100ドル札(偽)も、そういう画の為に必要なのだ!

私の中では特に文句の付けようがない、非常に面白いドラマだった。

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