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外来語:中国語と日本語の「先生」、日本語と英語のオタク

 先日、「医師、弁護士、政治家などをなぜ先生と呼ぶのですか」という学生さんからの質問に、「先生」は「専門知識や政治力・支配力の有無に基づく人間関係において、下に位置する人が上に位置する人を指す」言葉と言えるのでは、と回答しました。
 これに対し同じ学生さんから、「大陸中国語,台湾中国語では『先生』を年上の存在のことを指す代名詞として使うと聞きました。このような用法は『専門知識や政治力・支配力の有無に基づく人間関係において、下に位置する人が上に位置する人』という定義で説明できますか?」という追加質問が来ました。
 外国語から言葉を輸入し、その言葉が頻繁に使われ外来語として定着すると、元々の言語での意味や用法と異なる使い方をされるようになることはよくあります。つまり、外来語は、たとえ表記(や音)が元々の言語におけるそれらと同じだったとしても、別の言葉と捉える必要があります。
 日本語の「先生」も中国語から来た外来語です。『小学館日本国語大辞典』によると、すでに日本書紀(720年)には「師」の意味で「先生」が使われています。ただし、その発音は「せんじょう」「ぜんしょう」「ぜんじょう」など、色々あったようです。いずれにせよ中国語の「敬称」の意味が、外来語として日本語に入ってきて少しずつ意味が変わっていきました。従って、大陸中国語・台湾中国語の「先生」と、現代日本語の「先生」は、別の言葉と捉えるべきです。
 日本語から英語に取り込まれた、英語における外来語としては"otaku"があります。Oxford English Dictionaryによると、”otaku”(名詞、スラング)は1992から英語で使用されるようになったとあり、"Originally in Japan: a person extremely knowledgeable about the minute details of a particular hobby (esp. a solitary or minority hobby); spec. one who is skilled in the use of computer technology and is considered by some to be poor at interacting with others.”と定義されています。日本語における「オタク」の意味・用法と微妙に異なることがわかると思います。

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