![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62659067/rectangle_large_type_2_0590bc29161e5b94938d5c883f80b4b6.jpeg?width=1200)
こどものもり
静かな時間。
陸の際と、海の彼方が見える、山の上にやってきた。
芝生の誘惑に負けて寝転がる。
こどもの森と呼ばれる場所の夕暮れ前。
子どもたちの声と連れてきた大人の声、虫の声と、鳥の声、遠くに車の走る音。
こどもがよく遊ぶ場所の木は、なんだか優しい感じがする。
こどもは大人の人間よりも、たぶん木や土や虫に、近い生き物だからかもしれない。
にぎやかな声に、木が喜んでいる気がする。
木、喜、気。きがならんだ。
土佐に流され、それから阿波に向かった土御門上皇がここで月を見たという。
1221年の承久の乱、
自分は「鎌倉幕府を倒そうなんてやめたほうがいいよ」
ってお父さん(後鳥羽上皇)にモノ申した立場だったのに、
お父さんと弟(順徳上皇)がやっぱり失敗しちゃって遠流の刑になったときに、
「自分だけ都で暮らすのはしのびない」って自ら遠流を願い出たそうな。
でもやっぱり都が恋しくて、
「鏡野やたが偽りの名のみにて恋ゆる都の影もうつらず」(「土御門院御集」)
そんな歌もここで詠んだそうな。
「ここの地名は鏡野なんていうそうやけど、そんなのうそやんか。
名前ばっかりで都の影もうつらんわ。」
いや、だって映すには遠いし。魔法の鏡かいな。
やや逆ギレ模様の歌ですね。悲しいのはわかるけども。
なんか気まずいし、自分も遠流になるわ、といったものの、
都育ちの若い盛りのボンボンが「やっぱりそんなこといわんといたらよかった」と思う方が、
自然かと思います。
さみしい遠流の上皇が滞在し、戦国には合戦の城となり、津波襲来時には命を守る避難所となったこの山に、
今はこどもの声が響きます。
香南市香我美町、月見山からお伝えしました。