テスト:第十七話
17
加虐心。
私の中に渦巻いていた妖精。
全てを見下ろす妖精。
いつまでも上の空でぐるぐると巡っている。
人と人とのつながり。
それは本当に美しいものなのか。
それは本当に尊いものなのか。
そう問いかけてくる、妖精。
人。人間。何者にも成れない人間。
それは本当に美しいものか。
それは本当に・・・。
世界史の授業中、私は窓から見える木々の揺らめきを眺めていた。
その木の葉の囁きは窓に遮音され、色彩で私を魅せてくる。
この世の在り方。それは不確かで掴みどころがなく、常に揺らめき漂うものであると。
ただただ風の赴くままに揺られていろ、と、私を慰めていた。
漂う妖精は私に、語り掛けることもせず、ただ空中を舞い、虚ろな目で黒板に目を向けた。何とも詰まらなそうに、鬱積した表情を浮かべたまま、この教室の淀みを訴えている。
私は窓を全開に開けた。
その瞬間、強い風がぶわっと教室中を包み込んだ。
私や私の隣席のクラスメイト達の授業プリントが吹き飛んだ。
本日は風の強い日だったのだが、窓を開けてみたことでその強さをやっと肌で感じられた。クラスメイト及び世界史の先生は驚き、ざわめく教室。隣人が窓をぴしゃりと素早く閉めたことで、不穏なクラスメイトの不協和音が教室中に反響していた。
隣人は私に目もくれず、そのまま着席した。
先生は私に何をいう事もなく、授業は再開された。
誰もこちらを見ることもしない。私は存在しないものとして存在している。
人はそれを「幽霊」と呼んだりする。
しかし、私には都合がよい。この教室内で、私は限りない自由を手に入れた。私が何をしようがしまいが、クラスメイトも先生さえも、私という存在には無反応なのだから。否定や阻止もなく、私はそこに存在していた。
授業中、私は教室を出た。