テスト:第一話
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インカローズの下品な桜色。
女の色物の本より下品だわ。だって、どうしてこんなにも洗練されているの。私はこういう人、嫌いよ。こういう人に限って、綺麗な私を好きになるんだもの。本当、疲れちゃう。
校舎裏に呼び出した黒い学ランの彼は、私より一つ年下の高校一年生。
学ランのボタンはきっちり全部止められていて、まだ色落ちも型崩れもなくて、彼にまだ懐いていない様子。身長160㎝の私が首を見上げないといけないのね。ちょっと悔しい。それにスポーツやってそうな体。背筋は伸びていて、自信があるのね。それはいいことだけど。
彼はまだ口を開かず、私にさっと手を差し出し、その手のひらからぶら下がったものを見せていた。
あろうことか、男子高校生がインカローズのピュアピュアピンクなネックレスを差し出してきた。
(噓でしょ・・・。)
最近まで中坊だったというのに、随分派手なプレゼントを選んできたのね。しかも、告白する時にそんな、身に着けてもらえるかもわからない高価なものを渡そうなんて。。。チョイスが重すぎ。シチュエーション選択間違ってるよ、君。
きっと、そんな気の利いたアドバイスをしてくれるリア友もネッ友もいなかったんでしょうね。
私はいつもこうして、来る相手を手始めに蔑むのだ。
何といってもそう、大変だから。私はモテる。そういう星の元に生まれた。
嫌われるようにしている。めんどくさい。面倒事に巻き込まれるのは御免だ。
それに・・・何といってもそう。恋愛は人の知能を低下させる。この真理に気づいた者でさえ、それでも恋愛をしたがる。そして、傷つく。私にはわざわざそんなことをする人間たちの心理が理解できなかった。
しかし、告白を待つ私は次の瞬間、耳を疑うことになる。
「これ、君みたいでしょ。あげるよ」
そう言って、私の手のひらを強引に開き、そこに持たせて去って行ってしまった。
拍子抜け。いや・・・・要らないんだけど。あげるって、は?何?