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テスト:第十六話

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その夜、少しハバネロソースの痛みが引いてきたところで少し冷静さを取り戻した。

私は藤野君が好きだと何度も頭を巡らせた。それをノートに書き殴りまくる。

脳の弱点は「飽き」だ。私は飽きるまで藤野君が好きだと好意の暴力で真っ白なノートを汚した。怒りが鉛粉となって滲み、4Bの鉛筆がボキィッと折れた。

私の怒りは普段顔を出さない分、一度発火すると普段ごみ溜めのようになったストレスたちが次々に着火していくようだ。藤野君の気持ちはわからない。それにクラスメイトの気持ちも。先生の気持ちも。叔父さんも。

本能に歯向かった人間は、一生不幸になるという。

本能の下僕になった方が・・・幸せ、そんなはずは。そんなことは経験がないため判断しようがない。

寧ろ・・・私は何だ?もしかして、この恐怖心こそ、本能の下僕なのか?

だとしたら・・・本能に四方八方から挟み撃ちをくらい、雁字搦めに遭っているに過ぎない。

どれか一本に本能を絞り込み、残りの要らない糸をすべて切断する。この役割こそ・・・理性なのか。

だとしたら・・・私はどの糸を引けばいい?

あみだくじのように一度複雑に絡み合った糸は解くこともできない。だからこそ、最初の欲望に注目する他ないだろう。糸の先にある結果等。開けてみなければわからない。ならば私はどの選択肢を選び取る?

1,藤野君と恋をする。

2,藤野君と別れる。

3,藤野君と友達になる。

4,藤野君を嫌いになり、好意を忘れる。

私は4を選んだ。理由は、破壊と再生を期待しているからだ。藤野君の正体を暴くことこそ、私に課せられた使命。なぜ、私に目を付け、そして近づいたのか。それをはっきりさせることは、今後の自己分析につながる。私は盲目な人間だから、人からどう見えているかというデータには価値がある。

藤野君にすべてを見せよう。私の全てを見れば、きっと嫌ってくれる。そしてなぜ私が存在悪であるかも証明できる。以前言葉の綺麗な男は、私を存在悪だといった。理由を答えてもらえなかったから、それは謎のまま不完全燃焼なのだ。そして腹の底からの納得が手に入った暁には、心地よく死んでやろう。

そんな極上の死を夢見ながら、私は私自身の存在悪を回収したがった。

死を恐れているからこそ、私が死ぬべき理由を無意識のうちに求めてしまう。

その理由を与えてくれた人間がもしいたとするならば・・・それは最愛の人となるに違いない。

藤野君・・・君は私の最も愛すべき友人になり得るのか。

藤野君・・・君は私の最も憎むべき友人になり得るのか。

私を知り尽くし、私の神髄を突き、絞め殺してくれるなら。

それこそ最高の死に様と言えるだろう。

私はインカローズを破壊するくらい力いっぱいに握りしめた。

インカロースに血が滲めばいいのに。

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